記憶を売る本屋さん
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#177 [我輩は匿名である]
「はぁー…」

掃除当番である薫を待つ間、直人は階段に座って大きく伸びをしていた。

もう金曜日だが、どうやら日曜日にならないと本の話は進まないらしい。

「(つまんねぇなぁ…平日はどうでもいい学校の話だけだもんなぁ…。

学校より、晶との話が進むのかどうかが重要なんだよ。

要の学校話なんか…)」

そんな事を考えていたら、目の前をあの金髪女が通りかかった。

「あっ、おい!金髪女!」

呼び止められて、金髪女の飛鳥が足を止め、こちらをにらみつける。

⏰:10/03/29 15:51 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#178 [我輩は匿名である]
「…何か用?」

「今日はさっさと帰るのか?いつも最後まで残ってるのに」

直人に言われて、飛鳥は顔を背ける。

「何でいつもすぐ家に帰んないの?

「…何でって……」

飛鳥は口ごもる。

直人は「まぁ、こっち来いよ」と手招きする。

少し悩んで、飛鳥は直人の横に腰を下ろした。

といっても、2人の間に人一人分くらいのスペースは空いているが。

⏰:10/03/29 15:51 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#179 [我輩は匿名である]
「…私、家嫌いだから」

「何で」

きょとんとした直人の問いに、飛鳥はうつむく。

「……親は私何か見てない。大切なのは頭の良い弟だけ。

晩ご飯の時も、私は見向きもしない。話もしない。だから、家にいてもつまんないでしょ」

「…よーするに、ネグレクトとか言うやつか?」

「…ご飯はくれるんだし、虐待ではないんじゃないの」

飛鳥は「そういう話じゃないから」とでも言いたげにため息をつく。

⏰:10/03/29 15:52 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#180 [我輩は匿名である]
「…ま、それじゃあ家に帰りたくはないわな。

…いいんじゃねぇの?そんな家にはいてやんなくても」

「でしょ?だから帰んないのよ。ご飯の時間になるまでは」

飛鳥はそう言って少し笑った。

「で、今日は帰んのかよ」

「いろいろ寄ってから帰る」

「なるほどな。…で、本は読んでんのか?」

「読んでるわよ、ちゃんと。最近つまんないけど」

「へぇ、俺と一緒じゃん。つまんねー時ってホントつまんねーよな」

直人はまたため息をつく。

⏰:10/03/29 15:53 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#181 [我輩は匿名である]
いつもの直人ならば、「お前の本ってどんな話?」と

調子に乗って尋ねるところだが、何故かそんな気にはならない。

聞いてはいけないような気がしたのだ。

「…で?お前が人間嫌いな理由はわかったわけ?」

「よくわかんない。本の中の奴も人間嫌いみたいだけど」

「遺伝じゃねぇーの?」

「私の祖先じゃないから」

飛鳥はイラっとしたように顔を引きつらせる。

飛鳥の様子を見て、直人はふと、ある事に気付いた。

⏰:10/03/29 15:53 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#182 [我輩は匿名である]
「…お前さぁ、人間嫌いな割に、俺とはよく喋るよな」

「はぁ?」

飛鳥はますます顔をしかめる。

「あんたが話し掛けて、いろいろ喋りかけてくるからでしょ?」

「まぁそうだけど、お前他の奴に話し掛けられてもシカトするじゃん。でも、俺にはシカトしない」

「…まぁ…」

「言われてみれば」と、飛鳥も不思議そうに首をひねる。

「…もしかしてお前、俺の事、す」

「黙れ」

飛鳥は不機嫌そうに、持っていた鞄で直人の顔をたたいた。

⏰:10/03/29 15:54 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#183 [我輩は匿名である]
階段にバシン!という音が響く。

「いってぇー…」

直人は両手で顔を覆う。

その間に、飛鳥はさっさと鞄を持って階段を降りていった。

「(何なんだあいつは…)」

眉間にしわを寄せて階段を降りていると、下駄箱から声が聞こえてきた。

「えーっ、怜奈、月城くん好きなの!?」

月城って誰だ。飛鳥はまた首をかしげる。

⏰:10/03/29 15:55 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#184 [我輩は匿名である]
「だってさぁ、かっこ良くない?クールだし」

「まぁかっこ良いとは思うけど、冷たそうじゃない?」

「そういえば、この間他の女子と歩いてたよ!私見たもん!」

よく見ると、同じクラスの女子達だ。

めんどうなので、飛鳥は足を止める。

「私も見たよ、それ。目の前でいちゃついてくれちゃって」

「彼女なんじゃないの?」

「違うらしい。だから余計邪魔なのよねぇ」

「怜奈、欲しい物は手に入れないと気が済まないもんね」

⏰:10/03/29 15:56 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#185 [我輩は匿名である]
「もちろん。じゃなきゃ人生楽しくないじゃん」

怜奈は当然のような言い方をする。

急に、飛鳥の背筋がぞくっとして、全身に寒気が走る。

それが何故か、飛鳥にもわからない。

3人は笑いながら、校舎を出ていったが、飛鳥はしばらく、足がすくんで動けなかった。

⏰:10/03/29 15:57 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#186 [我輩は匿名である]
休日はあっという間に過ぎた。

「(あんだけ楽しみにしてたのに、普通に喋って終わりとかありかよ…)」

いつものように、直人は学校の机にうつ伏せになっていた。

月曜の朝はいつもそうだが、今週は特にだらけてしまう。

要と晶は、40年前の昨日、前と同じ喫茶店で、3〜40分ほど楽しげに話して別れた。

話したと言っても、学校の事や要の家の話など、大して重要な話でもなかった。

最近はこんな事が当たり前になってきてしまった。

これでは読む気力が失せてしまう。

2人はまた日曜日に合う約束をしたが、果たして進展はあるのか…。

⏰:10/03/29 17:19 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


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