浮き世の諸事情｡

　
―‥少しの沈黙
一気に空気が凍りついた

カタンと湯飲みを置く
またその落ち着き方が怖い

｢ほぉう‥遅かった"だけ"､と｣

_

　
いつも以上に鋭い目が
あたしを滅多刺しにする

‥心臓が止まりそうですよ

―‥事の発端は今日の午前中の事

：
：

｢えーっと､漢方薬‥と
後は､お茶の葉と‥
それからぁー‥何だっけ？｣

朝っぱらから
‥最早あたしの日常の一部だけど
顔面ひっぱたかれて､

買い出しに行ってこいって
買ってくる物を
呪文みたいに聞かされて
ぴょいっと宿から放り出された

　
｢そんな一回じゃ
覚えられないよー‥もう｣

ぶつぶつ言いながら
街のあちこちを行ったりきたり

しかも荷物が増える増える｡

これを一人で持てなんて
壱助さんはやっぱり鬼だ

　
だけどそんなこと言ったら
どんなことになるか‥

とりあえず､骨一本は犠牲だ‥

いろいろと目に見えてるので
一人で頑張ってた訳です｡

　
｢あらお嬢ちゃん
そんなに大荷物､大変ねぇ‥
財布出せるかい？｣

｢あぁ‥大丈夫‥です｣

袖の中を何とか弄る

手は吊りそうだし肩凝るし
早く済ませて帰りたいったら
この上ない

お金足りたかなぁー‥
‥嘘､ちょっと待って

　

｢お財布がなぁああい!!!｣

_

　
だってさっきまでここに‥
どこかに落としたかなぁ
あっれー‥？

がさがさばたばたばたっっ

｢うぎゃあぁああっ!!!｣

足元が荷物で埋まる
思いっきりぶちまけてしまった

　
今日はついてないや‥

溜め息を付き
ぺこぺこ頭を下げて
慌てて荷物を拾う

あーあ､誰か助けてくれな‥

｢大丈夫ですかい？｣

｢ふえ？｣

　
目の前には
荷物拾いを手伝ってくれてる
男気溢れる人｡

って言うか
壱助さんばっかり見てたら
どんな人も
男らしく見えるんだけど‥

｢あぁっ‥すみません
ありがとうございます｣