記憶を売る本屋さん
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#76 [我輩は匿名である]
「へ?」
「いやぁ…何で入り込むのが、その長月要って奴の身体なのかって」
「…あぁ…」
今まで考えた事はなかった。
「誰だ?」とか「何でタイムスリップ?」とか思った事はあっても、
何故その先がいつも彼の中なのか?
薫に言われて初めて疑問に思った。
「何だ、今まで考えた事なかったのか?」
「うん…。そうだな、何でいつもあいつの中なんだろ?」
直人は腕を組んで考える。
:10/03/23 14:03
:PC
:pMFPl9Gs
#77 [我輩は匿名である]
「まぁ、とりあえず食べようぜ」
薫は話を変えて、机の上に弁当箱を出した。
直人も「そうだな」と、弁当箱を出す。
「ところで、お前委員会どうするんだ?」
「委員会?」
卵焼きを口に頬張りながら、直人は聞き返す。
「今日の6時間目のホームルームで、委員会決めるって、
今日先生言ってただろ」
「マジで…」
何せ今日の朝礼の時間は上の空だった直人は、
そんな話全く聞いていなかった。
:10/03/23 14:04
:PC
:pMFPl9Gs
#78 [我輩は匿名である]
「か、薫は?」
「風紀委員」
「即答かよ」
確かに、規則等をきっちり守る薫にはぴったりだ。
「めんどくせぇなぁ…。俺は後半でいいや」
「言うと思った」
基本めんどくさがりな直人に、薫は笑った。
:10/03/23 14:09
:PC
:pMFPl9Gs
#79 [我輩は匿名である]
家に帰って、直人はまた、自分の部屋で本と睨めっこしていた。
今日考えていた事。1日に何回タイムスリップできるのか。
それを実行する時がきた。
ベッドの上で、ふぅっと息をつく。
「…せぇの!!」
変に掛け声を出しながら、素早く本を開く。
・・・・・・。
何も起こらない。
「…ちぇっ、やっぱダメか」
ちょっとドキドキして損した。直人はふてくされたように寝転んだ。
:10/03/23 14:15
:PC
:pMFPl9Gs
#80 [我輩は匿名である]
次の日。土曜日である今日、直人は朝からパソコンにへばりついていた。
すでに午前中に本を開いて、昨日と同様何もなかったことに落胆し、ネットで調べてみる事にしたのだ。
『都市伝説 本』で調べると、すぐに多くのサイトがヒットした。
中でも『都市伝説ネット』なるサイトがあり、直人はそれをクリックする。
そんな名前なのだから、きっといろんな情報が載っているに違いない。
「…ビンゴ」
縦に並べられた数多くの都市伝説の中に、『読むと死ぬ!?呪いの本』という項目があった。
内容を見てみると、直人が今まで、耳にたこができるほど聞いてきた噂話が最初に載せられていた。
その下には、情報交換をするための掲示板が用意されている。
直人は掲示板の入り口をクリックする。
:10/03/23 14:27
:PC
:pMFPl9Gs
#81 [我輩は匿名である]
どうやらあの都市伝説は、直人達が住むこの町以外でもあるらしく、
イニシャルではあるがいろんな市の名前が書かれている。
「…ん?」
まず、直人はあるスレッド名を見て、マウスを動かす手を止める。
『例の本はいつの間にか消えるらしい』
何のことだ?直人はそのスレッドを開いた。
『A市で、本をもらったという少年が、2ヵ月後に行方不明になった。
クラスメイトに、例の老人から本をもらったと少年は言いふらしていたそうだが、
行方不明後、警察が男子の部屋を捜索した際、不審な本は見当たらなかったという』
これが本題だった。
:10/03/23 14:33
:PC
:pMFPl9Gs
#82 [我輩は匿名である]
これに対し、『警察が見つけられなかっただけでは?』『本を持って行方をくらましたのでは?』など、
いろんな意見が載せられていたが、同じような話を聞いた、というレスの方が圧倒的に多い。
「…ふぅん…」
直人は掲示板に戻り、他の記事を探す。
そして、また違うスレッド名を見て、「あ…」と声を漏らした。
『本の中身は自分の前世?』
直人は信じられず、なかなか指を動かせない。
しかし、文の最後に『?』が付いている事から、
本当の話ではないかもしれないと自分に言い聞かせて、スレッドを開いた。
:10/03/23 14:40
:PC
:pMFPl9Gs
#83 [我輩は匿名である]
『自分はあの老人に本をもらい、最後まで読みました。
途中から、急に本の中の話に入れ込むようになり、
最終的に、自分に起きている事だと感じられました。
ある時、身体の持ち主の顔が、鏡で見えました。
本当の世界の自分と、同じ顔をしていました。
だから、もしかしてこの人は、僕の前世の事では、と思ったのです。
僕の話はこれで終わりです。
今から僕は、人を殺しに行きます。』
そう書かれていた。
決定的な事はないようだが、『自分と同じ顔』それが引っかかる。
長月要は、俺と同じ顔をしているのだろうか。
:10/03/23 14:44
:PC
:pMFPl9Gs
#84 [我輩は匿名である]
そしてもう1つ。『今から僕は、人を殺しに行きます。』
よくこんな書き込みが、削除されずに残っているな。
そうも思ったが、直人は違う事を考えていた。
もしかしたら、本は自分を死に駆り立てるだけでなく、
人を狂わせることもできるのではないか、と。
もしそうであれば、自分はどうなってしまうのだろう…。
あの本の、本当の恐怖を知った気がした。
もしかして、薫が言っていた『死なない人もいる』とは、
こういう人の事だったのかもしれない。
「(薫は…ここを見てたのか…?)」
薫はオカルトには興味がないため、こんなサイトを見ているとは思えない。
ただ誰かに聞いただけかもしれない。
:10/03/23 14:52
:PC
:pMFPl9Gs
#85 [我輩は匿名である]
しかし、直人には一昨日の、薫の怖い顔が忘れられずにいた。
「石川晶」と呟いた事も。
気のせいかと思おうとしても、どうしても思えないのだ。
「(…あいつ…やっぱり何か知ってるんじゃないか…?
一昨日俺が悩んでた時も、本をもらったって話す前から分かってたみたいだったし…。
それにあの時…薫は笑ってた…。いつもの感じじゃなくて…何か変だった)」
いつもの笑顔ではなかった、あの時の薫の顔。
直人はブンブンと、大きく頭を振る。
「(待て待て!今までずっと仲良くやって来たあいつだぞ!?
隠し事なんか、1つもした事なかったじゃねーか!)」
「今までは」。直人は少しうつむく。
:10/03/23 15:00
:PC
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