浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#6 []



少し冷えた空気に
体が小さく震えた

うっすら息が白く染まる

「‥香夜」

羽織を着た倫次が
振り返り微笑した

あぁ‥羽織、忘れた

⏰:10/03/28 23:42 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#7 []
 
「ごめん、遅れて」

「いや‥俺もさっき終わったから」

倫次に促され少し先を行く


砂利の上を歩けば
響く独特の音
なんだか懐かしくもあった

⏰:10/03/28 23:42 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#8 []
 
「倫次‥ずっと働いてるの?」

「働いてる、って言うか
手伝ってるだけだけどね」

照れくさそうに笑った
目尻の皺が変わらない
たくさん笑ってる証拠かな

「‥香夜は?」

躊躇うように問ったその声が
あたしの奥をくすぐる

⏰:10/03/28 23:43 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#9 []
 
あたしは‥いろいろあった


「あたし?あたしはー‥
うーん、元気だったよ?」

もどかしくてたまらないよ
いろんな事がありすぎて
どこから話たらいいか‥

必死の作り笑い
顔の筋肉がつりそうだ

⏰:10/03/28 23:43 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#10 []
 
変わってしまっただろうか
倫次から見てあたしは
‥変わっちゃった?

「変わらないな」

「‥え?」

「相変わらず‥作り笑いが下手」

見破られた真実
倫次だけが気づいてしまうから
そのたび恥ずかしくなる

⏰:10/03/28 23:43 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#11 []
 
この人には嘘がつけない


「元気だったなら、
まぁ‥いいんだけどね」

同い年なのに
どうしてそうも大人で
包み込むように優しいのか

あたしの頭を緩く撫でた手は
だいぶ大きくなっていた

⏰:10/03/28 23:44 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#12 []
 
どうしよもなく
‥懐かしくて懐かしくて
泣きたくなっちゃうね
何だか救われた

「あの人と一緒に旅してるの?」

「あぁ‥うん
壱助さんは、命の恩人なんだ」

だって壱助さんがあの日
拾ってくれなかったら
今頃‥どうなってたか

⏰:10/03/28 23:44 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#13 []
 
「そっかぁー‥
いい人そうだよね」

「うん‥見た目は、怖いけど」

「香夜、幸せだな」

「‥幸せ?」

ぽんと出てきた
その聞き慣れない言葉に
すごく違和感をかんじた

幸せ‥幸せかぁ

⏰:10/03/28 23:45 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#14 []
 
「ちょっと‥悔しいけどな」

「‥どうして?」

夜桜をぼうっと見つめたその目は
凛々しくて眩しくて

「ん?それは‥秘密」

そう言ってはにかんだ顔は
とても大人だった

少しばかり見とれた
ぐるぐる胃の辺りが気持ち悪い

⏰:10/03/28 23:45 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#15 []
 
気づけばあたしの右手は
躊躇いもなく吸い込まれるように
倫次の着物の裾を掴んで


「秘密とか‥無しだよ」

秘密なんてずるいじゃない
いつの間にそんなに
距離置くようになったのよ

「んー‥」

⏰:10/03/28 23:45 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


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