浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#1 []
「浮き世」とは
辛く儚い世の中または俗世間。

‥他にも意味がありますが、
説明するほどの物でも、

ないでしょう、ね

前スレ
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/11263/
馬鹿でorder拒否にしてしまい
書けなくなってしまったので
立て直しました(´・ω・`)

⏰:10/03/28 23:39 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#2 []



盆に滴り落ちた茶に
拭うように触れた

温いその液体は
じわり体に染み込んで

「幼、なじみ」

自らに言い聞かせるように
呟いた

⏰:10/03/28 23:40 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#3 []
 
貴女を独占したい
結局は‥それが為

離したくはなかった
貴女が何処かへ
‥行ってしまいそうで、ね

倫次とやらに会った時の
あの嬉しそうな表情
めったに見れたもんじゃあない

⏰:10/03/28 23:40 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#4 []
 
「‥やれ、やれ」


月を隠す歪な薄い雲
現れては流れて消えて

夜桜の白い花びらが
儚く散った

⏰:10/03/28 23:41 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#5 []
 

放っておけない‥と言いますか

貴女が私を
捕らえて離さない、と

言うことですか‥ねぇ

⏰:10/03/28 23:41 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#6 []



少し冷えた空気に
体が小さく震えた

うっすら息が白く染まる

「‥香夜」

羽織を着た倫次が
振り返り微笑した

あぁ‥羽織、忘れた

⏰:10/03/28 23:42 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#7 []
 
「ごめん、遅れて」

「いや‥俺もさっき終わったから」

倫次に促され少し先を行く


砂利の上を歩けば
響く独特の音
なんだか懐かしくもあった

⏰:10/03/28 23:42 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#8 []
 
「倫次‥ずっと働いてるの?」

「働いてる、って言うか
手伝ってるだけだけどね」

照れくさそうに笑った
目尻の皺が変わらない
たくさん笑ってる証拠かな

「‥香夜は?」

躊躇うように問ったその声が
あたしの奥をくすぐる

⏰:10/03/28 23:43 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#9 []
 
あたしは‥いろいろあった


「あたし?あたしはー‥
うーん、元気だったよ?」

もどかしくてたまらないよ
いろんな事がありすぎて
どこから話たらいいか‥

必死の作り笑い
顔の筋肉がつりそうだ

⏰:10/03/28 23:43 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#10 []
 
変わってしまっただろうか
倫次から見てあたしは
‥変わっちゃった?

「変わらないな」

「‥え?」

「相変わらず‥作り笑いが下手」

見破られた真実
倫次だけが気づいてしまうから
そのたび恥ずかしくなる

⏰:10/03/28 23:43 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#11 []
 
この人には嘘がつけない


「元気だったなら、
まぁ‥いいんだけどね」

同い年なのに
どうしてそうも大人で
包み込むように優しいのか

あたしの頭を緩く撫でた手は
だいぶ大きくなっていた

⏰:10/03/28 23:44 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#12 []
 
どうしよもなく
‥懐かしくて懐かしくて
泣きたくなっちゃうね
何だか救われた

「あの人と一緒に旅してるの?」

「あぁ‥うん
壱助さんは、命の恩人なんだ」

だって壱助さんがあの日
拾ってくれなかったら
今頃‥どうなってたか

⏰:10/03/28 23:44 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#13 []
 
「そっかぁー‥
いい人そうだよね」

「うん‥見た目は、怖いけど」

「香夜、幸せだな」

「‥幸せ?」

ぽんと出てきた
その聞き慣れない言葉に
すごく違和感をかんじた

幸せ‥幸せかぁ

⏰:10/03/28 23:45 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#14 []
 
「ちょっと‥悔しいけどな」

「‥どうして?」

夜桜をぼうっと見つめたその目は
凛々しくて眩しくて

「ん?それは‥秘密」

そう言ってはにかんだ顔は
とても大人だった

少しばかり見とれた
ぐるぐる胃の辺りが気持ち悪い

⏰:10/03/28 23:45 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#15 []
 
気づけばあたしの右手は
躊躇いもなく吸い込まれるように
倫次の着物の裾を掴んで


「秘密とか‥無しだよ」

秘密なんてずるいじゃない
いつの間にそんなに
距離置くようになったのよ

「んー‥」

⏰:10/03/28 23:45 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#16 []
 
