記憶を売る本屋さん
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#433 [我輩は匿名である]
次の日の放課後、直人は薫の家を訪れた。

ドアの前で、大きく息を吐く。

そして、覚悟を決めたようにベルを押した。

「はい」

インターホンから、薫の母親の声が聞こえる。

「あっ、水無月直人です」

「あらぁ、ちょっと待ってね」

のんきな声は、そう言って1度途切れた。

ガチャッと、ドアの鍵が開く。

⏰:10/04/09 18:41 📱:N08A3 🆔:D1zW908U


#434 [我輩は匿名である]
「いらっしゃーい」

声と同時に、薫の母が姿を現した。

「こんちわ」

「お見舞いに来てくれたの?」

「ああ、薫元気?」

「暇そうにしてるわ。さ、入って」

小さい頃からよく面倒を見てくれたため、彼女はよく知っている。

直人は気兼ねなく、「お邪魔しまーす」と中に入る。

「お茶持っていくから、先に行ってて」

「うん、ありがと」

⏰:10/04/09 18:42 📱:N08A3 🆔:D1zW908U


#435 [我輩は匿名である]
直人は礼を言って、左側にあるドアを開く。

「…よぉ。いらっしゃい」

薫は、ベッドの上で雑誌を読んでいた。

「元気そうじゃん、早く学校来いよ」

直人はつまらなそうに言いながら、ベッドの横に座り込む。

「無理言うなよ。前かがみになったら痛むんだから、ノートすら取れないんだぞ?」

「お前がいないと暇なんだよ」

「知らねーよ」

薫は呆れたように言い捨てる。

⏰:10/04/09 18:42 📱:N08A3 🆔:D1zW908U


#436 [我輩は匿名である]
「はーい、お茶」

ちょうどよく、薫の母親が2人分の麦茶を持ってきてくれた。

「サンキュー、おばさん」

「どういたしまして。ゆっくりして行ってねー」

彼女はにっこり笑って部屋を出て行った。

「で?俺に何か用か?」

麦茶が入ったグラスを片手に、薫が尋ねる。

⏰:10/04/09 18:42 📱:N08A3 🆔:D1zW908U


#437 [我輩は匿名である]
「純粋なお見舞い」

「お前がそれ事だけでわざわざ来るかよ」

薫は疑わしい目で直人を見る。

ばれたか。直人はチッと舌打ちする。

「…まぁ、いろいろあってさ…」

暗い顔でうつむく直人に、薫は首をかしげつつ、カレンダーに目をやる。

「………死んだのか」

薫は単刀直入に、それだけ言った。

⏰:10/04/09 18:43 📱:N08A3 🆔:D1zW908U


#438 [我輩は匿名である]
「……ホント、お前何でも知ってるな」

直人は顔を上げる。

「……“何で死んだのか”までは知らない」

「へぇ…」

「意外だな」と、直人は思った。

「…事故ってさ。トラックにはねとばされたらしい」

「お前が飛び出したのか?」

「まさか。晶が飛び出して、…かばったんだよ」

直人は手の中のグラスを見つめる。

薫は返事をするより先に、小さく鼻で笑った。

思わず、直人は顔を上げる。

⏰:10/04/09 18:43 📱:N08A3 🆔:D1zW908U


#439 [我輩は匿名である]
「ここ笑いどころじゃないんだけど」

「…何でかばったんだ?」

薫は「ばかじゃないのか」という視線を直人に送る。

「何でって…当たり前だろ?…好きだったんだから」

直人は少しムッとして言い返す。

が、薫の表情は変わらない。

「…お前、あいつをかばって良かったと思ってる?」

そんな事まで言い出した。

「お、思ってるよ!今ごろおばあさんになって…」

⏰:10/04/09 18:44 📱:N08A3 🆔:D1zW908U


#440 [我輩は匿名である]
「残念だけど」

直人の主張を邪魔するように、薫が少し声を大きくして言った。

「あいつは死んだよ」

「…は…?」

断言する薫に、直人は苛立ったようににらみ返す。

「病気か?それとも事故か?」

「違う」

「…じゃあ何だよ!?」

思わず声を上げてしまった。

直人はちらっとドアを見る。

が、誰かが入ってきそうな気配はない。

⏰:10/04/09 18:44 📱:N08A3 🆔:D1zW908U


#441 [我輩は匿名である]
「…お前、あんな奴が幸せに生きていけると思ったのか?」

薫は少し質問を変える。

「…どういう意味だよ…?」

「石川晶には、お前以外に頼れる人間はいなかった。

親には捨てられたみたいだしな。

そんな奴が、お前無しに生きていけると思うか?」

薫はそう言ってグラスに口をつける。

その質問の意図が、直人には理解できない。

⏰:10/04/09 18:45 📱:N08A3 🆔:D1zW908U


#442 [我輩は匿名である]
グラスを傍に起きながら、「どういう事だ」と考える。

「あいつは、お前が思うほど強い人間じゃなかった。

お前に置いていかれて、後を追いたくなるのも無理ないよなぁ…?」

そこまで言われて、直人はハッとした。

「…自殺した…って言いたいのか…?」

薫は何かを感じて、傍にあった机にグラスを置く。

その直後、直人は発作的に、薫の胸ぐらを掴んだ。

⏰:10/04/09 18:45 📱:N08A3 🆔:D1zW908U


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