記憶を売る本屋さん
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#545 [我輩は匿名である]
直人は「…あぁ」と、思い出したように声を出す。

「家に帰りたくないんだったな」

直人はそう言って考える。

「…いや、帰る」

飛鳥は首を振る。

「何、帰んの?」

「うん、…帰る。嫌だ嫌だって言ってても、仕方ないし…」

⏰:10/04/13 12:55 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#546 [我輩は匿名である]
「そっか。…ま、嫌になったらうちでも来れば?」

「…は…?」

あっけらかんとして言う直人を、飛鳥が横目で睨む。

「何、襲われそうとか思ってんの?…誰もお前なんか襲わねーから!」

「違うから!」

飛鳥は顔を赤くして、声を大にして否定する。

それを見て、直人は声を上げて笑う。

2人はそうして、家の方向に歩きだした。

⏰:10/04/13 12:56 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#547 [我輩は匿名である]
「…手、大丈夫?」

帰り道、飛鳥がおずおずと尋ねた。

「あ?あぁ、これ?まぁ大丈夫じゃねーの?わかんねぇけど」

「どっかで洗ったら?…ちょうどそこに公園あるし」

飛鳥が指差した先には、姫崎公園があった。

直人は「あっ」と、ある事を思い出す。

「何?」

「そう、お前に…つーか、本当は要が晶にいうつもりだったんだけど」

飛鳥は首をかしげる。

⏰:10/04/13 17:28 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#548 [我輩は匿名である]
「あれ、本当に道案内だったんだからな。

美代が『来週行けないって言ってた』とかほざいてたけど、要は…」

「美代が?」

飛鳥はムッとして、眉間にしわを寄せる。

「…やっぱり嘘だったのか…」

直人は大きくため息をつく。

「あいつがそう言いに来たの?」

⏰:10/04/13 17:28 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#549 [我輩は匿名である]
「そう。でも“もしかしたら晶は来るかもしれない”と思って、要も行ったんだ。

で、途中で道聞かれて、一旦待ち合わせ場所に晶がいないか、ちゃんと見に行ったんだよ。

でもやっぱりいなかったから、案内しようってなったわけ」

「…そうだったんだ…」

晶は後悔し、肩を落とす。

「ま、美代にまんまと騙されたってわけだ、俺たちは」

公園に着き、水道の前に直人が腰を下ろす。

⏰:10/04/13 17:29 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#550 [我輩は匿名である]
「…ごめんね」

飛鳥も、直人の左後ろにしゃがみこむ。

「私が…私があの時、ちゃんと話を聞いてたら…

こんな事にならずに済んだのに…」

直人は黙って手を洗いながら、背後からのすすり泣きを聞く。

「…まぁ、この方が良かったのかもしれねぇけど」

直人はぼそっと、飛鳥に背を向けたまま言った。

⏰:10/04/13 17:29 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#551 [我輩は匿名である]
「だってお前、要がいればそれでいいって思ったままだっただろ?

それってダメなんじゃねぇのって思って。

あいつはどうか知らねぇけど、俺はそう思う」

飛鳥は顔を上げ、直人の背中を見つめる。

「…要は謝られるよりも、友達に囲まれて楽しそうにしてるの見る方が嬉しいんじゃない?

あんなのんきな性格だったし、多分その方が、あいつもホッとするだろ」

「……うん」

飛鳥は涙を拭い、大きく頷いた。

⏰:10/04/13 19:45 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#552 [我輩は匿名である]
「…帰るか」

蛇口を閉めて、直人は立ち上がる。

それを見て、飛鳥も立って歩きだした。


「…そういえば、要が見た案内してた女の人いるじゃん?

あの人も晶と同じように、養護施設で育ったんだって」

思いもよらない話に、飛鳥は直人を見る。

「そうなの?」

⏰:10/04/13 19:45 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#553 [我輩は匿名である]
「うん。で、お前にその女の人から伝言」

「伝言?」

「『“施設で育とうが親の元で育とうが、どっちが良い”なんてない。

他の人との間に壁を作らずに、一歩踏み込んでみろ。』……ってな。

ちなみにあの時は、友達の家に遊びに行く途中だったらしい」

「……そっか…」

飛鳥は再び、少し下を向く。

⏰:10/04/13 19:46 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


#554 [我輩は匿名である]
「……やっぱり、怖かったんだ。

誰かを信じようとしても、また捨てられたらどうしようって…。

そう思ったら、なんかすごい怖かったんだよ」

直人の隣で、飛鳥は言う。

「…そりゃ、生みの親に捨てられたんだから、人間不信にもなるだろうな」

「うん…。でも要は何となく…本当に何となく、ずっと友達でいてくれる気がしたし、

一緒にいる時は、嫌な事全部忘れられたぐらい、楽しかった。

…だからその分、要が待ち合わせに来ずに、女の人連れて歩いてるの見たら…

ショックすぎて、もうわけわかんなくなって…」

⏰:10/04/13 19:46 📱:N08A3 🆔:Zq6n1SuI


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