響いた低音
ふわり風が髪を揺らして

「香夜には
‥俺しかいないってさ
馬鹿みたいだけど
そう思ってたから、なんかね」


困ったように笑って
切なそうに抜けてく吐息

⏰:10/03/28 23:46 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#17 []
 
「あぁ、悔しい悔しい
大失恋‥だわ」

「失恋‥って
まだあたし何も言ってな‥」

「馬鹿」

ぴしゃりと叩かれた額
優しく叱るように

一気に事が進みすぎて
よくわかんない

⏰:10/03/28 23:46 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#18 []
 
だけど倫次はあたしのこと‥


「香夜は、自分に疎いなぁ」

藍色の羽織を空中に踊らせ
包み込むように
あたしの肩にかけて

「自分と向き合えよ、ちゃんと」

そう言って背を向けた

⏰:10/03/28 23:46 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#19 []
 

自分と向き合う

あたしが今向き合うべきなのは‥



もう、逃げるのはやめよう

⏰:10/03/28 23:47 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#20 [笹]
第三五章 【強く、なって】
>>2-19
*。*。*。*。*。*
はい第二段です ^p^
馬鹿で自分をorderしてしまい
書けなくなりましたw
なので立て直しさせて
いただきました(;_;)申し訳ない

だんだん二人が
向かい合ってきましたね !!
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/28 23:50 📱:D905i 🆔:YbCY9nv6


#21 []



あたしが
向き合わなきゃいけないのは‥


「壱助さん‥」

「随分と‥
長話で、いらっしゃる」

鋭い視線
何度目をそらしてきただろう

⏰:10/03/29 00:20 📱:D905i 🆔:mvSjpDFg


#22 []
 
敷かれた布団の色が霞む
そこに布団にも入らずに
胡座をかいて

飲みかけのお酒
‥飲みきらないなんて珍しい



「今夜は冷えます、よ
早く床に
‥ついたらどうですかい?」

⏰:10/03/29 00:21 📱:D905i 🆔:mvSjpDFg


#23 []
 
「‥壱助さん
あたしの‥布団は?」

まさか同じ布団だなんて‥

「此処、ですよ」

ひらり捲って隣をぽんと叩く

壱助さんが
あたしを襲うなんてのは
考えられないけれど

⏰:10/03/29 00:21 📱:D905i 🆔:mvSjpDFg


#24 []
 
喰われそう‥

「嫌なら‥其処で」

美しい指が示した固そうな畳
あぁ‥意地悪


渋々隣に潜り込む

ひんやり冷たい感覚が
体を包み込む
どことなく苦しくて

⏰:10/03/29 00:22 📱:D905i 🆔:mvSjpDFg


#25 []
 
隣に寝そべる美しき個体
気を使ってるのか
あたしが嫌なのか
色っぽい背を向けて


冷たい手をさすって
温もりを求めれば
擦れあう音が響き渡る

青白い月の光が胸を締め付けた

⏰:10/03/29 00:22 📱:D905i 🆔:mvSjpDFg


#26 []
 
「壱助さん‥あたし、」

見えない背中に問いかけて
返事のない空間に目を瞑る


向き合わなきゃいけない人

もう逃げちゃいけない
逃げるのはやめだ

⏰:10/03/29 00:23 📱:D905i 🆔:mvSjpDFg


#27 []
 
辛くてもいい
苦しくてもいいんだ

自分に素直になれば
怖くなんかないよね、倫次


呼吸を整える
何度も何度も息を吸って
握りしめた手に力を込める

⏰:10/03/29 00:23 📱:D905i 🆔:mvSjpDFg


#28 []
 
「壱助さん‥
もう、寝ちゃいましたか?」

返事がなければ明日にしよう


「香夜さん‥」

いつもの調子の低い声が
此方に向いて
背後から染み渡る温もり

⏰:10/03/29 00:24 📱:D905i 🆔:mvSjpDFg


#29 []
 
ぎゅうっと背中を抱きしめられて
結局壱助さんには適わない

また、踊らされて終わってしまう


「‥どうしたんですか?」

「いえ‥冷えるもんで、ね」

⏰:10/03/29 00:24 📱:D905i 🆔:mvSjpDFg


#30 []
 
期待なんかしちゃいないのに
心のどこかで残念がって

どこまでもあたしは情けない

だけど幸せ
‥素直になったら軽くなった


「香夜さん‥」

今になって気づく
気持ちの大きさ

⏰:10/03/29 00:24 📱:D905i 🆔:mvSjpDFg


#31 []
 
