記憶を売る本屋さん
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#384 [我輩は匿名である]
「晶ちゃん」
いつになく、要は何の躊躇いもなく話し掛ける。
晶はそれに気付き、また背を向けようとする。
「逃げないでよ!」
要は思わず声を上げる。
晶はピタッと足を止める。
「俺、ちゃんと話がしたいんだ!だから、逃げないで!」
要は必死に晶を引き止める。
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#385 [我輩は匿名である]
晶は突っ立ったまま何も言わない。
沈黙のまま、ただ時間が過ぎていく。
その間ずっと、要は晶の返事を待ち続ける。
「………ちょっと待ってて」
要の粘りに負け、晶はそう言って建物に入っていった。
しばらくして、晶が戻ってきた。
「…来て」
門から出るなり、晶は要の手を引っ張って連れ出す。
要も何も言わずに、言われた通りについていく。
しばらく歩いて、2人はあまり人通りの多くない通りに入った。
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#386 [我輩は匿名である]
「…何?」
晶は視線も合わせずに尋ねる。
「…何でいきなり来なくなったの?俺ずっと待ってたのに」
要は少し苛立ったように聞き返す。
「『待ってた』?…うそ言わないでよ」
晶は笑う。
「あんたがそんな嘘つきだったなんて…最低」
「嘘なんかついてないよ!俺毎週…」
「知らない女の人と、楽しそうに歩いてたじゃない!!」
晶は声を荒げながら振り向く。
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#387 [我輩は匿名である]
「…何の事?」
要は首をかしげる。
しかし、直人は「あ…!」と声を上げた。
晶が言っているのは、きっと道案内を頼まれたあの日の事だ。
「あれは…!」
要も直人と同時に気付き、事情を説明しようとする。
しかし晶は冷たい視線を送ってそれを止める。
「そりゃ、私みたいな子といるよりも、あんな美人な人といる方が楽しいよね」
「違うよ!あの人は…」
:10/04/07 22:56
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#388 [我輩は匿名である]
「私、ずっとあそこで待ってたのに!」
晶は「見損なった」という目で要を見る。
今度は逆に、要と直人がその言葉を疑った。
「待ってた?だって、2時になっても来なかったじゃないか!」
「あの日は、小さい子のお世話してたらちょっと遅れて…。
でも、遅れたって言っても2、3分だけよ!
私、走って行ったのに…」
「だ…だって、あの日は来れないって…」
「いい加減な事ばっかり言わないでよ!!
いつ私がそんな事言った!?」
:10/04/07 22:56
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#389 [我輩は匿名である]
「…え…?」
2人ともわけがわからない。
しかし、少し考えて、直人は理解した。
「…あいつ…俺達をはめたって事か…?」
美代が「伝言だ」と要のところに来た、あの日。
理由がない事しか気にしていなかった要と直人。
それが、美代が勝手に作り出した嘘だったとしたら…。
「…あの人は、そんなんじゃないよ」
要は先に、あの女性の話をするつもりのようだ。
:10/04/07 22:57
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#390 [我輩は匿名である]
「あの人は、俺に道を聞いてきたんだ。姫崎公園に行きたいって。
説明するだけにしようかと思ってたけど、ややこしいし…。
晶ちゃんも来なかったから、案内した方が早いと思ったんだ」
「…道案内だけであんなに楽しそうに喋れる?」
晶は全く信じてくれない。
「…さっきから思ってたんだけど…」
さすがに要も腹が立ってきたのか、不機嫌そうに言い返す。
「晶ちゃん、何で俺達が一緒に歩いてたの知ってるの?」
要が女性を案内した道は、待ち合わせ場所から角を曲がらないと見えない。
要はそれがひっかかっていたらしい。
:10/04/07 22:57
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#391 [我輩は匿名である]
晶はなぜか、うつむいて黙り込む。
「………後をつけてきてたの?」
そう聞いても、晶はまだ返事をしない。
否定しないという事は、そうなのだろう。
「…もう意味わかんねぇよ…」
直人はモヤモヤして仕方がない。
晶も要も、ただ黙り込む。
「…もう信じないよ、…何言われても」
晶は言った。
:10/04/07 22:58
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#392 [我輩は匿名である]
「晶ちゃん…!」
「やっと信じられる人を見つけたのに…その人にまで裏切られたら、
何も信じられなくなるに決まってるじゃない!
大っ嫌いよ!あんたなんか!!二度と来ないで!!」
晶は叫ぶようにそう言って、逃げるように走りだす。
要も反射的にそれを追う。
:10/04/07 22:58
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#393 [我輩は匿名である]
「…要…何で気付かねぇんだよ…!」
素直な要は、美代が疑わしいという考えには、まだ行き着いていないのだろう。
美代が勝手に言いに来たという事を話せれば、晶も話を聞くかもしれないのに。
「こいつが…俺だったら…!」
直人は悔しくて仕方がなかった。
ここにいるのが自分なら、晶に全て話せるのに。
:10/04/07 22:58
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