記憶を売る本屋さん
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#274 [我輩は匿名である]
一方、薫は息を切らして屋上への階段にたどり着いた。

「でも、あんた『もう会いたくない』ってメールしてたじゃん。

そんな奴が偉そうな口叩けんの?」

怜奈の声が聞こえてくる。

気付かれないように、しゃがんで角から踊り場の様子を伺う。

「(あの女…俺のケータイのメールまで見たのか…)」

響子は壁に押さえ付けられたまま黙る。

出ていくべきか、待つべきか。

周りにはもう他の生徒はいないようで、しんと静まり返っている。

⏰:10/04/04 13:23 📱:N08A3 🆔:TU64Ti3w


#275 [我輩は匿名である]
「…確かに、そんなメールは送ったわ」

響子は口を開く。

「…でもそれは、月城くんと喧嘩したからでも、嫌いになったからでもない。

…月城くんの優しさが、怖くなったから」

響子は俯きながら言った。

薫は黙って響子の話を聞く。

「私の事をいつも心配してくれて、いつも笑っていてくれて…。

でも私は…きっと月城くんを好きになっちゃいけない。それに気付いてしまった。

だから『会えない』って言ったの。月城くんなら、私なんかよりもっといい人に出会えると思ったから」

⏰:10/04/04 13:24 📱:N08A3 🆔:TU64Ti3w


#276 [我輩は匿名である]
響子の声が震えている。

『月城くんを好きになっちゃいけない』と言う事は、響子はまだ気付いていないようだ。

夢の中の男性が、今の薫だということに。

「(最後まで知ったんじゃなかったのか…?)」

薫は小さく首をひねる。

響子は“霜月今日子”が死ぬのを夢で見た。

本来ならば、そこで全てを知るはずだ。

だが、響子は薫の正体を知らない。

もしかしたら、彼女だけまだ続きが…?

⏰:10/04/04 13:24 📱:N08A3 🆔:TU64Ti3w


#277 [我輩は匿名である]
「み…見つけた…」

薫の背後で直人の声がした。

薫は素早く、「静かに」とサインをする。

「も…何だよ…?」

直人は小声で文句を言いながら息を切らす。

「ちょっとー、ケータイー!」

おまけにさっきの女子まで上ってきた。

「しーっ!」

薫と直人は同時に女子を黙らせる。

⏰:10/04/04 13:25 📱:N08A3 🆔:TU64Ti3w


#278 [我輩は匿名である]
「…何?」

女子は不満そうに、また眉間にしわを寄せる。

「…何かよくわかんないけどさぁ、じゃああんたはもう関係ないんじゃん。

だったら余計偉そうな事言えないね?

なのにごちゃごちゃ文句つけてきやがって…」

「文句つけてるのはそっちでしょ?好きなら好きだって直接言えばいいじゃない」

「言っても無駄なのよ、あんたがいる限りはね…!」

⏰:10/04/04 13:25 📱:N08A3 🆔:TU64Ti3w


#279 [我輩は匿名である]
「えっ、何、これ修羅場!?」

「うるさいなぁ!俺だって知らねぇよ!つか何で付いて来たんだよ!?」

「だって…」

2人がこそこそ言い合っている間に、痺れを切らして薫が立ち上がる。

「いい加減にしろよ」

その場にいる全員が薫に目を向ける。


「俺この間言ったよなぁ?お前を好きになる事はないって。

それはキョウコがいようがいまいが関係ない。

俺が本気で愛するのは一生でただ1人、長谷部今日子だけだ!」

⏰:10/04/04 13:25 📱:N08A3 🆔:TU64Ti3w


#280 [我輩は匿名である]
その言葉に響子はハッとする。

「長谷部今日子?あの子香月響子じゃなかった?」

「えっ?お前知ってんの?」

「だって隣のクラスで体育一緒だし」

女子は当たり前のように直人に言った。

「…何なのよ…あんた達…」

怜奈は低い声で言う。

「私よりも劣ってるくせに…調子こいてんじゃねーよ…。

あんたのせいよ…あんたさえいなかったら…!」

⏰:10/04/04 13:26 📱:N08A3 🆔:TU64Ti3w


#281 [我輩は匿名である]
怜奈はきつく響子を睨み付ける。

そして、いきなり響子の胸ぐらを掴んだ。

とっさに薫は階段を駆け上がる。

直人と女子はどうすればいいかわからず、

戸惑うように顔を見合わせ、とりあえず階段の影から様子を伺う。

2人を引き離そうと、薫は怜奈の腕に手をかける。

「…離してよ!!」

怜奈はまるで錯乱したかのように、振り払おうと両腕を振り回す。

それが、下りの階段ギリギリに立っていた響子と薫に強く当たってしまった。

⏰:10/04/04 18:31 📱:N08A3 🆔:TU64Ti3w


#282 [我輩は匿名である]
薫は素早く手摺りを掴んで踏みとどまる。

しかし響子はそれが出来ず、足を踏み外した。

落ちる。響子は「もうダメだ」と目をつぶる。

しかし、その響子の手を、とっさに薫が掴んだ。

手摺りを持つ手と引き替えに。

薫は響子を守るようにして彼女を包む。

その直後、2人は一緒に、階段から転げ落ちた。

直人も女子も、何が起こったのかわからず、一瞬動きを止める。

⏰:10/04/04 18:32 📱:N08A3 🆔:TU64Ti3w


#283 [我輩は匿名である]
が、2人が全く動かないのを見て、女子が先に駆け寄った。

「ちょっと!2人とも大丈夫!?」

彼女の声でスイッチが入ったように、直人もハッとして2人の傍に寄る。

見ると、右向きに倒れている薫の頭部から血が流れ出ている。

どれだけ名前を呼んで軽く身体を揺すっても、2人とも目を覚ます気配がない。

「…私、先生いないか見てくる!」

女子はそう言って廊下に走る。

偶然にも男性教員が廊下からこちらに向かってきていたらしく、

女子が助けを呼ぶとすぐに来てくれた。

直人は急な事態についていけず、救急車が来るまでただ呆然と立ち尽くしていた。

⏰:10/04/04 18:32 📱:N08A3 🆔:TU64Ti3w


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