‥急に溢れ出した涙
伝えたら崩れてしまう?
それなら仕舞っておきたい

こうして触れられる事も
なくなっちゃうのかな


どこまでもどこまでも逃げて
甘い嘘を受け入れたい

⏰:10/03/29 00:25 📱:D905i 🆔:mvSjpDFg


#32 []
 
「寝ましょう、か」

そっと覆ったしなやかな手が
目の前を遮って
くだらない恐怖を取り除く

貴方の手に触れた滴
染みていく

零れた涙の後を
辿るように指が頬を這った

⏰:10/03/29 00:26 📱:D905i 🆔:mvSjpDFg


#33 []
 

言葉にしてほしい
貴方が何を考えているのか
貴方がどう思っているのか


それだけが気になって

あたしの心を奪うから‥

⏰:10/03/29 00:26 📱:D905i 🆔:mvSjpDFg


#34 [笹]
第三六章 【触れて、恋心】
>>21-33
*。*。*。*。*
香夜ちゃん遂に
気づきました恋心(゚_゚)←
長かったここまでの道のりw

暗闇かつ背を向けてるのに
泣いてるのがわかっちゃう
壱助さんは超能力者 ^p^え
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/03/29 00:29 📱:D905i 🆔:mvSjpDFg


#35 [笹]
【本編アンカー/35〜】

>>2-19
>>21-33

⏰:10/03/29 00:38 📱:D905i 🆔:mvSjpDFg


#36 []



放り出された藍色の羽織り
手に取ればずしり重く感じた

泣き出すとは‥ねぇ
何を言われたの、か

それを丁寧に畳めば
途中で手が止まる
彼女に世話を焼きたくなるのは
私だけではないのかと
‥思うのですが

⏰:10/04/02 22:15 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#37 []
 
小さく四角くなったそれを
彼女の枕元にそっと置いた


「妬いてしまうんですが、ね
どう、したら‥」

まだ閉じたままの瞳
あどけない額を撫でれば
長い睫が少しばかり揺れる

⏰:10/04/02 22:16 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#38 []
 
愛嬌も良ければ
懐きやすい、ときた
ちょいと目を離したら
貴女は‥何処へ

"一生傍にいる"なんざぁ
私の言い分に過ぎないのか‥


どうも近頃
満足いかないんですが、ね

⏰:10/04/02 22:17 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#39 []
 
月明かりに照らされた桜
はらはら散って終わりを告げる


「花は盛りに‥か」

⏰:10/04/02 22:17 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#40 []



「おえぇええっっ!!!」

いきなり催す吐き気
腹部に走った激痛が
胃の中を駆け巡って
口の中から漏れそうだった

「いち‥ゴホッ
何でお腹‥おえぇ」

「大袈裟、ですね」

⏰:10/04/02 22:18 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#41 []
 
大袈裟じゃない!!
ほんとに痛いって言うか
は‥吐く

まだ顔面叩かれた方がましかも‥


「ちょいと‥
鍛えたらどうですか?」

「は?」

⏰:10/04/02 22:18 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#42 []
 
壱助さんの背後から射す
朝日の眩しさに目を細め
上から降り注ぐ視線の先を
目で丁寧に追えば‥

「随分と‥柔い」

クスッと鼻であしらわれた
あたしのお腹

蹴り飛ばしといて笑うとは‥
何か‥恥ずかしい

⏰:10/04/02 22:19 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#43 []
 
「女の子は‥
これ位が丁度いいんですぅ!」

「女の子‥ねぇ」

そう吐き捨て腰を下ろし
茶を啜った


昨日はお茶飲まなかったのに‥自分で煎れたのかな?

⏰:10/04/02 22:19 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#44 []
 
って言うかあたし
やっぱり女の子に見られてない?
普通蹴飛ばさないよね‥

「んん‥」

ぼうっと腹部をさすり
壱助さんの背中を見つめる

痛かったはずなのに
今は忘れてしまうくらい
心が痛いです

⏰:10/04/02 22:20 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#45 []
 
ふと枕元目をやれば
綺麗に畳まれた倫次の羽織り
そして予想される相手へ目配せ

‥世話好きだなぁ、やっぱり

あたしは子供なのかな?


