記憶を売る本屋さん
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#117 [我輩は匿名である]
その頃、薫は屋上で響子と一緒に話をしていた。
「あらぁ、喧嘩しちゃったんだ」
「まぁな。昔からよく喧嘩はしてたけど、昨日は珍しく、両方本気だったな」
「2人とも怪我しなかった?」
「あぁ、俺が壁に頭ぶつけたぐらいで」
「えっ!?ダメじゃん!!大丈夫!?」
響子はびっくりしながら大声を出す。
「大丈夫だよ。ちょっとたんこぶ出来てたみたいだけど、治ったみたい」
「そう…。気をつけないとダメだよ」
「…うん」
薫はフッと、小さく笑う。
:10/03/23 18:12
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#118 [我輩は匿名である]
「…なぁ、香月」
「ん?」
「…“霜月優也”って名前に心当たりないか?」
薫は真剣な表情で、響子に尋ねる。
その真剣さに、響子も本気で頭をひねってみるが、どうやらないようだ。
「…知らない、と思う」
「…そうか」
薫は残念そうにため息をついた。
「その人がどうかしたの?」
「…いや、何でもない」
「何それ!?気になるじゃない!!」
「いいよ、忘れて」
「無理!!」
:10/03/23 18:16
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#119 [我輩は匿名である]
響子が問う正そうと必死になっていると、チャイムが鳴った。
「あ、チャイム。かーえろ」
薫はさっさと、逃げるように歩き出す。
「あっ、ちょっと待ってよ!」
響子も慌てて走り出す。
しかし、一昨日よりも少し強い頭痛が、響子を襲った。
「痛っ…!」
響子は頭を抑えてしゃがみこむ。
その声に気付き、薫が急いで駆け寄る。
「おい、大丈夫か!?」
「う…うん…。大丈夫…一瞬だけだったから」
:10/03/23 18:21
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#120 [我輩は匿名である]
響子は弱々しく笑って、顔を上げる。
しかし、薫の心配は晴れない。
「…保健室行くか?」
「いいよ、そこまでしなくても、もう治ったから。…ごめんね、心配かけて」
響子は「行こ」と、歩き出す。
その背中を、薫は止まったまま見つめる。
「…俺に謝るな、…今日子」
薫の独り言が聞こえたのか、響子が振り向く。
「何か言った?」
「……いや、何にも言ってないよ」
薫はそう言って、響子と並んで屋上を後にした。
:10/03/23 18:27
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#121 [我輩は匿名である]
「悪かった!!!」
昼休みになるやいなや、直人は薫の元に謝りに行った。
急に手を合わせて謝ってきたため、薫はきょとんとする。
「…そのぉ〜、昨日は俺ちょっとイライラしてて、おまけに女連れてるし、何かモテるみたいだし?
なんか余計に腹立ってきて、っていうか今もあんまりスッキリしてないけど」
「謝る気あるのか?お前」
謝っているのか皮肉っているのかわからない直人に、薫も言い返す。
「っていうか、『モテるみたい』ってどこ情報?」
「俺情報」
「はぁ?」
:10/03/23 18:37
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#122 [我輩は匿名である]
「いや、あの…今日の朝、大橋に『友達が月城くんの事好きらしいんだけど、彼女いるのかなぁ?』って聞かれたから…」
ちょっと困った顔で話し始めた直人に、薫は眉をひそめる。
「で、お前、何て言ったんだ?」
「い…いないんじゃねーの…って、言いました」
謝るように頭を垂れて、直人は答えた。
薫は呆れ笑いしながらため息をつく。
「…まぁ、いないのは事実だしな」
「『今は』だろ?」
直人もおちょくるように言い返す。
「つーか、あの子誰?」
「4組の香月 響子」
:10/03/23 18:42
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#123 [我輩は匿名である]
「いつから仲良くなっちゃったわけ?」
「直人が本をもらった次の次の日」
「何でまた」
「屋上に行ったらいたんだよ。それで」
「屋上?何で屋上なんか」
「何となく、行ってみたかったんだよ」
直人のまるで尋問のような問いかけに、薫は1つ1つ短く答えていく。
「俺からも聞くけどさぁ」
「何?」
今度は薫が、弁当箱を開けながら尋ねる。
「大橋って誰?」
「…お前、それはちょっとひどいだろ」
:10/03/23 18:47
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#124 [我輩は匿名である]
直人はちょっと呆れ返る。
「あいつ。1番こっち向いてる奴」
気付かれないように、直人は女子の1グループを指をさす。
こっそり目をやって、薫は「あぁ」と思い出すように声を漏らした。
「知ってただろ?」
「風紀委員同じだった」
「…それ余計にひどくないか?」
「他の女に興味ないの」
薫のその一言に、直人はあんぐりする。
「調子に乗るなよお前…」
「何だ?またやんのか?次は手ぇ抜かねぇぞ」
真顔で2人はにらみ合う。
が、今度は流石におかしかったのか、2人とも笑い出した。
:10/03/23 18:52
:PC
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#125 [我輩は匿名である]
「あーあ、喧嘩なんかするもんじゃないな」
「ホント、つまんねぇ喧嘩だったなぁ」
2人は息をつきながら弁当箱をつつく。
「…ところで、どうしても聞きたい事があるんだけど」
改まって、直人が口を開く。
もうわかっていたのか、薫も堪忍したように笑う。
「『俺が本を持っているのか』、か?」
「うーん、まぁ、そうかな。それが1番聞きたいのかも」
たくさん聞きたい事があったのに、今はそれしか出てこなかった。
しばらく考え、薫は答える。
「あぁ、持ってる」
:10/03/23 18:56
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#126 [我輩は匿名である]
「…やっぱりそうか」
「内容はまだ言えないけど、直人よりもずっと前にな」
「いつ?」
「中1の時」
「そんな早くから?」
「あぁ。読み終えるのに2年半かかった」
「そんなに…?」
全然知らなかった。ポーカーフェイスもいいところだ。
「死にたくならなかったのか?」
「いや、全然。元々俺には『目的』があったから」
:10/03/23 19:01
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