記憶を売る本屋さん
最新 最初 🆕
#549 [我輩は匿名である]
「そう。でも“もしかしたら晶は来るかもしれない”と思って、要も行ったんだ。

で、途中で道聞かれて、一旦待ち合わせ場所に晶がいないか、ちゃんと見に行ったんだよ。

でもやっぱりいなかったから、案内しようってなったわけ」

「…そうだったんだ…」

晶は後悔し、肩を落とす。

「ま、美代にまんまと騙されたってわけだ、俺たちは」

公園に着き、水道の前に直人が腰を下ろす。

⏰:10/04/13 17:29 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#550 [我輩は匿名である]
「…ごめんね」

飛鳥も、直人の左後ろにしゃがみこむ。

「私が…私があの時、ちゃんと話を聞いてたら…

こんな事にならずに済んだのに…」

直人は黙って手を洗いながら、背後からのすすり泣きを聞く。

「…まぁ、この方が良かったのかもしれねぇけど」

直人はぼそっと、飛鳥に背を向けたまま言った。

⏰:10/04/13 17:29 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#551 [我輩は匿名である]
「だってお前、要がいればそれでいいって思ったままだっただろ?

それってダメなんじゃねぇのって思って。

あいつはどうか知らねぇけど、俺はそう思う」

飛鳥は顔を上げ、直人の背中を見つめる。

「…要は謝られるよりも、友達に囲まれて楽しそうにしてるの見る方が嬉しいんじゃない?

あんなのんきな性格だったし、多分その方が、あいつもホッとするだろ」

「……うん」

飛鳥は涙を拭い、大きく頷いた。

⏰:10/04/13 19:45 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#552 [我輩は匿名である]
「…帰るか」

蛇口を閉めて、直人は立ち上がる。

それを見て、飛鳥も立って歩きだした。


「…そういえば、要が見た案内してた女の人いるじゃん?

あの人も晶と同じように、養護施設で育ったんだって」

思いもよらない話に、飛鳥は直人を見る。

「そうなの?」

⏰:10/04/13 19:45 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#553 [我輩は匿名である]
「うん。で、お前にその女の人から伝言」

「伝言?」

「『“施設で育とうが親の元で育とうが、どっちが良い”なんてない。

他の人との間に壁を作らずに、一歩踏み込んでみろ。』……ってな。

ちなみにあの時は、友達の家に遊びに行く途中だったらしい」

「……そっか…」

飛鳥は再び、少し下を向く。

⏰:10/04/13 19:46 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#554 [我輩は匿名である]
「……やっぱり、怖かったんだ。

誰かを信じようとしても、また捨てられたらどうしようって…。

そう思ったら、なんかすごい怖かったんだよ」

直人の隣で、飛鳥は言う。

「…そりゃ、生みの親に捨てられたんだから、人間不信にもなるだろうな」

「うん…。でも要は何となく…本当に何となく、ずっと友達でいてくれる気がしたし、

一緒にいる時は、嫌な事全部忘れられたぐらい、楽しかった。

…だからその分、要が待ち合わせに来ずに、女の人連れて歩いてるの見たら…

ショックすぎて、もうわけわかんなくなって…」

⏰:10/04/13 19:46 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#555 [我輩は匿名である]
飛鳥はため息を吐きながら、両手で髪をかきあげた。

「…ま、そんだけ友達の大事さわかってるんなら、大丈夫なんじゃね?

俺達の学年で女子150人ぐらいいるんだし、いい奴みつかるよ、多分」

平然と言う直人を、飛鳥は横目で見つめる。

「……あんた、何でそんな前向きなの?」

そう言われて、直人は「さぁ〜?」と首をかしげる。

「要がそうだったからじゃない?能天気と言うか何と言うか…」

「あー、あんたそんな感じだね。バカっていうかなんというか」

「はぁ?」

⏰:10/04/13 19:47 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#556 [我輩は匿名である]
「何よ。バカはバカでしょ?」

「お前に言われたくねぇよ」

「ま、横にいる子が頭良いし、運動も出来そうだし、イケメンだもんね。仕方ないか」

「黙ってれば調子に乗りやがって!」

直人は飛鳥に食って掛かる。

「だって本当の事じゃん!!」

飛鳥は言いながら、逃げるように走りだす。

⏰:10/04/13 19:47 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#557 [我輩は匿名である]
「(あ)」

飛鳥の背中を見て、直人はやっと理解した。

「(オレンジの猫って……プーマの柄の事だったのか…)」

直人は1人、「なるほどね」と呟く。

そして、「待てよこの野郎!」と叫んで、飛鳥の背中を追い掛けていった。

⏰:10/04/13 19:49 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#558 [我輩は匿名である]
その日他に何があったかは、直人はほとんど覚えていない。

帰りが遅かった事で母親にこっぴどく説教されたが、その内容も全く頭に入らなかったし、

どうなったのか薫に報告するのも、すっかり忘れていた。

晶が…飛鳥が無事だった事だけで、頭がいっぱいだった。

直人はベッドの上でじっと、あの本を見つめる。

この本をもらってから、まだ1ヶ月ちょっとしか経っていない。

しかし、もう何ヵ月も経っているような、変な感じがする。

「(薫は、2年以上読んでたんだよな…。よくやるな…あいつも)」

直人はそんな事を考えながら、ベッドに寝転ぶ。

そしてそのまま眠ってしまった。

⏰:10/04/13 19:49 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194