浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#894 [笹]
「同じ境遇‥故に
心惹かれたと、言うんで?」
そうだとしたら
この感情は同情なのか
寂しさを苦しさを
共有したがる弱さなのか
あたしは弱い
そんなのはわかってる
:10/03/18 15:46 :D905i :WpH3kYYs
#895 [笹]
ぐるぐると渦を巻く
灰色の何かが
だんだんと暗くなる
強くなったつもりだよ
強くなったはずだった
どうしてこうも上手くいかない
結局誰かにすがりつかなきゃ
生きていけない
:10/03/18 15:46 :D905i :WpH3kYYs
#896 [笹]
「‥あたし、」
左手首の落ち着いた傷たちが
疼き始めて痛い
壱助さんに出会ってから
傷は増えることがなかった
あたしを心配して
止めろと言ってくれた
:10/03/18 15:47 :D905i :WpH3kYYs
#897 [笹]
「香夜さん」
頭がぼうっとする
昨日からずっと
体と心が全く別物
宙に浮かんで掴めない
畳の網目をなぞってた右手が
左手首に爪を立てた
:10/03/18 15:47 :D905i :WpH3kYYs
#898 [笹]
「‥香夜さん」
少し引っ掻いただけで
血が滲みはじめて
久しぶりの感覚にぞっとした
真っ赤な液体が
爪の間をすり抜けて滲みた
:10/03/18 15:48 :D905i :WpH3kYYs
#899 [笹]
「あたし‥どうかしてる
どうかしてる‥よ、
もう‥消えちゃいた‥」
『「‥香夜っ!!」』
はっとした
また父親と重なった声
:10/03/18 15:48 :D905i :WpH3kYYs
#900 [笹]
壱助さんが声をあげた
思わず顔を見上げれば
どこかそれは悲しそうな顔で
しわの寄った眉間
鋭いのに優しい目
「契りを交わしたはず、ですよ
そのお命‥無駄にはしない、と」
:10/03/18 15:49 :D905i :WpH3kYYs
#901 [笹]
今あたしを叱ってくれるのは
貴方だけで‥
真剣に向き合ってくれる
その瞳で包んで
「本当に‥世話が焼ける」
「い‥ち助さん」
流れるような細い指で
手首を包み込まれれば
どくどくと生命が鳴いてる
:10/03/18 15:49 :D905i :WpH3kYYs
#902 [笹]
生きてる心地がした
「何処へ行こうが
貴方の勝手ですが、ね‥」
深いため息を此方に向けて
そう自由にされてしまうと
どうしたらいいかわからなくてね
何処へも行きたくなくなるんです
:10/03/18 15:49 :D905i :WpH3kYYs
#903 [笹]
:
:
「壱助さん‥
迷惑じゃないんですか?」
「何、が」
「あたしの世話とか‥」
もじもじと不安げに
そう呟いて見上げた
:10/03/18 15:52 :D905i :WpH3kYYs
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