記憶を売る本屋さん
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#51 [我輩は匿名である]
「…私…親にも見捨てられて…
施設でも馴染めなくて…ずっと1人ぼっちだった…。
中学でも友達って呼べる子はいなくて…」
要はずっと黙っている。
「誰かに『優しくしてもらった』と思った事がなくて…、
そんな事言われても…私っ…どうしたらいいのかわからないし…、
そんな子の傍にいても…長月くん、きっと疲れるよ…」
「…そんな事ないよ」
要がやっと、口を開く。
:10/03/22 22:49
:N08A3
:d1RCppyk
#52 [我輩は匿名である]
「昨日と今日しか会ってないし、まだあんまり喋ってもないけど、
横にいて、楽しいと思えた。…今も」
晶は顔を背けたまま聞いている。
「だから友達は、石川さんだけでも、俺には十分だ」
それからしばらくの間、どちらも黙り込んだままだった。
「あーもううっとうしいなぁお前ら!
付き合うのか付き合わないのか、どっちかにしやがれ!
おい長月要!お前ももうちょっと粘れよ!
こいつ完璧にお前に気があるじゃねーか!」
直人にはどうしても耐えられないらしい。
:10/03/22 22:51
:N08A3
:d1RCppyk
#53 [我輩は匿名である]
誰にも聞かれないからといって、大声で好き放題に騒いでいる。
「…もう帰ろう、冷えるよ。近くまで送るから」
要が晶に歩み寄り、そっと手で背中をさすった。
晶は何もいわずに頷く。
彼女の足元に、とても小さな染みが出来ている。
直人がそれに気付いた瞬間、視界が真っ暗になった。
:10/03/22 22:52
:N08A3
:d1RCppyk
#54 [我輩は匿名である]
「…えっ、今ので終わりかよ!」
直人は納得がいかず、飛び起きる。
せっかくいいムードだったのに。
その後あの2人がどうなったのが気になって、
直人は本を見つめる。
前回よりも、少し文章が増えている。
:10/03/23 13:24
:N08A3
:0nKseeu.
#55 [我輩は匿名である]
4月11日 長月要が下校中、石川晶を見つけ、施設まで送る事になった。
その途中、石川晶と同じ施設に住んでいる彼女の同級生の
園田美代が彼らに声をかけた。
石川晶が長月要を連れて、彼女の目の届かない所まで移動。
「私だけの友達でいてほしい」という石川晶の言葉に、
長月要は「俺がいる事で悲しい顔をしなくていいのなら」と返事。
石川晶は静かに涙を流し、2人はそのまま養護施設へ向かった。
「…これで終わりかっ!」
何だか悔しくなって、直人は本を閉じてまた寝転んだ。
:10/03/23 13:25
:N08A3
:0nKseeu.
#56 [我輩は匿名である]
どうしてここまで入れ込んできているのか、わからない。
しかし、あの2人には幸せになってほしい。
そう思った。
「直人ー!ご飯ー!」
ドアの向こうから母親の声がする。
「あーい」
直人は大きく返事をし、再び起き上がって部屋を出た。
:10/03/23 13:25
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#57 [我輩は匿名である]
同じ頃、1人の女子生徒が、重い足取りで家路についていた。
直人達のクラスメイトの、あの金髪女である。
「おぅい、お嬢さん」
その声に、金髪女は足を止める。
「お嬢さん、本は読まんかなぁ?」
後ろから、しゃがれた男の声がした。
金髪女は黙って振り返る。
「…別に」
「ほぉう。まま、わしがやる本読んでみないか?」
見るからに怪しげな老人。
さすがに金髪女も不審だと思ったのだろう。
「いらない」と言って背を向けた。
それを見て、老人はニタッと笑う。
:10/03/23 13:27
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:0nKseeu.
#58 [我輩は匿名である]
「人と付き合うのが怖い」
老人のその一言に、金髪女は再び足を止める。
「何でかわからんがぁ、人と接するのが怖い。君、そうだろうぅ?」
金髪女は何も言わずに振り向く。
そこには、青い本を差し出している小汚い老人がいた。
「この本読んだら、何で人と付き合えない理由、わかるかもねぇ」
金髪女は、話に食い付いたようにハッとする。
そして、ちょっと間考えた後、それを受け取った。
「…命は粗末にしない方がいいよぅ?お嬢さん」
「…は?」
金髪女は睨み付けたが、老人は構わずに背を向け、去っていった。
:10/03/23 13:27
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:0nKseeu.
#59 [我輩は匿名である]
昨日はボーッとしていた直人が、
今日は朝っぱらから腕を組んで考え込んでいる。
薫はそれを見ながら、忙しい奴だな、と思った。
「(…ま、邪魔せずにいてやるか)」
朝礼が始まるまで、あと10分ある。
薫は暇つぶしに、あるところへ行ってみようと教室を出た。
この高校では屋上が解放されている。
転落防止のための高い柵が設置されており、
生徒でも入れるようになっているらしいのだ。
たまたまそんな話を耳にした薫は、
1度屋上に上ってみたいと思ったらしい。
:10/03/23 13:28
:N08A3
:0nKseeu.
#60 [我輩は匿名である]
階段を上って、静かにドアを開ける。
同時に、春の暖かい空気が薫を包み込む。
「(…意外と人いないんだな)」
まだ朝だからか、誰もいないようだ。
ちょっとうれしく思いながら、薫は2、3歩進んでみる。
「こんにちは」
突然、女の声がした。
薫はびっくりして周囲を見回すが、誰もいない。
「ははっ。こっちこっち」
よく聞けば、上から聞こえるような気がする。
:10/03/23 13:29
:N08A3
:0nKseeu.
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