記憶を売る本屋さん
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#86 [我輩は匿名である]
もう何が何なのか、分からなくなってきた。
出きる事なら、あの老人に本を返したい、とさえ思った。
親友を疑うのは、初めてだったのだ。
それだけじゃない。自分は、本をもらった事を隠していた。たった1日でも。
直人は大きくため息をつく。
もう、本を読むのはやめよう。『いつの間にか消える』んだろう?
前世の事なんか、どうでもいい。俺には関係ない。
直人はパソコンの電源を切り、本を引き出しにしまいこんだ。
:10/03/23 15:05
:PC
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#87 [我輩は匿名である]
本を引き出しに封印してから3日。
朝たまたまニュースが映っていた為、歯を磨きながらボーっと聞いていた。
そして、ぎょっとした。
少年が1歳年上の男性を刺し殺したという。そこまではよくあるニュースである。
しかし、直人が驚いたのは、その後の話だった。
その少年は、少し前に『都市伝説に関する掲示板に、殺人予告をしていた』というのだ。
この間の土曜日に見た、あの書き込みだ。
呆然として、歯ブラシを落としそうになる。
「そんな…」
あの書き込みは、本当だったのか。
直人はしばらく、テレビから目を離す事が出来なかった。
:10/03/23 15:14
:PC
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#88 [我輩は匿名である]
テレビを見すぎて、遅刻ぎりぎりに学校に滑り込んだ直人は、教室に入ってすぐに薫を探す。
しかし、鞄はあるのに、姿が見当たらない。
「(どこ行ったんだよ…こんな時に…)」
トイレだろうか?そう思って教室を出る。
すると、薫がちょうど、こちらに向かって歩いてきているのが見えた。
「(いた!…ん?)」
彼の隣に、見知らぬ女子生徒がいる。しかも、2人で楽しそうに話しているではないか。
もしや。直人は確信した。「彼女だ!!」と。
「(先越された…)」
ドアの影から、恨めしそうに薫に視線を送る。
それに気付いたのか、薫がこっちを向いて、顔を引きつらせる。
:10/03/23 15:20
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#89 [我輩は匿名である]
「また明日」とドアの近くで言葉を交わし、女子生徒は自分のクラスへ歩いていった。
「よぉ。おはよ」
「よぉ。じゃない!!彼女か、彼女ができたんだな!」
「ちょっと待て、まだ彼女じゃない」
「まだって何だ!考えがいやらしいぞ、お前!!」
「どこがいやらしいんだ!?普通だろ!!」
「そのうち彼女にするつもりなんだろうが!!」
「約束したんだよ!!ずっと前に!!」
薫はそう言ってから、「しまった」というように口に手を当てる。
直人はそれを見逃さなかった。
:10/03/23 15:25
:PC
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#90 [我輩は匿名である]
「…ずっと前って、いつだ?」
直人の問いに、薫は目をそらして黙り込む。
おかしい。これは絶対に何かある。直人は思った。
「…お前、本は読んでるか?」
「話変えんなよ」
「変わってねぇよ」
どう考えても変わっただろ。直人は言い返したかったが、我慢して飲み込んだ。
「やめたよ、読むの」
「やめた?」
「あぁ」
:10/03/23 15:29
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#91 [我輩は匿名である]
直人は「もうめんどくさくなったから」と付け足した。
ポケットに手を入れて壁にもたれかかる直人を、薫はじっと見つめる。
「…じゃあ、お前にはわからないよ」
「…何が」
「さっきの、『約束』の意味」
「それが、本とどう関係あんだよ」
「まぁ、めんどくさがりなお前なら、読むのやめてもどうって事ないんだろうけど」
薫の遠まわしな言い方の連続に、直人のイライラは頂点に達した。
直人は薫の胸倉を掴んで、壁に叩きつけた。
周りにいた女子が、小さく悲鳴を上げる。
:10/03/23 15:37
:PC
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#92 [我輩は匿名である]
「何するんだよてめぇ!!」
「さっきからスカした顔しやがって!調子こいてんじゃねぇぞ!!」
「おい!何してるんだ!!」
いつの間にかチャイムが鳴っていたらしく、担任の教師達がぞろぞろと廊下に来始めていた。
他の生徒達は慌てて教室に戻る。
直人たちの担任が、2人の間に割って入り、引き離す。
「何やってんだ!朝っぱらから!」
「…すいません」
2人は一応頭を下げ、教室に入った。
「(…何なんだよ…あいつ…!)」
席についても、直人の苛立ちはおさまらない。
ただ腕を組んで、窓の方をじっと見ていた。
:10/03/23 15:45
:PC
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#93 [我輩は匿名である]
その日、2人はそれ以上口をきかなかった。
今週は放課後の掃除当番に当たっている直人は、憂うつな気持ちで机を運んでいた。
さっさと家に帰ろうと思い、誰とも喋らずに、ただひたすら。
そして、1番後ろの机を運び終わった時、足の上に1冊の本が落ちてきた。
「痛っ!何だよ…」
今日はツイてない。そう思いながら、足元の本を見下ろす。
そこには、直人が封印したあの赤い本とそっくりの青い本が、ぽつんと落ちていた。
「…これ…」
拾い上げてよく見てみる。著者も、タイトルも何も書かれていない本。
これは間違いなく、あの『呪いの本』だ。
:10/03/23 15:52
:PC
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#94 [我輩は匿名である]
しかし、一体誰の…?
「(まさか、薫…?)」
しかし、薫の席は真ん中の列の前から2番目。ここは窓際の1番後ろ。
どう考えても、薫の机から落ちたものではない。
「…それ、返して」
後ろで声がした。
振り向くと、あの金髪女が不機嫌そうに立っている。
「…これ、お前の?」
「そう。だから返して」
この青い本は、金髪女の物だった。直人はぽかんとする。
:10/03/23 15:56
:PC
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#95 [我輩は匿名である]
本を返さずに突っ立っている直人に、金髪女は無理やり本を奪い取る。
「…中、見た?」
「いや、見てないけど…」
「あっそ」
終始むすっとした表情で言って、金髪女は背を向ける。
「なぁ!」
直人は反射的に、金髪女の腕を掴む。
「…何」
金髪女が、迷惑そうに振り向く。
「ちょっと、話があるんだけど」
「…私に?」
「うん、お前に!」
:10/03/23 16:00
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