やっぱり気づかなきゃよかった
気分が上がらないや‥

⏰:10/04/02 22:20 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#46 []
 
「香夜さん‥」

「‥はい?」

「午前中には出ます、よ」

呆気なく終わる一泊二日の二人旅

まぁいつもと変わりないよね
布団が一枚だったのと
壱助さんが‥

⏰:10/04/02 22:21 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#47 []
 
―‥やきもち?


まさかね、
こんな冷酷な大人すぎる人間が
あたしみたいな餓鬼に
妬くわけがない


ただの世話好き、そうだ

⏰:10/04/02 22:22 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#48 []



何だか来たときより
荷物が重く感じた

気持ちの問題かな
‥すっきりしたはずなのに


「壱助さんっ!!」

ゆるり振り返り着物が揺れた
相変わらずの仏頂面
もう‥慣れたけど

⏰:10/04/02 22:22 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#49 []
 
「倫次に羽織り‥返してきます」

荷物を石畳の上に置き
羽織りだけを抱えた

壱助さんを待たせるなんて
‥挑戦者だあたし


反応を見るのを恐れて
急ぎ足で向きを変えて向かえば
後ろから声がかかる

⏰:10/04/02 22:23 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#50 []
 

「‥香夜」


思わず振り返った
それはもう小動物のように機敏に

だって今‥呼び捨て

ばちりと合ったその目は
鋭くも柔らかくて驚いた

⏰:10/04/02 22:23 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#51 []
 
春風に揺られ
花びらが壱助さんの周りを舞う

なんだかその瞬間
周りの音が消えた気がした


艶容な唇が緩くつり上がり
ゆっくり少しだけ動いた
そして何かを告げた

⏰:10/04/02 22:24 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#52 []
 
「え?今なんて?」

何故か胸が張り裂けそう


「いえ‥早くしないと
置いて行きます、よ」

「え‥あぁはい!!」

⏰:10/04/02 22:24 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#53 []
 
今までにない顔で
あぁもう‥だめだ
忙しなく鳴る鼓動がやまない


熱くなる頬
思い切り息を吸い込んで
熱を無理やり追い出した

⏰:10/04/02 22:24 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#54 []



「倫次‥ありがと」

懐かしき幼なじみに手渡した
あっさりとした別れ

「いえいえ」

にっこり笑ったその顔は
少しばかり寂しそうに見えた

⏰:10/04/02 22:25 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#55 []
 
「それと‥ありがと」

「‥何が?」

「気持ち、嬉しかった」

大切な人に
そう思われてるなんてね
すごくあたしは幸せ者だと思う

⏰:10/04/02 22:26 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#56 []
 
だけどね‥気付いた

「だけど‥
心に決めた人がいるから」


倫次のおかげで気付けたよ
やっと向き合えた

辛くても、うまく行かなくても
投げ出すのだけは
やめようと思うよ

⏰:10/04/02 22:26 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#57 []
 
「そっか、
いつもの香夜らしくいれば
‥大丈夫さ」

くしゃっと頭を撫でられて
鼻の奥がつんとした


「香夜‥あの人、いい人だよ」

「‥?」

⏰:10/04/02 22:27 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#58 []
 
「あの人には‥負ける」

「え‥?何が?」

「ほら、あんまり待たされると
‥置いて行かれる」

背中を押した手
暖かくて力強くて

あたしもいつかそんな風に
誰かの背中を押せるような
強い人になりたいな

⏰:10/04/02 22:27 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#59 []
 
「ありがと倫次!!
また‥また来るから!!」

振り返り叫べば
大きく手を振って見送られた


あぁ‥何だか切ないよ
わかんないけど
あたし‥幸せだ、本当に

⏰:10/04/02 22:28 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#60 []



追いかければもう門には居らず

「‥置いて行かれた」

肩を落として
うなだれて門を出れば


「ぎゃあっ!!」

門の隅に寄りかかった貴方

⏰:10/04/02 22:28 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#61 []
 
「‥遅い」

なんだ‥待っててくれたんだ

じわじわと地面から
柔らかい感情が湧き出して

「ご‥ごめんなさい」

鋭い視線に突かれたって
痛くも痒くもない

⏰:10/04/02 22:29 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#62 []
 
ふと思い出す先程の貴方

緩む口元に力を込めて
先を行く背中を追った

「あ‥壱助さん!!
倫次とお話したんですか?」

「何、故」

「さっき倫次が
そんなような言い方してたから」

⏰:10/04/02 22:30 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#63 []
 
