浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#950 [笹]
本当に気まぐれよ
晴れていたって
いつもお茶飲んで動かないのに
しかもただの散歩かと思ったら
旅館を予約したとか何とか‥
いつ予約したのよ‥はぁ
あたしは全然構わないけど
:10/03/22 11:50 :D905i :b7M9uhWk
#951 [笹]
「立派‥ですね」
こんな豪勢な旅館に泊まる
お金は何処から湧いてでてくるの
本当に‥不思議な人
離れ街にあるこの旅館は
場違いなほど立派で
庭園の木々や花はもちろん
丁寧に手が行き届いてて
入り口には大きな門がある
:10/03/22 11:50 :D905i :b7M9uhWk
#952 [笹]
しっかりとした柱や骨董品が
あたしの目を奪う
廊下は埃一つ見当たらない
床に自分が映ってる‥
「ようこそ、いらっしゃいました」
女将さんらしき人が
三つ指をついて頭を下げた
なんだか緊張する‥
:10/03/22 11:51 :D905i :b7M9uhWk
#953 [笹]
ぎこちなく頭を下げて
横目で壱助さんを伺えば
手慣れた様子で笑みを浮かべ
綺麗にお辞儀した
指先まで、爪の先まで
美しいのだから
隣にいるのが苦痛です
「さて、と」
色男が顔を上げて呟けば
色を召した仲居さんたちの頬
:10/03/22 11:51 :D905i :b7M9uhWk
#954 [笹]
壱助さんがいれば
いつだって春が来る
色んな意味で‥ね
「行きます、よ」
春になってもこの手は
ひやり、あたしの手首を冷ます
だけど捕まれるたび
そこからじわり熱を帯びてしまう
いつまで保つかな‥あたしの心臓
:10/03/22 11:52 :D905i :b7M9uhWk
#955 [笹]
:
:
「ひろっ‥!!」
部屋間違えてないですか?
二人部屋にしては
空間を持て余しすぎ‥
目の前に広がる空間は
とても洗練されていて
それでいて上品な‥
置いてあるもの全てが
とても高価に見える
:10/03/22 11:53 :D905i :b7M9uhWk
#956 [笹]
この座布団さえ‥
座るのを躊躇ってしまうほど
「ほぉう‥」
興味深そうに
部屋の隅々を見渡し
壁にもたれて外を眺めた
足袋が擦れる音が心地いい
どことなく楽しそうな壱助さん
:10/03/22 11:53 :D905i :b7M9uhWk
#957 [笹]
と言うかお花見の日以来
‥ご機嫌な気がする
いつか雷が落ちなきゃいいけど
「壱助さん?
何で急にこんな‥」
「失礼致します。
お茶を‥お持ちしました」
男性の声と共に
襖が丁寧に開けられた
:10/03/22 11:54 :D905i :b7M9uhWk
#958 [笹]
そちらに目をやれば
藍の着物を着た男性
此処で働いてる人なのかな‥
「香夜‥香夜だろ?」
あ‥やっぱりそうだ
此処は‥
「倫次‥?」
:10/03/22 11:54 :D905i :b7M9uhWk
#959 [笹]
そう声をかければ
ぱぁっと笑顔になった
「やっぱり香夜だ!!」
何も変わりやしない
無邪気なままの笑顔
過去の闇の中の
ほんの一握りの至福の時を
彼はくれたのだ
:10/03/22 11:55 :D905i :b7M9uhWk
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