記憶を売る本屋さん
最新 最初 全 
#127 [我輩は匿名である]
目的。直人は聞きたかったが、これはきっと答えないだろう。なぜかそんな気がした。
「その代わり」
薫が続ける。「初めて人を『殺してやりたい』と思った」
直人はドキッとした。
「なっ、何言い出すんだよ…!?」
「この間まで、ずっと考えてた。『あの女は今、どんな姿をしているのか』ってな」
「女なのか…?」
「あぁ。…でも、そんな事考えてる場合じゃないんだよな、俺」
その言葉の意味が、分からなかった。
聞きたかったが、どうしても聞けない。
薫の表情が、悲しそうに見えた。
:10/03/23 19:06
:PC
:pMFPl9Gs
#128 [我輩は匿名である]
「…そっか、…悪かったな、いろいろ聞いて」
まだまだ話を聞きたい自分を抑えて、直人は話を終わらせた。
「何だよ、もういいのか?」
「あぁ、またぼちぼち聞いてくよ」
直人はいつも通り笑ってみせる。
「…本、読み続けるのか?」
薫がふと、そんな事を聞いてきた。
「…あぁ、実は一昨日まで怖くて読みたくなくなってたんだけど、読み始めたからには全部読もうと思ってる」
「…そうか」
薫はそれだけ言って、もう何も聞いては来なかった。
:10/03/23 19:11
:PC
:pMFPl9Gs
#129 [我輩は匿名である]
直人はその日から毎日欠かさず本を読んだが、
特に大きな変化はなく過ぎていった。
薫の様子が気になったが、本人が本について何も語らないため、
直人も無理に聞く事は避けていた。
「…よし」
日曜日、直人は朝からジャージ姿で本を構えていた。
変化がない日々におさらばだ。
直人は鼻からふうっと深く息を吐き、
心を落ち着かせてから、ゆっくりと本を開いた。
:10/03/24 10:46
:N08A3
:vv1d3OC.
#130 [我輩は匿名である]
要はすでに、あの場所に着いていた。
デートは初めてなのか、そわそわしている。
「そんなにウロウロしないで、落ち着けよ」
直人はそう言いつつも、自分も少しドキドキしている。
美代がついて来ていないかが不安なところだが。
「…あ」
要が声を漏らす。
晶が走ってきている。
念のため後ろを確認するが、誰もついて来ていないようだ。
:10/03/24 10:46
:N08A3
:vv1d3OC.
#131 [我輩は匿名である]
「お待たせ」
「時間ちょうどだな。どうする?喫茶店でも行こうか」
「うん」
喫茶店。カフェじゃなくてか。直人は時代の変化をふと感じる。
「紅茶が美味しい所があるって聞いたんだ。行ってみよう」
「そうなんだ。私、紅茶大好きだよ」
「そりゃ良かった。…あの子はついて来てないよな?」
「大丈夫。見つからないように出て来たから」
「施設の人にも言ってきた?」
「昨日から言ってた」
:10/03/24 10:47
:N08A3
:vv1d3OC.
#132 [我輩は匿名である]
「万全だな」
直人と要は同時に言う。
晶はフフンと、誇らしげに笑っている。
「楽しみにしてたんだもん、邪魔されたくないもんね」
「うん。今日はいっぱいいろんな話をしよう」
「うん!」
晶は笑顔で大きく頷く。
「…ねぇ」
「ん?」
「…長月くんって、何かよそよそしいから…呼び方変えてもいい?」
晶はおずおずと申し出る。
:10/03/24 10:47
:N08A3
:vv1d3OC.
#133 [我輩は匿名である]
「いいねぇ、こういうの」
直人は2人が恋人同士に見えて仕方がない。
「本当だな。俺も何か考えていい?」
「うん、喫茶店に着くまでに決めよ」
晶にそう言われて、直人も一緒に考える。
「…やっぱ、呼び捨てかなぁ…でも、要なら“晶ちゃん”とか呼びそうだな」
「…要くん」
「…じゃあ、晶ちゃん」
やっぱりな。直人は予想通りの展開にちょっと笑う。
:10/03/24 10:48
:N08A3
:vv1d3OC.
#134 [我輩は匿名である]
また、2人もちょっと恥ずかしそうに笑い合う。
「なんか、友達って感じになったな」
「うん。…嬉しい」
晶は少し頬を赤くして小さく笑う。
「…可愛いな。最初は危なそうな奴だと思ってたけど、普通の女の子じゃん」
「友達って、俺が初めてなんだっけ」
「うん」
「何か嬉しいな。1番乗りだもんな」
「ははっ。喜んでもらえて私も嬉しい」
そんな、聞いている方が照れるようなやりとりをしているうちに、要の言っていた喫茶店に到着した。
:10/03/24 10:49
:N08A3
:vv1d3OC.
#135 [我輩は匿名である]
焦げ茶色のレンガで建てられた、ちょっと洋風の喫茶店。
中には多くの客が入っていたが、運良くまだ席が空いている。
店員に席へ案内され、2人は向かい合って座る。
「何頼む?」
「ミルクティーがいい」
「…それだけ?」
「私、あんまりお金持ってなくて」
「ちょっとぐらいなら、出せるよ」
要は若干不安そうながらも、ちょっとちょっと強めに言い張った。
おお、男前。直人は感心する。
:10/03/24 10:49
:N08A3
:vv1d3OC.
#136 [我輩は匿名である]
「えっ、いいよいいよ。ミルクティーだけで十分」
「でも…」
「さっきお昼食べたばっかりだし、本当に大丈夫」
「そう?まぁ何か食べたくなったら言ってね」
「うん、ありがとう」
「…俺、ちょっとトイレ行って来る。もし注目聞かれたら俺もミルクティー頼んどいてもらっていい?」
「うん、わかった」
要は「ごめんな」と言って、トイレに席を立つ。
:10/03/24 10:50
:N08A3
:vv1d3OC.
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194