浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#75 [笹]
手首の腫れ上がった傷口を
細い指が撫でる
お父さん‥お父さん
‥ごめんなさい
「う‥っ‥グズ」
必死に声を殺しても
ただただ辛いだけで、虚しくて
悔しいだけだった
:10/01/27 17:20 :D905i :.cEN1Iy.
#76 [笹]
「壱助‥ッさん‥グズ」
「‥何か、」
落ち着いた声がどこか懐かしくて
「死にた‥くな‥ッ‥で」
本当は死にたくなんかない。
あの時お父さんに
生を訴えた時と同じ
死にたくなんかないんだ‥
:10/01/27 17:23 :D905i :.cEN1Iy.
#77 [笹]
「よし、よし」
ぽん、とぎこちなく
あたしの頭を撫でた手に
救われた気がした。
その瞬間に
子供のように声を上げて泣いた
壱助さんの懐に顔を埋めて
何年分もの涙を流した。
:10/01/27 17:26 :D905i :.cEN1Iy.
#78 [笹]
:
:
:
「おや、おや」
窓から差し込む
満月の優しすぎる光が照らす
「子供です、ね‥香夜さんは」
泣き疲れたあたしを抱いて
壱助さんがクスッと笑った。
:10/01/27 17:29 :D905i :.cEN1Iy.
#79 [笹]
:10/01/27 17:42 :D905i :.cEN1Iy.
#80 [笹]
一週間もすりゃぁ、
人の性格も良くわかるもので
"捨て猫"はと言うと
泣くは、喚くは‥
かと思えば、眠りにつき
何かと‥忙しない猫でして、ね
それに加えて、頑固ときた
"言うは易いが行うは難い"
頑固者には、身に滲みる言葉です
:10/01/28 13:15 :D905i :Ad90U/U2
#81 [笹]
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ある晴れた日の事である。
「あら、壱助さんじゃないかぁ
相変わらず‥色男だねぇ」
団子屋の腰掛けに座ろうとすると
そこの女将がやって来た。
「あぁ‥伊代さん
ご無沙汰しておりました、ね」
壱助は律儀に正座をして頭を下げた
:10/01/28 13:20 :D905i :Ad90U/U2
#82 [笹]
「聞いたよー?壱助さんよぉ、
最近若い子‥、
連れて歩いてるそうじゃないか」
伊代はお茶を差し出し
興味深い様子で身を乗り出した
「只の‥"捨て猫"ですよ」
「そんなぁ、隠さなくたって‥」
クスクスと笑って
壱助の肩をポンと叩く
:10/01/28 13:25 :D905i :Ad90U/U2
#83 [笹]
「紹介しておくれよー
今日は連れてないのかい?」
「えぇ‥、
自立するそうです、よ」
「自立?」
伊代は不思議そうに首を傾げる
話好きな伊代は
話に花を咲かせる"花咲女将"
愛想もいいもんだから
此処はいつでも大繁盛
:10/01/28 13:30 :D905i :Ad90U/U2
#84 [笹]
「"遊女になる"‥と、ね」
うっすら笑って茶を啜り
壱助は団子を手に取った
「ゆ‥遊女って‥何でまた」
伊代は緩んだ顔を引き締め
唾をごくりと飲んだ
:10/01/28 13:33 :D905i :Ad90U/U2
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