記憶を売る本屋さん
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#112 [我輩は匿名である]
「じゃあ、2時ごろ、2時ぴったりにしよう」

「うん!」

晶は楽しそうに、笑って大きく頷く。

待ち合わせなど、した事がないのかもしれない。

まるでデートの待ち合わせをしているような2人。

それを見ていて、直人も何だか嬉しくなってきた。

「じゃあ、次の日曜日の2時に、あの場所で」

「うん!絶対だよ!」

「うん」

要が頷くのを見てから、晶は手を振りながら帰っていった。

晶が見えなくなってから、直人の視界も暗くなった。

⏰:10/03/23 17:39 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#113 [我輩は匿名である]
次の日曜日、つまり4月21日。2人が初めてデートする日。

「(…この日は、忘れずに読まないとな)」

直人は40年前の今日の話に一通り目を通す。

やはり、読んでいない日の事は書かれていなかった。

「(毎日ちゃんと読めって事か)」

直人は少し反省する。

ただ、話が急激に変わっていない事にはホッとした。

『自分に起きている事のように感じられる』

ネットで見たあの一言が、ふと頭の中をよぎった。

少しだけ、今の自分がそうなりつつある気がした。

⏰:10/03/23 17:53 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#114 [我輩は匿名である]
要と晶の間を見守るのもいいが、直人はもう1つ肝心な事を思い出した。

「(…薫に謝ったほうがいいかなぁ…)」

直人は考えながら、携帯電話を開く。

しかし、誰からもメールはない。

「(…いや、意外と明日はいつも通りかもしれないな)」

直人はそんな変な期待を抱き、携帯電話を閉じた。

⏰:10/03/23 17:57 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#115 [我輩は匿名である]
しかし、それはどうやら甘かったようだ。

朝少し早めに学校に着いたが、すでに薫は鞄だけを残し、教室内にはいなかった。

「はぁ…」

机に座って、何て謝ろうか考える。

すると。

「ねぇねぇ、水無月くん」

隣の席の女子が話しかけてきた。大橋怜奈。そんな名前だった気がする。

「…何か用…?」

「水無月くんって、月城くんと仲良いよね?」

こんな時に。お前は嫌味を言いたいのか。直人はその気持ちを抑えて「まぁ」とだけ返事をする。

⏰:10/03/23 18:02 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#116 [我輩は匿名である]
「月城くんって、彼女いるの?」

何だこの女。直人は答えず、「何で?」と聞き返す。

「なんか、友達が月城くんの事好きらしくて」

「(…モテるんだな、あいつ)」

直人は若干ショックを受けつつ、「いないんじゃない?」と適当に返事をする。

「ふぅん、そっか」

「あ!」

昨日薫が女を連れていたのを、今思い出した。

しかし、すでに怜奈は席を離れ、教室を出てしまっていた。

「あぁ〜やっちまった…」

直人は頭を抱えて、机に突っ伏した。

⏰:10/03/23 18:07 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#117 [我輩は匿名である]
その頃、薫は屋上で響子と一緒に話をしていた。

「あらぁ、喧嘩しちゃったんだ」

「まぁな。昔からよく喧嘩はしてたけど、昨日は珍しく、両方本気だったな」

「2人とも怪我しなかった?」

「あぁ、俺が壁に頭ぶつけたぐらいで」

「えっ!?ダメじゃん!!大丈夫!?」

響子はびっくりしながら大声を出す。

「大丈夫だよ。ちょっとたんこぶ出来てたみたいだけど、治ったみたい」

「そう…。気をつけないとダメだよ」

「…うん」

薫はフッと、小さく笑う。

⏰:10/03/23 18:12 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#118 [我輩は匿名である]
「…なぁ、香月」

「ん?」

「…“霜月優也”って名前に心当たりないか?」

薫は真剣な表情で、響子に尋ねる。

その真剣さに、響子も本気で頭をひねってみるが、どうやらないようだ。

「…知らない、と思う」

「…そうか」

薫は残念そうにため息をついた。

「その人がどうかしたの?」

「…いや、何でもない」

「何それ!?気になるじゃない!!」

「いいよ、忘れて」

「無理!!」

⏰:10/03/23 18:16 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#119 [我輩は匿名である]
響子が問う正そうと必死になっていると、チャイムが鳴った。

「あ、チャイム。かーえろ」

薫はさっさと、逃げるように歩き出す。

「あっ、ちょっと待ってよ!」

響子も慌てて走り出す。

しかし、一昨日よりも少し強い頭痛が、響子を襲った。

「痛っ…!」

響子は頭を抑えてしゃがみこむ。

その声に気付き、薫が急いで駆け寄る。

「おい、大丈夫か!?」

「う…うん…。大丈夫…一瞬だけだったから」

⏰:10/03/23 18:21 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#120 [我輩は匿名である]
響子は弱々しく笑って、顔を上げる。

しかし、薫の心配は晴れない。

「…保健室行くか?」

「いいよ、そこまでしなくても、もう治ったから。…ごめんね、心配かけて」

響子は「行こ」と、歩き出す。

その背中を、薫は止まったまま見つめる。

「…俺に謝るな、…今日子」

薫の独り言が聞こえたのか、響子が振り向く。

「何か言った?」

「……いや、何にも言ってないよ」

薫はそう言って、響子と並んで屋上を後にした。

⏰:10/03/23 18:27 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


#121 [我輩は匿名である]
「悪かった!!!」

昼休みになるやいなや、直人は薫の元に謝りに行った。

急に手を合わせて謝ってきたため、薫はきょとんとする。

「…そのぉ〜、昨日は俺ちょっとイライラしてて、おまけに女連れてるし、何かモテるみたいだし?

なんか余計に腹立ってきて、っていうか今もあんまりスッキリしてないけど」

「謝る気あるのか?お前」

謝っているのか皮肉っているのかわからない直人に、薫も言い返す。

「っていうか、『モテるみたい』ってどこ情報?」

「俺情報」

「はぁ?」

⏰:10/03/23 18:37 📱:PC 🆔:pMFPl9Gs


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