記憶を売る本屋さん
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#46 [我輩は匿名である]
「今でいうツンデレだな」

直人は変に冷静になって、そんな事を考える。

この環境に慣れてきたらしい。

「あっ、晶ちゃーん」

後方で聞こえた声に、晶はハッと動きを止めた。

要が振り向くと、晶と同じ制服を来た少女がこちらを見ている。

「…誰?」

「来て!」

「へ!?」

晶は要の手を掴んで走りだした。

視界がガクガク揺れる。

⏰:10/03/22 22:43 📱:N08A3 🆔:d1RCppyk


#47 [我輩は匿名である]
「なっ、何!?」

「あれがさっき言ってた女よ!あの女はねぇ!私の大事な物を全部欲しがるの!泣くとうっとうしいから、欲しがる物はみんなあげてきた!」

走っているからか、語尾が強い。

晶はそこまで言って、要に顔を向けた。

「長月くんは、私だけの友達でいてほしい!」

晶は、要さえも取られてしまうと考えたのだろう。

角を曲がって、2人は走るのを止めた。

膝に手をついて、呼吸を整える。

⏰:10/03/22 22:45 📱:N08A3 🆔:d1RCppyk


#48 [我輩は匿名である]
「はぁ…はぁ…ごめん…走らせちゃって…」

「大丈夫…。…すごい走ったね…」

それだけ話して、しばらく会話はなかった。

疲れる事がない直人は、2人の様子をじっと伺う。

視界はなかなか地面から切り替わらない。

2、3分して、要が背筋を伸ばして空を仰ぐ。

そして、晶に向き直した。

「…俺、学校にも何人か友達がいるんだ、男ばっかりだけど」

「…え…?」

晶はまだ息を切らしているが、こちらを見る。

⏰:10/03/22 22:46 📱:N08A3 🆔:d1RCppyk


#49 [我輩は匿名である]
「だから、石川さんだけの友達ではいられない」

何を言いだすんだお前は!!直人は愕然とする。

晶もショックを隠せない。

「でも、…女の友達は石川さんだけにする事は出来る」

要はそう、はっきりと断言する。

直人から彼の顔は見えないが、今の要はきっと、

凛々しい顔をしているのだろう。

「…そんな…」

晶は顔を背ける。

⏰:10/03/22 22:47 📱:N08A3 🆔:d1RCppyk


#50 [我輩は匿名である]
「なんでそこまで言ってくれるの?

…私なんかに…そこまでしてくれることないのに…」

「…さぁ、わからない」

要は首を傾けて見せる。

「でも、昨日初めて会った時から思ってたんだ。

…どうしたら、あんなに悲しい顔をしなくてすむようになるのかなって」

要の話に、晶も直人も静かに耳を傾ける。

「それで…俺なんかで役に立つなら、何かしたいと思った。…だから」

話の途中で、晶が顔を背けた。

髪が邪魔で、どんな表情をしているのか全然わからない。

しかし、肩が震えているのだけはわかった。

⏰:10/03/22 22:48 📱:N08A3 🆔:d1RCppyk


#51 [我輩は匿名である]
「…私…親にも見捨てられて…

施設でも馴染めなくて…ずっと1人ぼっちだった…。

中学でも友達って呼べる子はいなくて…」

要はずっと黙っている。

「誰かに『優しくしてもらった』と思った事がなくて…、

そんな事言われても…私っ…どうしたらいいのかわからないし…、

そんな子の傍にいても…長月くん、きっと疲れるよ…」

「…そんな事ないよ」

要がやっと、口を開く。

⏰:10/03/22 22:49 📱:N08A3 🆔:d1RCppyk


#52 [我輩は匿名である]
「昨日と今日しか会ってないし、まだあんまり喋ってもないけど、

横にいて、楽しいと思えた。…今も」

晶は顔を背けたまま聞いている。

「だから友達は、石川さんだけでも、俺には十分だ」
それからしばらくの間、どちらも黙り込んだままだった。

「あーもううっとうしいなぁお前ら!

付き合うのか付き合わないのか、どっちかにしやがれ!

おい長月要!お前ももうちょっと粘れよ!

こいつ完璧にお前に気があるじゃねーか!」

直人にはどうしても耐えられないらしい。

⏰:10/03/22 22:51 📱:N08A3 🆔:d1RCppyk


#53 [我輩は匿名である]
誰にも聞かれないからといって、大声で好き放題に騒いでいる。

「…もう帰ろう、冷えるよ。近くまで送るから」

要が晶に歩み寄り、そっと手で背中をさすった。

晶は何もいわずに頷く。

彼女の足元に、とても小さな染みが出来ている。

直人がそれに気付いた瞬間、視界が真っ暗になった。

⏰:10/03/22 22:52 📱:N08A3 🆔:d1RCppyk


#54 [我輩は匿名である]
「…えっ、今ので終わりかよ!」

直人は納得がいかず、飛び起きる。

せっかくいいムードだったのに。

その後あの2人がどうなったのが気になって、

直人は本を見つめる。

前回よりも、少し文章が増えている。

⏰:10/03/23 13:24 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#55 [我輩は匿名である]
4月11日 長月要が下校中、石川晶を見つけ、施設まで送る事になった。
その途中、石川晶と同じ施設に住んでいる彼女の同級生の
園田美代が彼らに声をかけた。
石川晶が長月要を連れて、彼女の目の届かない所まで移動。
「私だけの友達でいてほしい」という石川晶の言葉に、
長月要は「俺がいる事で悲しい顔をしなくていいのなら」と返事。
石川晶は静かに涙を流し、2人はそのまま養護施設へ向かった。

「…これで終わりかっ!」

何だか悔しくなって、直人は本を閉じてまた寝転んだ。

⏰:10/03/23 13:25 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


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