記憶を売る本屋さん
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#470 [我輩は匿名である]
薫?いや、薫は誰かを信じなくなった事はない。
響子?彼女は寧ろ本気で(薫を)信じ続ける方だ。
奏子?…あいつは自殺とかする性格じゃないだろ。
怜奈?…あいつは死んでくれても別に構わない。
「…全員違う…としたら…?」
直人は首が痛くなるほど両方に振りまくる。
『あんた、人間不信になった事ない?』
ふと、誰かがそう言った時の事を思い出す。
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#471 [我輩は匿名である]
「…!」
直人はハッと顔を上げる。
「…金髪女…?」
そうだ。この間会った時、やつれた顔でそう言っていた。
『誰とも話したくない』と。
直人はとっさに、机から本を取って開く。
「(あれはいつだった…?結構最近だったはず…。
最後に会ったのは、病院に見舞いに行って、薫に追い返された日…)」
直人は考えながら、今度はカレンダーに目を向ける。
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#472 [我輩は匿名である]
「(あいつらが階段から落ちたのは、この間の金曜日…。
その次の日だから…5月17日…!)」
直人はそれに近い日にちのページを見る。
事の始まりは、5月5日だ。
この日に要が女性を道案内し、晶が勘違いして怒った。
「(…待てよ…あいつ、この次の日、休みじゃなかったか…?)」
最近飛鳥はよく学校を休んでいるため、はっきりは覚えていない。
しかし、それが確か始まったのが、この日らへんだった気がする。
:10/04/10 09:42
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#473 [我輩は匿名である]
「(もしあいつが、薫たちみたいに自分と前世を重ね合わせていたとしたら…)」
直人は本を見ながら、再び頭を抱え直す。
目を閉じ、今までの会話を思い起こす。
「(…あいつには友達がいない…。いつも1人…。
『なんで他の人と接するのが苦手か、その理由を知りたい』…。
なんかそんな事言ってたよな…。だから本を読んでた…。
『死にたくなったら死ねばいい』…そんな事も…)」
言っていた。『そんなの人の勝手』とも。
直人の表情が曇る。
:10/04/10 09:42
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#474 [我輩は匿名である]
「(…次は…階段で喋った日だ…。
あの時は……そうだ、家にいても楽しくないって話だ。
『誰も私を見てくれない』…。でも俺とはなぜかシカトせずに喋る…)」
頭を抱える手に、自然と力が入る。
「(…晶も最初、家出っぽい感じだったな…。
『帰りたくないから、ここにいる。誰も心配してない』…。
一緒じゃねぇかよ…何もかも…!)」
直人はなぜか悔しくなって、大きくため息をつく。
:10/04/10 09:43
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#475 [我輩は匿名である]
これならきっと、飛鳥は晶に自分を重ね、のめり込んでいったと、十分考えられる。
だから、要と晶が会わなくなった頃から、飛鳥は休みがちになったのかもしれない。
精神的に不安定になるのも、無理はない。
2人が仲が良かった頃は、怜奈に目を付けられた薫を気遣う余裕もあった。
しかし、5月5日以降、ずっと元気がなかった。
『人間不信になった』といい話も、要に裏切られたと思っていたと考えれば、全て辻褄が合う。
「(…やっぱりそうだ…。多分、あいつが…神崎が晶だ…!)」
直人はうつむいたまま、両手で顔を覆う。
:10/04/10 09:43
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#476 [我輩は匿名である]
どうして今まで、ここまで深く考えなかったのか。
こうやって考えれば、すぐに飛鳥が晶だと気付けたのに。
直人は後悔した。
しばらく、そのままの体勢でうなだれる。
そして、何かを決意し、本を開いた。
「……あー…こっちの本じゃなかったのか…」
直人は本を閉じてベッドの枕元に放り投げ、代わりに携帯電話を手に取る。
こんな朝から電話するのも悪いと思ったが、それどころではない。
:10/04/10 09:44
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#477 [我輩は匿名である]
「(…薫…出てくれよ…)」
直人は携帯電話を耳に当て、祈るように目を閉じる。
しかし、何度呼び出し音が鳴っても出ない。
「(…晶が死ぬのは…今日か明日か…どっちかだったよな…)」
直人は諦めて電話を切る。
本当に同じ事を繰り返すなら、晶は…飛鳥はきっと、再びビルから飛び降りる。
しかし、それがどのビルだったのかわからない。
しかも今の時代、高い建物はあちこちにある。
:10/04/10 09:44
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#478 [我輩は匿名である]
直人はいてもたってもあられなくなって、部屋を出ようとノブに手を当てる。
が、直人はドアを開ける前に、制服姿の自分を見つめた。
「…制服でうろうろして、警察とかに見つかったりしたらめんどくせぇな…」
直人はぶつぶつ言いながら、タンスを開け、適当に服を出す。
Tシャツに薄い上着を羽織り、ジーンズに履きかえる。
仕上げに、適当に鞄をぶら下げる。
「…これで大丈夫だな」
直人は今度こそ部屋を出て、玄関に向かう。
:10/04/10 09:45
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#479 [我輩は匿名である]
「あっ、ちょっと直人!どこ行くのよ!?学校は!?」
家を出ようと思ったら、玄関先で母親に捕まった。
直人はどうしようかと目を泳がせる。
「ちょ、ちょっと熱っぽいから、病院行って来る」
驚く事に、口が勝手に動いた。
「あら、大丈夫?」
「あ、あぁ、まぁ、一応行っとこうと思って。じゃ」
直人はそう言って、そそくさと家を出た。
靴をちゃんと履きながら、直人はホッと一息つく。
:10/04/10 09:46
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