「‥」

「何で黙るんですか?」


「さぁ、ね」

そして、遠くを見つめて‥


横顔が舞う桜に溶けて行く

⏰:10/04/02 22:30 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#64 []
第三七章 【花は、盛りに】
>>36-63
*。*。*。*。*
二人旅終了〜\(^O^)/
香夜ちゃんは恋心に
壱助さんは独占欲に
気付いたっぽいです ww

呼び捨てそして口ぱく
倫次との秘密のお話w
全く理由は考えてなi ^q^ ←
後に番外編にでも
書きたいと思います **
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/04/02 22:37 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#65 [笹]
【本編アンカー/35〜】

>>2-19
>>21-33
>>36-63

⏰:10/04/02 22:38 📱:D905i 🆔:fWI6nvOI


#66 []



桜色から覗く鮮やかな若葉色
春もとうとう過ぎ去って
やってくるは爽やかな季節

白くひらひらした蝶が
菜の花に停まる
愛らしい姿に目を細める
寄り添った二匹が
追いかけっこをしてるみたいに
宙に舞って消えた

⏰:10/04/15 21:24 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#67 []
 
「壱助さん‥あたし」

「ちょいと、気分転換にでも‥」


あれから良い機会などなくて
なかなか言い出せず

言い出そうとすればこんな感じ
話を上手く逸らされて
どうしようもない

⏰:10/04/15 21:24 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#68 []
 
気付いてるんだろうか
何かまずいことでもあるのかな

「ねぇ壱助さんってば!!」

悔しくてたまらない
悲しいよりも先に
そんな感情が先に出る

もどかしくて、
訳もなく恥ずかしい

⏰:10/04/15 21:25 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#69 []
 
張り出した声
潤んだ瞳に歪む背中

できるならこんな感情
棄ててしまいたいのに


「‥」

何も言わずに立ち止まった
真っ白な首筋が冷たく見えた

⏰:10/04/15 21:25 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#70 []
 
「ちゃんと‥聞いてください」


「私が何故、香夜さんの傍に居るか
‥ご存知で?」

より一層低い声が
足の裏からじわり侵入して
ぎゅうっと胸が苦しくなる

⏰:10/04/15 21:26 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#71 []
 
そんなこと知らない
期待できるような理由じゃない

何故だかそんな気がして
知りたいのに、知りたくない


ゆっくり振り向き
横目で此方を見下げ
鋭い視線に殺されそうだった

⏰:10/04/15 21:26 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#72 []
 
黙って首を振れば
また前を向いてため息

「なら‥その内」

「その内?その内って何ですか?」

思わず立ち上がり
ぶつかりそうな所で体が止まる

壱助さんはずるい
いつもそうやって秘密を作る

⏰:10/04/15 21:26 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#73 []
 
「まぁ‥いいじゃあ、ないですか」

きっとまた
その艶容な口が笑ってる
対等になろうなんて思わないけど
悔しくてたまらないよ


「ちょっと‥!!
逃げないでくださいよ
そうやって‥
いつもはぐらかして!!」

逃げ出す背中を追う
足が重たい

⏰:10/04/15 21:27 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#74 []
 
自分の気持ちに気づいてから
体が重い気がする

「逃げる、か」

「そうです!!
ちゃんとあたしと向き‥」


あれ‥ちょっと待って

⏰:10/04/15 21:27 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#75 []
 
此方を向いた壱助さん
腕を組んで
眉間にしわを寄せて‥


「いた‥っ」

頭に走る激痛
刃物で一突きされたような
鋭い痛みが吐き気を催す

⏰:10/04/15 21:28 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#76 []
 
『助けて‥!!』

乱れる呼吸
崩れた体が悲鳴をあげる

『‥お父さん!!』

だめ‥違う、違うの
そうじゃない

『香夜‥!!』

⏰:10/04/15 21:28 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#77 []
 
視界が揺れた
走馬灯のようにあの日の記憶だけ
丁寧に繰り返される


壱助さんが見下ろす
歯を食いしばって険しい顔で

⏰:10/04/15 21:29 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#78 []
 
『お父さあぁあん!!』


潰れかかった自分の悲鳴が
脳裏にへばりついて
雨のように降ってきた
血液の匂いが蘇って
鼻の奥をくすぐった


嘘‥どうして?

