浮き世の諸事情｡

　
｢はいっどーそ!｣

着物を差し出せば
"有り難い"とぽつり呟き
するりと袖を通した

今日の壱助さんは
とても穏やかな気がします

それから‥素直｡

　
｢ちょいと手が‥
冷えちまったもんで､ね｣

袖に閉まっていた両手を
此方に差し出しながら言った

いつも冷たい気もするけど‥

脱いだ浴衣をあたしの肩にかけ
にやり口角をあげる

　

｢暖めてくれや‥しやせん､か｣

浴衣ごと包み込むように
抱き寄せて
胸の中に押し込められた

少し冷えた体と暖かな鼓動
何故だかこの上ない
幸せを感じて‥

　

最初から
こうしたかったのかな､なんて
仕様もなく良いように考える

やっと貴方に
‥追いつけた気がします｡

_

第二十章【抱き寄せて】

＊｡＊｡＊｡＊｡＊
甘めです(´ﾟωﾟ｀)

壱助さんって
意外と寂しがり屋ｗ？
香夜ちゃんに
構ってほしいんだと思う←
香夜ちゃんを抱きしめたくて
たまらないんだと思う←

壱助さんの意外性を
表現したかったですｗ
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

　
少しの人情
少しの気の迷い

たった其れだけでも
"月夜に釜を抜かれる"事がある

いつ何時も
油断しては成らぬと言うのに‥

ねぇ､香夜さん‥

：
：

誘拐されました｡

自分でも
よくまだ理解できてません

とりあえず
暗いっ!怖いっ!!

壱助さぁぁあんっ!!

：
：

ついさっきのこと｡

壱助さんのお茶を買うため
いつも通り街に出ました

｢あーあ‥
本当に毎回毎回
なくなるのが早くなる
もう一週間で飲み切って‥
ありえない､あの人｣

ぶつぶつ言いながら
大量に買った
お茶の袋を抱えて帰る途中

　
目の前にうずくまった女の人

｢大丈夫ですか？｣

声をかけて顔を覗き込めば
それはそれは美しい方で

｢少々‥立ち眩みがして｣

頭を抑えて眉間に皺を寄せていた

　
あまりに辛そうで
放っておけるわけもなく
‥普通は放っておかないか

｢あの‥立てますか？
此処じゃ危ないので何処か‥｣

誰だって油断するでしょう
誰だって心配するでしょう