浮 き 世 の 諸 事 情 。
最新 最初 全
#70 [笹]
「ほぅ‥興味深いです、ね」
本当に興味あるのかな‥
目をこちらに向けもせず
お茶を入れる姿は
どうも、そうは見えない‥。
「香夜さんが、助けを求めた時
代わりに父親が殺されると‥
予期していたなら、
貴女は確かに‥人殺しです」
胸が痛む。息が少し上がった
何故‥知ってるの?
:10/01/27 16:56 :D905i :.cEN1Iy.
#71 [笹]
「しかし‥その様なことは
貴女でなくても、考えませんぜ
よって、罪意識は無用です、よ」
わからない。
今まであんなに自分を攻めてきた
そう思って‥孤独に生きてきた
母の暴力にも耐えたのに‥
「貴女は、悪くない‥香夜さん」
:10/01/27 17:01 :D905i :.cEN1Iy.
#72 [笹]
いきなり救われてしまっても、
自分への対応の仕方がわからない
「忘れられない過去も、
思い出したくない過去も、
誰にでも有るじゃぁないですか
もっと‥肩の力、抜きましょう」
目の奥が痛いくらいに熱くなる
目の前の壱助さんが
‥一気にぼやけた
:10/01/27 17:06 :D905i :.cEN1Iy.
#73 [笹]
あぁ‥もう
人前で泣かないと決めたのに。
「一つだけ、忘れなければ‥」
懸命に涙を拭ってみても
指の隙間から溢れ出る
何が悲しいの‥?
何が辛いの‥?
どうして‥こんなに‥。
「父上に救われた、その命
無駄な物に‥してはいけない」
:10/01/27 17:11 :D905i :.cEN1Iy.
#74 [笹]
壱助さんは
今どんな顔をしてるのかな‥
どんな思いで、どんな表情で‥
「死のう、なんざぁ‥
もう‥これっきりに、」
壱助さんの冷たい手が
あたしの手首を掴む
「‥っ」
恥ずかしくて堪らない
お父さんに、申し訳ない
「‥しましょう、か」
:10/01/27 17:16 :D905i :.cEN1Iy.
#75 [笹]
手首の腫れ上がった傷口を
細い指が撫でる
お父さん‥お父さん
‥ごめんなさい
「う‥っ‥グズ」
必死に声を殺しても
ただただ辛いだけで、虚しくて
悔しいだけだった
:10/01/27 17:20 :D905i :.cEN1Iy.
#76 [笹]
「壱助‥ッさん‥グズ」
「‥何か、」
落ち着いた声がどこか懐かしくて
「死にた‥くな‥ッ‥で」
本当は死にたくなんかない。
あの時お父さんに
生を訴えた時と同じ
死にたくなんかないんだ‥
:10/01/27 17:23 :D905i :.cEN1Iy.
#77 [笹]
「よし、よし」
ぽん、とぎこちなく
あたしの頭を撫でた手に
救われた気がした。
その瞬間に
子供のように声を上げて泣いた
壱助さんの懐に顔を埋めて
何年分もの涙を流した。
:10/01/27 17:26 :D905i :.cEN1Iy.
#78 [笹]
:
:
:
「おや、おや」
窓から差し込む
満月の優しすぎる光が照らす
「子供です、ね‥香夜さんは」
泣き疲れたあたしを抱いて
壱助さんがクスッと笑った。
:10/01/27 17:29 :D905i :.cEN1Iy.
#79 [笹]
:10/01/27 17:42 :D905i :.cEN1Iy.
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194