壱助さん‥

⏰:10/04/15 21:29 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#79 []
 
「や‥いやぁ‥」

冷ややかな地面の砂が
はだけた着物の隙間から
蝕むように侵入してくる

「どう‥して
何で、何で壱助さん‥」

隠しきれない動揺が渦を巻いて
気づかぬ内に頬を濡らした

⏰:10/04/15 21:30 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#80 []
 
「そろそろ‥ですか、ね」

目を細めてそう呟いた声
その姿をあの日、あの時‥


壱助さん
あたしを拾ったのには
訳があるのでしょう?

⏰:10/04/15 21:30 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#81 []
 
例えば、
あたしたちの出会いが
もっとずっと前の事で‥

_

⏰:10/04/15 21:32 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#82 []
第三八章 【崩れて、記憶】
>>66-81
*。*。*。*。*
久々の更新が‥
内容暗すぎる(゚-゚)
ヒステリック香夜 ←
ってか会話少ないwww

何回も書き直したり
スランプだったんですが
思い切って急カーブをかけてみた
最近2人のギャグ並みの絡みが
ないのでそのうち ←
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/04/15 21:36 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#83 [笹]
【本編アンカー/35〜】

>>2-19
>>21-33
>>36-63
>>66-81

⏰:10/04/15 21:37 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#84 []
*゚・。*

「壱助さーん」

「‥」

「んぅ‥壱助さんってばぁ」

「かわゆい」

「‥は?」

「いえ‥
此方の話です、よ」

⏰:10/04/15 21:59 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#85 []
 
「かわゆいって‥
何が?どこが?誰が?」

「まぁ、まぁ」

「またはぐらかしてー‥むぅ」

「香夜さん‥」

「んぅ」

⏰:10/04/15 21:59 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#86 []
 
「―――――‥」

「え‥な‥、ななな」

「‥です、よ」

「何な、何言ってるんですかぁ?
も‥やだなぁ、あはっあは」

「かわ、ゆい」

「‥ばか」

「はい、はい」

⏰:10/04/15 22:00 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#87 []
番外編 【かわゆい戯れ事】
>>84-86
*。*。*。*。*
まさかの3ページww
しかも会話おんりーww

あまりにも
本編が暗っちいので
ふざけてみました ←

壱助さんに
かわゆいって言わせたかっただけ
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/04/15 22:03 📱:D905i 🆔:pJU1XkOc


#88 []



あたしの記憶の隅に
すでに貴方は居て‥

何も語らずとも
あたしの過去を知っていたのは
そういうことだったんだ

あの日
‥貴方はあの場にいた

⏰:10/04/19 20:34 📱:D905i 🆔:2Nqm1ljI


#89 []
 
「壱助さん‥どうして今まで」

「此処じゃあ、何です
中へ入りましょう‥か」


間違いない
確かに貴方なんだ

⏰:10/04/19 20:34 📱:D905i 🆔:2Nqm1ljI


#90 []



真っ白な肌
綺麗な首筋に艶容な唇
通った鼻筋に長い睫

忘れるはずがない


だけどあたしは今まで
気付きもしなかった
どうして?

⏰:10/04/19 20:35 📱:D905i 🆔:2Nqm1ljI


#91 []
 
「さぁ‥
何から、話しやしょうか」

全てを見透かすような瞳は
その通りだった
あたしの全てを知っている


妙な緊張感
独特の静けさに息を飲む

至って冷静で
それでいて自然と把握した

⏰:10/04/19 20:35 📱:D905i 🆔:2Nqm1ljI


#92 []
 
「お父さんが殺されるのを
‥見ていましたか?」

まだ脳内で再生される
残酷な映像に目をつむり
静かにそう問った


「えぇ‥確かに」

淡白な答え
真っ赤などろどろした液体が
体中を駆け巡る

⏰:10/04/19 20:36 📱:D905i 🆔:2Nqm1ljI


#93 []
 
「まだ‥貴女は幼かったですが
相当な眼力‥
忘れもしませんぜ
あの憎悪や絶望漂う目を、ね」


微かにつり上がった唇
この余裕げな表情に
憎たらしさを覚えたのは
久しぶりだった

⏰:10/04/19 20:36 📱:D905i 🆔:2Nqm1ljI


#94 []
 

唇をキツく噛み締めれば
じわり鉄分の生臭い味


「何故‥助けなかったのか、と」


_

⏰:10/04/19 20:37 📱:D905i 🆔:2Nqm1ljI


#95 []



