記憶を売る本屋さん
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#66 [我輩は匿名である]
直人はある事を考えていた。

一昨日、昨日と、1日に1度しか“あっち”に行けなかった。

1日に2回本を開けば、2日分進む事が出来るのだろうか、と。

その方が早く話を進められるのだが。

担任の話そっちのけで、直人はずーっと本の事を考えていた。

「おい」

すぐ横で薫の声がして、直人はやっと顔を上げた。

クラスメイト達がぞろぞろと教室を出て行っている。

⏰:10/03/23 13:33 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#67 [我輩は匿名である]
「次、生物室だろ」

「はっ!忘れてた!」

「早くしろ」

ちょっと苛立ったように薫に言われて、慌てて生物の用意をする。

そして、教科書とノートの間に、あの本を忍ばせて教室を飛び出した。

「まだ何か考えてんのか」

呆れたように薫が言う。

「んー…あの本の事で、ちょっとさ。

あれ、開いたら急に、昔の世界に飛ばされんだよ」

他の生徒に聞こえないように、直人は小声で言った。

言ってしまった。とも思った。

⏰:10/03/23 13:34 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#68 [我輩は匿名である]
「…昔の世界?」

薫は聞き返す。

「んー、しかも、知らない男の中から、そいつの目で見える物を見て、…見てるだけなんだけど」

どう言えばちゃんと伝わるのかわからず、

直人は「あー!」と、もどかしそうに頭をかく。

「落ち着け」

「なんつーかなぁ…、タイムスリップだよ、タイムスリップ。

そんな簡単なもんかわかんねえけど、とりあえず1977年に飛んじゃうわけ!」

「1977年…?」

「そう!1977年!」

⏰:10/03/23 13:35 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#69 [我輩は匿名である]
つい直人は声を大きくしてしまい、薫に「しーっ!」と注意されてしまった。

「おかしいだろ?何でそれで自殺とかに行き着くのか、意味わかんねぇんだよなぁ…」

「まぁなぁ…」

直人の話が何となくわかったのか、薫も首をひねる。

前方に「生物室」と札が出ているのが見える。

「まだ話終わってないのに」と、直人は舌打ちする。

「後で続き聞かせてくれよ。気になるから」

「当たり前だろ。こんな中途半端で終われるか」

2人はそんな事を言いながら、生物室に入ってそれぞれの席に着いた。

⏰:10/03/23 13:36 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#70 [我輩は匿名である]
先生に起立、礼をしてから、直人は本をスタンバイする。

今から開く気らしい。

教科書の適当なページとノートを広げ、

あの本だけは机のすぐ下に持って、誰にも見えないように隠す。

光った時に、大っぴらに光が漏れないようにするためだ。

同じ長机についている他のクラスメイトの様子を伺い、直人はゆっくり開く。

身体と机の僅かな隙間から光が漏れる…。

⏰:10/03/23 13:36 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#71 [我輩は匿名である]
目の前に広がっていたのは、木の木目のようなものだった。

なんだこれ。直人はつまらなそうに呟く。

「石川さん、昨日あんだけ泣いてたけど、大丈夫だったかなぁ…」

要が小さく独り言を言う。

視線が木目から窓に移る。
木目はどうやら、要の部屋の天井だったらしい。

細い三日月が見えた。もう夜のようだ。

「今度、行ってみようかな」

「どこに」

直人が思わず言った瞬間、周りが真っ暗になった。

⏰:10/03/23 13:37 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#72 [我輩は匿名である]
「もう終わりかよ!」

直人は大声で突っ込んで、その勢いで立ち上がる。

授業中だった事も忘れて。

クラスメイトが一斉にこっちを向く。

「…2回目の授業から爆睡とは、良い度胸だなぁ?水無月直人」

先生の顔が引きつっている。

クラスメイト達が笑いだす。

「…は…はは…。す、すいません…」

直人は無理やり笑って誤魔化して、静かに椅子に座った。

あの本は授業中に読むものではない。

直人はため息をついて、気付かれないように教科書の下に本を滑り込ませた。

⏰:10/03/23 13:37 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#73 [我輩は匿名である]
昼休みになってもまだ、薫は笑いをこらえていた。

生物が終わってからずっとこうだ。

直人もいい加減腹が立ってきた。

「お前、いい加減にしろよ」

「無理無理。お前の顔見る度に思い出して仕方ねぇよ」

この野郎…。殴りたくなってきた。

「で?今日のタイムスリップはどうだった?」

ナメようにニヤつきながら、薫は直人に尋ねる。

「どうもこうもねーよ!見てみろよこれ!!」

他の目を気にせずに騒ぎながら、本を開いて見せてみる。

⏰:10/03/23 13:38 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#74 [我輩は匿名である]
4月12日 今日は何もなかった。
長月要は昨日の石川晶の様子が心配らしく、
会いに行ってみようかと考えていた。


「こんだけだぜ!?」

「わかったから、もうちょっと静かに喋れ。

他の奴に気付かれたらめんどくさいだろ」

⏰:10/03/23 13:39 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


#75 [我輩は匿名である]
確かにそうだ。

直人はちょっとムスッとして頷く。

「…この、長月要ってのは?」

「タイムスリップしたら、必ずこいつの身体の中に入り込む。

で、俺はそっから見てるだけで、何も出来ねぇんだよ。」

「ふぅん…」

薫は本を見つめながら、何かを考えている。

「何で長月要なんだろうな?」

ふと、薫が言った。

⏰:10/03/23 13:40 📱:N08A3 🆔:0nKseeu.


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