記憶を売る本屋さん
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#347 [我輩は匿名である]
次から次へと問題が起きる。

薫の件がほとんど片付いたと思えば、今度は飛鳥の様子がおかしい。

ベッドの上で、直人はぼーっと考える。

『本を読んでて、人間不信になった事ない?』

あの言葉は一体何だったのだろう。

「(…あいつが…今そうなのかな…?)」

今まで普通に話していたのに、「誰とも話したくない」と言う。

彼女の話からすれば、本のせいでおかしくなったのは明らかだ。

⏰:10/04/06 20:44 📱:N08A3 🆔:Q2X/nrjY


#348 [我輩は匿名である]
「(…あ!そういえば)」

直人は飛び起きて、机にほったらかしになっていた本を手にとる。

昨日は怜奈の一件で、本を見るのを忘れていた。

「あー、くそう…昨日何もなかったよな…?」

直人は何もなかった事を願いながら本を開く。

⏰:10/04/06 20:45 📱:N08A3 🆔:Q2X/nrjY


#349 [我輩は匿名である]
要は直人と同じように、布団の上に寝転がっていた。

「…晶ちゃん、なんであんなに怒ってたんだろう…?」

部屋の中で1人呟く。

この間会いに行った時の、晶のあの態度。

直人と同じように、要もかなり気にしていた。

「(…そりゃそうだよな…。俺は…)」

こいつの生まれ変わりなんだから。

そう思いかけて、直人はふと、それを止めた。

⏰:10/04/06 20:45 📱:N08A3 🆔:Q2X/nrjY


#350 [我輩は匿名である]
“本の中の自分”は、自分の前世の人間。

先に本を手にし、全て読み終えた薫が認めるのだから、ほぼ間違いない。

それでも、直人はどこか、それを認めたくなかった。

「俺の前世が要だろうが…俺は俺だ…」

心の中でそう呟いた後、変に複雑な気分になった。

「…もし明日も来なかったら、もう1回会いに行ってみよう」

「…この間来なかったんだから、明日も来るわけないだろ…」

要の言葉に、直人は呆れたように言い返す。

⏰:10/04/06 20:46 📱:N08A3 🆔:Q2X/nrjY


#351 [我輩は匿名である]
今日はそこまでだった。

直人は頭を抱える。

「…俺は…俺だよな…」

そう言いながら、直人は携帯電話に手を伸ばす。

⏰:10/04/06 20:46 📱:N08A3 🆔:Q2X/nrjY


#352 [我輩は匿名である]
「なぁ」

部屋の窓から夕日を眺めながら話していた薫は、ふと響子に言う。

「ん?」

「…そろそろ…“月城くん”って呼ぶの、やめないか?」

いきなりの申し出に、響子は隣できょとんとする。

が、すぐに優しい笑顔を浮かべた。

「…私の事、まだ“長谷部今日子”って呼ぶくせに」

⏰:10/04/07 10:42 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#353 [我輩は匿名である]
「…あれは…」

薫は「うーん…」と首をかしげる。

“いつになったら、俺が優也だと気付いてくれるのか”

もしかしたら、自分が名前を呼ぶ事で全て思い出してくれるのではないか…。

そういう思いもあった。


しかしそれよりも、薫は“香月響子=長谷部今日子”としか思っていなかったのだ。

「…私は…“長谷部今日子”じゃなくて、“香月響子”って言ってほしかったな」

響子はぽつりと言った。

薫はきょとんとする。

⏰:10/04/07 11:00 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#354 [我輩は匿名である]
「…どういう意味?」

響子は少し淋しそうに下を向く。

「…だって、私は長谷部今日子じゃないから…」

響子が何を言っているのか、薫はわからなかった。

「…キョウコ…?」

「…月城くんの言う“キョウコ”は、どっちのキョウコなの?」

響子の言葉が、薫の胸に突き刺さる。

⏰:10/04/07 11:00 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#355 [我輩は匿名である]
「確かに、私は長谷部今日子の生まれ変わりだよ?

顔もそっくりだし、同じだと思われても仕方ないと思う。

でも、私は香月響子だよ。長谷部今日子じゃない」

響子はぎゅっと、自分の両手を握り締める。

「私は、優也と月城くんを同じ人だと思わない。

“霜月優也”の記憶を持ってるだけで、あなたは“霜月優也”じゃない。

…私は…私が好きなのは、…“月城薫”だよ」

響子の声が震えている。

薫は何も言えなかった。

⏰:10/04/07 11:00 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


#356 [我輩は匿名である]
ベッドの上で携帯電話のバイブが鳴る。

手にとって見てみると、直人から電話がかかってきている。

「…出なよ、って言っても、ここでは電話出来ないけど」

響子はうつむいたまま言う。

「でも…」

「大事な用かもしれないよ。…私は、後でいいから」
響子は少し笑ってみせる。
が、薫の気持ちは電話どころではない。

⏰:10/04/07 11:01 📱:N08A3 🆔:yPxyjGr2


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