あの日
壱助さんはそこに居た

あたしが連れ去られかけ
父に助けを求め
父が代わりに殺されたのを
彼は黙って見ていた

最初から最後まで‥全て

⏰:10/04/19 20:37 📱:D905i 🆔:2Nqm1ljI


#96 []
 
赤く染まった傷口を
何を訴えるでもない
そんな目で見つめてた

そして目を細めて
此方にその視線を向けた

かなりの温度差
ぴたりと視線が合った時思った

"どうして助けてくれなかったの"

⏰:10/04/19 20:38 📱:D905i 🆔:2Nqm1ljI


#97 []
 
熱い物がこみ上げて
あたしの視線を支配した

威嚇するように睨み付けた
後ろから母の悲鳴が聞こえた


よくわからなかった
物事が急に進んで
頭がついて行かなくて

⏰:10/04/19 20:38 📱:D905i 🆔:2Nqm1ljI


#98 []
 
とても絶望的で
地の底に突き落とされたようで

まだ幼かったあたしは
ただただ視線の先にいた
"大人"を睨むしかなかった


それから始まった母からの虐待

⏰:10/04/19 20:39 📱:D905i 🆔:2Nqm1ljI


#99 []
 
大した物でもない脳で
必死に状況を理解しようとした


何故父は殺されたのか

何故母はあたしを傷つけるのか


_

⏰:10/04/19 20:39 📱:D905i 🆔:2Nqm1ljI


#100 []
 

「実は‥貴女の父上と
面識がありまして、ね」


‥何故大人は身勝手なのか

_

⏰:10/04/19 20:40 📱:D905i 🆔:2Nqm1ljI


#101 []
第三九章 【秘密、現れて】
>>88-100
*。*。*。*。*
謎の急展開
お互い探り合い←
恋愛模様は一旦中止w
奥深い話が書きたいです ^q^

あぁ早く
絡まってほしいのにw
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/04/19 20:43 📱:D905i 🆔:2Nqm1ljI


#102 [笹]
【本編アンカー/35〜】
>>2-19
>>21-33
>>36-63
>>66-81
>>88-100

【番外編】
>>84-86

⏰:10/04/19 20:44 📱:D905i 🆔:2Nqm1ljI


#103 []



それは季節に似合わず
肌寒い日だった


「財布‥落としましたぜ」

財布と言うか
小さな巾着袋が
金物がこすれる音を立てて
その主の袖口からこぼれた

⏰:10/05/02 20:51 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#104 []
 
「あぁ!これは申し訳ない!!
俺としたことが‥」

拾い上げて埃をはらったそれを
手のひらに乗せてやれば
かしこまって頭を下げられる

「いえ、いえ」

緩く微笑み背を向ければ
軽く引かれた着物の袖

⏰:10/05/02 20:51 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#105 []
 
「一杯‥どうですか?」

できた笑い皺
人の良さが滲み出る

先程の巾着を持ち上げ
"おごらせてくれ"と言った


小さな木枯らしが
肌をかすめた夕暮れ

⏰:10/05/02 20:52 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#106 []



「あんた面白い人だなぁ!!」

「いえ、いえ」

相手方の男は
どうやら"出来上がった"ようで
首や耳のあたりまで赤くして
ぐいっと肩を組んできた

⏰:10/05/02 20:52 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#107 []
 
「いいなぁ‥旅かぁ」

完全に緩みきった顔
男に抱かれたって嬉しかない
そっちの気は
流石にありゃあしない


抱き寄せられた体を
投げるようにして任せれば
にこにこと笑い満足げ

⏰:10/05/02 20:52 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#108 []
 
「俺も旅したいさぁー。
できるなら、あんたみたいに
1人でいろーんなとこ‥」


馬鹿でかかった声は一転
萎んで終いにはかすれて消えた

もう片方の手で酒瓶を握り
何かから逃れるように
喉の奥に流し込んでいた

⏰:10/05/02 20:53 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#109 []
 
「何か、厄介なことでも
‥あるんで?」

横目で問えば
困ったように笑ってた

「んあぁ‥んん」

「まぁ、誰にでも‥
そんなものは有ります、よ」

「あぁそうだ!!
聞いてくれるか?あんちゃんよ」

⏰:10/05/02 20:53 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#110 []
 
