浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#101 [笹]
襖の向こうから聞こえる声
耳を塞いでも聞こえてくる
「声で・か・す・ぎ!!」
小声なりに強めに
襖に向かって叫んでみた
「えーっと‥
まずは、お客さんにお酒注いで
それからー‥笑顔を忘れない
初めてのお客さんには
積極的に詰め寄る‥
って、
あたしも初めてなんだけど」
:10/01/28 15:24 :D905i :Ad90U/U2
#102 [笹]
初めてって痛いって聞くけど‥
まぁ‥そうは言ってもねぇ?
そーんなに、
泣くほど痛いはず‥ない
「‥よね、」
ごくりと唾を飲み込み
手汗を着物で拭う
:10/01/28 15:26 :D905i :Ad90U/U2
#103 [笹]
鏡に映る自分の姿
いつもとは違う
あたしじゃないみたい‥
真っ赤な着物に山吹色の帯
真っ赤な紅に綺麗なかんざし
「初めて抱かれるって‥
どんな感じ、なのかなぁ」
鏡の向こうの自分に投げかける
初めてくらい愛する人に‥
捧げたかったなぁ
:10/01/28 15:29 :D905i :Ad90U/U2
#104 [笹]
「香夜、お客様がいらしたよ」
さっきとは打って変わって
商売様の笑顔の京さん
声は一段、いや二段くらい
高くなっている
"香夜は、今日からなんですよ
手加減してやってくださいな"
にやりと笑って襖を閉めた
ついに‥来てしまった
:10/01/28 15:33 :D905i :Ad90U/U2
#105 [笹]
「い‥いらっしゃいまし」
思わず声が上擦った
正座をして深く頭を下げる
このまま‥頭を上げたくない
そんな気持ちに駆られる
「可愛らしい方です、ね
頭をお上げくださいな」
あぁ何か落ち着く声‥
この人なら何とか‥
:10/01/28 15:37 :D905i :Ad90U/U2
#106 [笹]
「ひぃぃぃいいぃぃ!!!!」
頭を上げて驚いて腰を抜かした
なんで‥なんで‥
「い‥壱助さん?!」
紛れもなく
あたしの目の前にいる男は
今朝喧嘩した壱助さんである
「どうして‥こんな所に?!」
:10/01/28 15:39 :D905i :Ad90U/U2
#107 [笹]
紛れもなく、紛れもなく
この美しさは壱助さん
「おや、おや
どうして‥名前をご存知で?」
この調子も壱助さん
「どうしてって‥香夜ですよ」
「あぁ‥香夜さん
お綺麗になられました、ね」
分かってたくせに‥わざとらしい
:10/01/28 15:43 :D905i :Ad90U/U2
#108 [笹]
「‥あたしの事
様子、見にきたんですか?」
ふてくされ気味に一応酒を注ぐ
「様子‥
さぁ何の事、でしょうね」
あの怪しい笑みを浮かべて
酒を手に取る
お隣は‥
どうやら"行為"に至ったらしい
色がましい声が耳にへばりつく
:10/01/28 15:47 :D905i :Ad90U/U2
#109 [笹]
沈黙‥と行きたいとこだけど
お隣の声の"おかげ"‥
"せい"で沈黙が破られる
―‥気まずい。
「香夜さん‥」
やっぱり素直に‥
「本当に‥」
謝ろうかな‥ぁ
:10/01/28 15:50 :D905i :Ad90U/U2
#110 [笹]
「お綺麗です、ね」
頬に冷たい感覚
あの綺麗な手で頬を包み込まれた
壱助さんの目が
いつもとどこか違う‥
「い‥壱助さん?」
「お美しい‥」
「壱助さん‥?ちょっと‥」
:10/01/28 15:52 :D905i :Ad90U/U2
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