浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#86 [笹]
「まさか壱助さん‥
止めなかったのかい?!」
つい大きくなってしまった声に
他の客も反応する
「止めましたよ、もちろん
"男を知らないくせに
良く言えたもんだ‥。
雇ってもらえませんぜ"、と」
「そんな言い方しちゃあ、
余計維持になるじゃないかぁ!」
他の客の視線も気にならないほど
慌てふためく伊代
:10/01/28 14:14 :D905i :Ad90U/U2
#87 [笹]
手にした団子をじっと眺め
変わらぬ口調で壱助は続ける
『だ‥大丈夫ですっ!!
あたし、経験あぁ‥あります!』
「と、分かりやすい嘘まで付いて
維持を張るもんですから‥
"這っても黒豆、ですね"、と」
楽しそうな顔の壱助とは対照に
呆れたような顔の伊代
:10/01/28 14:19 :D905i :Ad90U/U2
#88 [笹]
『く‥黒豆?!
一体何なんですか?
人を所有物、猫呼ばわりして
‥仕舞いには黒豆?
いい加減にしてくださいよ!!
あたしそんなに色黒くないし
背丈だって人並みです!!』
「‥と、色をなしてしまいまして」
"参った、参った"と微笑し
頭を軽く叩く壱助
:10/01/28 14:24 :D905i :Ad90U/U2
#89 [笹]
伊代は深くため息を付いて
"全く‥"と頭を抱えた
「そんな言葉、
若い子が分かる訳ないだろう?
その子の反応は妥当だよ、全く」
「そうですか、ね」
無関心そうに団子を口に入れ
満足そうな顔をする
:10/01/28 14:27 :D905i :Ad90U/U2
#90 [笹]
「ちょいと壱助さん!!
そんな純粋な子、
からかうのは程々にしなよぉ?
ましてや、維持っ張りの子を‥」
眉間に軽くしわを寄せた伊代を
横目でちらりと見つめる
「本当に‥"這っても黒豆"
素直に止めればいいものを、
維持を張って‥ねぇ
‥仕様がない"猫"です、ね」
:10/01/28 14:32 :D905i :Ad90U/U2
#91 [笹]
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――‥花街
そこは遊女屋が集まる町の事。
本来あたしみたいな生女が
足を運ぶような所じゃない。
「いや‥でも‥」
『宿代を‥
払ってあげてると言うのに、』
「引き下がるわけには‥」
『あぁ‥"所有物"には
宿代はかかりませんでした、ね』
「いかない‥!」
:10/01/28 14:38 :D905i :Ad90U/U2
#92 [笹]
壱助さんの言葉が頭をよぎる
悔しい‥情けない。
唇を思い切り噛み締めて
一軒の遊女屋に足を踏み入れた
絶対‥ぜぇぇぇぇったい!!
稼いで、見返してやるんだから!!
:10/01/28 14:41 :D905i :Ad90U/U2
#93 [笹]
:
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団子の串を静かに皿に置いて
"ご馳走様でした"と手を合わせる
「でも、壱助さんよぉ‥
心配してなそうな素振りだけど
本当は
居ても立っても居られなくて
出てきたんじゃないのかい?」
ニヤニヤしながら
伊代は壱助の脇腹を肘で小突いた
:10/01/28 14:45 :D905i :Ad90U/U2
#94 [笹]
「まさか、
心配するも何も‥
"産毛ばかりの捨て猫"ですから
誰でも良いって訳じゃ
ないでしょうから、ね」
すっと腰を上げて下駄を履く
「男の力にゃ、勝てないよぉ?
可愛い子なんだろうから‥
すぐに客が‥」
そう言い終わる前に
軽く頭を下げて去っていった
:10/01/28 14:50 :D905i :Ad90U/U2
#95 [笹]
「意地っ張りなのは‥
"おあいこ"なんじゃないかねぇ」
伊代は、壱助の背中を見つめ
"やれやれ"と緩く微笑んだ
:10/01/28 14:53 :D905i :Ad90U/U2
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