記憶を売る本屋さん
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#81 [我輩は匿名である]
どうやらあの都市伝説は、直人達が住むこの町以外でもあるらしく、
イニシャルではあるがいろんな市の名前が書かれている。
「…ん?」
まず、直人はあるスレッド名を見て、マウスを動かす手を止める。
『例の本はいつの間にか消えるらしい』
何のことだ?直人はそのスレッドを開いた。
『A市で、本をもらったという少年が、2ヵ月後に行方不明になった。
クラスメイトに、例の老人から本をもらったと少年は言いふらしていたそうだが、
行方不明後、警察が男子の部屋を捜索した際、不審な本は見当たらなかったという』
これが本題だった。
:10/03/23 14:33
:PC
:pMFPl9Gs
#82 [我輩は匿名である]
これに対し、『警察が見つけられなかっただけでは?』『本を持って行方をくらましたのでは?』など、
いろんな意見が載せられていたが、同じような話を聞いた、というレスの方が圧倒的に多い。
「…ふぅん…」
直人は掲示板に戻り、他の記事を探す。
そして、また違うスレッド名を見て、「あ…」と声を漏らした。
『本の中身は自分の前世?』
直人は信じられず、なかなか指を動かせない。
しかし、文の最後に『?』が付いている事から、
本当の話ではないかもしれないと自分に言い聞かせて、スレッドを開いた。
:10/03/23 14:40
:PC
:pMFPl9Gs
#83 [我輩は匿名である]
『自分はあの老人に本をもらい、最後まで読みました。
途中から、急に本の中の話に入れ込むようになり、
最終的に、自分に起きている事だと感じられました。
ある時、身体の持ち主の顔が、鏡で見えました。
本当の世界の自分と、同じ顔をしていました。
だから、もしかしてこの人は、僕の前世の事では、と思ったのです。
僕の話はこれで終わりです。
今から僕は、人を殺しに行きます。』
そう書かれていた。
決定的な事はないようだが、『自分と同じ顔』それが引っかかる。
長月要は、俺と同じ顔をしているのだろうか。
:10/03/23 14:44
:PC
:pMFPl9Gs
#84 [我輩は匿名である]
そしてもう1つ。『今から僕は、人を殺しに行きます。』
よくこんな書き込みが、削除されずに残っているな。
そうも思ったが、直人は違う事を考えていた。
もしかしたら、本は自分を死に駆り立てるだけでなく、
人を狂わせることもできるのではないか、と。
もしそうであれば、自分はどうなってしまうのだろう…。
あの本の、本当の恐怖を知った気がした。
もしかして、薫が言っていた『死なない人もいる』とは、
こういう人の事だったのかもしれない。
「(薫は…ここを見てたのか…?)」
薫はオカルトには興味がないため、こんなサイトを見ているとは思えない。
ただ誰かに聞いただけかもしれない。
:10/03/23 14:52
:PC
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#85 [我輩は匿名である]
しかし、直人には一昨日の、薫の怖い顔が忘れられずにいた。
「石川晶」と呟いた事も。
気のせいかと思おうとしても、どうしても思えないのだ。
「(…あいつ…やっぱり何か知ってるんじゃないか…?
一昨日俺が悩んでた時も、本をもらったって話す前から分かってたみたいだったし…。
それにあの時…薫は笑ってた…。いつもの感じじゃなくて…何か変だった)」
いつもの笑顔ではなかった、あの時の薫の顔。
直人はブンブンと、大きく頭を振る。
「(待て待て!今までずっと仲良くやって来たあいつだぞ!?
隠し事なんか、1つもした事なかったじゃねーか!)」
「今までは」。直人は少しうつむく。
:10/03/23 15:00
:PC
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#86 [我輩は匿名である]
もう何が何なのか、分からなくなってきた。
出きる事なら、あの老人に本を返したい、とさえ思った。
親友を疑うのは、初めてだったのだ。
それだけじゃない。自分は、本をもらった事を隠していた。たった1日でも。
直人は大きくため息をつく。
もう、本を読むのはやめよう。『いつの間にか消える』んだろう?
前世の事なんか、どうでもいい。俺には関係ない。
直人はパソコンの電源を切り、本を引き出しにしまいこんだ。
:10/03/23 15:05
:PC
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#87 [我輩は匿名である]
本を引き出しに封印してから3日。
朝たまたまニュースが映っていた為、歯を磨きながらボーっと聞いていた。
そして、ぎょっとした。
少年が1歳年上の男性を刺し殺したという。そこまではよくあるニュースである。
しかし、直人が驚いたのは、その後の話だった。
その少年は、少し前に『都市伝説に関する掲示板に、殺人予告をしていた』というのだ。
この間の土曜日に見た、あの書き込みだ。
呆然として、歯ブラシを落としそうになる。
「そんな…」
あの書き込みは、本当だったのか。
直人はしばらく、テレビから目を離す事が出来なかった。
:10/03/23 15:14
:PC
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#88 [我輩は匿名である]
テレビを見すぎて、遅刻ぎりぎりに学校に滑り込んだ直人は、教室に入ってすぐに薫を探す。
しかし、鞄はあるのに、姿が見当たらない。
「(どこ行ったんだよ…こんな時に…)」
トイレだろうか?そう思って教室を出る。
すると、薫がちょうど、こちらに向かって歩いてきているのが見えた。
「(いた!…ん?)」
彼の隣に、見知らぬ女子生徒がいる。しかも、2人で楽しそうに話しているではないか。
もしや。直人は確信した。「彼女だ!!」と。
「(先越された…)」
ドアの影から、恨めしそうに薫に視線を送る。
それに気付いたのか、薫がこっちを向いて、顔を引きつらせる。
:10/03/23 15:20
:PC
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#89 [我輩は匿名である]
「また明日」とドアの近くで言葉を交わし、女子生徒は自分のクラスへ歩いていった。
「よぉ。おはよ」
「よぉ。じゃない!!彼女か、彼女ができたんだな!」
「ちょっと待て、まだ彼女じゃない」
「まだって何だ!考えがいやらしいぞ、お前!!」
「どこがいやらしいんだ!?普通だろ!!」
「そのうち彼女にするつもりなんだろうが!!」
「約束したんだよ!!ずっと前に!!」
薫はそう言ってから、「しまった」というように口に手を当てる。
直人はそれを見逃さなかった。
:10/03/23 15:25
:PC
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#90 [我輩は匿名である]
「…ずっと前って、いつだ?」
直人の問いに、薫は目をそらして黙り込む。
おかしい。これは絶対に何かある。直人は思った。
「…お前、本は読んでるか?」
「話変えんなよ」
「変わってねぇよ」
どう考えても変わっただろ。直人は言い返したかったが、我慢して飲み込んだ。
「やめたよ、読むの」
「やめた?」
「あぁ」
:10/03/23 15:29
:PC
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