記憶を売る本屋さん
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#465 [我輩は匿名である]
部屋を見回すが、誰もいない。
泣いているうちに、いつの間にか眠っていたらしく、窓の外がもう明るい。
「…要…?」
直人は呟く。
「晶ちゃん」と呼ぶのは、要だけだ。間違いない。
「(今の…夢か…。
…そうだよな…泣くなんて、俺らしくないよな)」
要の声に背中を押されて、直人はベッドの上に座り、考える。
「直人ー!学校はー!?」
ドアの外から、今度こそ母親の声がする。
:10/04/10 09:38
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#466 [我輩は匿名である]
時計は朝の8時半を回っている。
「今日は休むー!」
直人は理由もなくそう返事をした。
変だと思われても構わない。それどころじゃない気がした。
「(…『同じ事を繰り返す』って…晶の生まれ変わりがいるのか?
しかも……また死ぬ気でいるのか…?
…何のために助けたと思ってんだよ…あいつ……)」
直人はため息をつき、あの日、晶が言っていた事を思い出す。
:10/04/10 09:39
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#467 [我輩は匿名である]
「(『もう誰も信じない』…って事は、俺が…要が女を連れてたから怒った…。
でも、俺が死んだから後を追った…。
あー、わかんねぇなぁ…)」
直人は頭をわしゃわしゃと掻き乱す。
そもそも、晶がなぜ自殺したのかがよくわからない。
要に愛想を尽かしたのに、要が死んだからショックで死んだ。
直人にはこれが理解できないらしい。
仕方がないので、最初から順を追って考える。
:10/04/10 09:39
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#468 [我輩は匿名である]
「(晶は要しか心を許せる友達がいなかった。
「私には要くんがいてくれるだけでいい」とまで言っていた。
しかし、要が女性と歩いてるのを目撃した。…道案内しただけだけど。
それで『裏切られた』と勘違いした。
で、「もう誰も信じない」と言った。
でも自分をかばった要が死んだ。
……頼れる人が本当にいなくなっちまった、とか思ったのか?
だから、自暴自棄になったのか?
って事は、俺が死んだのがいけないのか…?)」
直人は腕を組んで考え込む。
:10/04/10 09:40
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#469 [我輩は匿名である]
「(でも喧嘩しなければ、俺も死なないで済んだだろ…)」
という事は、勘違いされたのがダメだったのか。
「『もう誰も信じない』…信じない…信じ“られ”なくなった…?
誰も信じられない……誰も……。
ん?誰かがどっかで同じ事…」
言っていた。
直人は両手で頭を抱え、「あー」とうなり声を上げる。
:10/04/10 09:40
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#470 [我輩は匿名である]
薫?いや、薫は誰かを信じなくなった事はない。
響子?彼女は寧ろ本気で(薫を)信じ続ける方だ。
奏子?…あいつは自殺とかする性格じゃないだろ。
怜奈?…あいつは死んでくれても別に構わない。
「…全員違う…としたら…?」
直人は首が痛くなるほど両方に振りまくる。
『あんた、人間不信になった事ない?』
ふと、誰かがそう言った時の事を思い出す。
:10/04/10 09:41
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#471 [我輩は匿名である]
「…!」
直人はハッと顔を上げる。
「…金髪女…?」
そうだ。この間会った時、やつれた顔でそう言っていた。
『誰とも話したくない』と。
直人はとっさに、机から本を取って開く。
「(あれはいつだった…?結構最近だったはず…。
最後に会ったのは、病院に見舞いに行って、薫に追い返された日…)」
直人は考えながら、今度はカレンダーに目を向ける。
:10/04/10 09:42
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#472 [我輩は匿名である]
「(あいつらが階段から落ちたのは、この間の金曜日…。
その次の日だから…5月17日…!)」
直人はそれに近い日にちのページを見る。
事の始まりは、5月5日だ。
この日に要が女性を道案内し、晶が勘違いして怒った。
「(…待てよ…あいつ、この次の日、休みじゃなかったか…?)」
最近飛鳥はよく学校を休んでいるため、はっきりは覚えていない。
しかし、それが確か始まったのが、この日らへんだった気がする。
:10/04/10 09:42
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#473 [我輩は匿名である]
「(もしあいつが、薫たちみたいに自分と前世を重ね合わせていたとしたら…)」
直人は本を見ながら、再び頭を抱え直す。
目を閉じ、今までの会話を思い起こす。
「(…あいつには友達がいない…。いつも1人…。
『なんで他の人と接するのが苦手か、その理由を知りたい』…。
なんかそんな事言ってたよな…。だから本を読んでた…。
『死にたくなったら死ねばいい』…そんな事も…)」
言っていた。『そんなの人の勝手』とも。
直人の表情が曇る。
:10/04/10 09:42
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#474 [我輩は匿名である]
「(…次は…階段で喋った日だ…。
あの時は……そうだ、家にいても楽しくないって話だ。
『誰も私を見てくれない』…。でも俺とはなぜかシカトせずに喋る…)」
頭を抱える手に、自然と力が入る。
「(…晶も最初、家出っぽい感じだったな…。
『帰りたくないから、ここにいる。誰も心配してない』…。
一緒じゃねぇかよ…何もかも…!)」
直人はなぜか悔しくなって、大きくため息をつく。
:10/04/10 09:43
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