肩に乗っていた手に
ぐいっと引き寄せられた

酒の甘ったるい臭いが
顔にかかる

自分もこんなに酒臭いのかと
少しばかり気落ちした


「娘がな、居るんだけどな」

⏰:10/05/02 20:54 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#111 []
 
溢れんばかりの笑み
この先の言葉に
だいたいの検討はつきますが‥


「それがさ、もう‥
可愛くて可愛くて仕方ないんだ!」

そんな事を言われて
抱き寄せられた私に
あんたは何を求めてるんだ‥

⏰:10/05/02 20:56 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#112 []
 
「ほぉう」

「もう今年で十になるんだが
最近じゃあお姉さんになって‥」

「へぇ、はぁ」

「ほんとに何というか‥
いい子でなぁ、」

その瞬間
父親の目つきになった
力強く、その上暖かい

⏰:10/05/02 20:57 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#113 []
 
「危なっかしい所もあるが、
責任感と正義感が強くて‥
唯一の‥励みなんだ」

少しばかり低くなった声
読みとれるのは
暗闇に埋もれた絶望


娘を語る口調は
暖かくも悲しみに濡れていた

⏰:10/05/02 20:57 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#114 []
 
「そりゃあ‥いい娘さん、ですね」

「‥」

その男は突っ伏したまま
ぴくりともしなかった

人々の騒がしさに埋もれた姿は
たった独りだけ
取り残されたような
別の空気をまとって見えた

⏰:10/05/02 20:58 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#115 []
 

酔いつぶれた‥か


ため息ひとつ
猪口を持ち上げ飲み干す液体

普段よりも苦味を感じた

⏰:10/05/02 20:58 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#116 []



「なぁ‥あんちゃん。」

‥起きてたんですか

「あんた、名前は?」

「壱助‥と申します」


突っ伏したままの頭に答えれば
"ふぅん"と弱々しく唸った

⏰:10/05/02 20:58 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#117 []
 
「なぁ‥壱助」

「何、か」

「頼みが‥あるんだ」


少しばかり嫌な予感がした
酔った勢いだと
投げてしまえばそれまでだが

口調は先ほどより
はっきりしている

⏰:10/05/02 20:59 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#118 []
 
「俺に‥もしものことがあったら」

「娘を頼む‥とでも?」

否定を求めて問ったんですが、ね

「あぁ‥何でわかった?
やっぱりあんた、徒者じゃないな」

「‥奥さんは?」

⏰:10/05/02 20:59 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#119 []
 
「死んだよ。娘を産んですぐに‥
今は‥別の女と暮らしてんだ」


そしてまた酒を口にした
小刻みに震えていた手が
苦しみのあまり
酒に逃げ続けた事を物語っていた

⏰:10/05/02 21:00 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#120 []
 
「娘には、その女が母親だって
‥そう言ってある。」

「何、故」


「可哀想だった‥。
何も知らずに"お母さんは?"って

‥"死んだ"なんて、言えなかった」

⏰:10/05/02 21:00 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#121 []
 
途切れ途切れの言葉が
妙に奥に突き刺さった

何とも言えない
もどかしさを覚えた


「幸せになってほしいんだ
香夜には‥妻の分まで‥」

やっと顔を上げ
此方に向けられた顔は
父親の顔だった

⏰:10/05/02 21:01 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#122 []
 
最愛の人の死を迎え
絶望に満ちたその瞳は
守らねばならぬものを
確かに持っていた


「香夜に何一つ‥
父親らしいことを
‥してやれなかった。
仕事ばかりで、あまり時間も‥

だからせめて
守りたいんだ。あの子を」

⏰:10/05/02 21:01 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#123 []
 

「あんた‥もしかして」



ふと過ぎるのは暗黒の世界
目に浮かぶは褐色の液体

鼓動が乱れた

⏰:10/05/02 21:02 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#124 []
 


「壱助‥香夜を頼む」



決意に満ちた目は
恐怖に脅えてなどいなかった

ただ一心にひたすらに‥

⏰:10/05/02 21:02 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#125 []
 


香夜さん‥私には任務がある



―‥貴女を守る任務が、ね

_

⏰:10/05/02 21:03 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#126 []
第四十章 【受け継いだ、思い】
>>103-125
*。*。*。*。*。*
久々更新です(´・ω・`)ども

いやー暗い重い複雑w
元々こんな展開になるはずじゃ←
だから最初のほうと
つじつま合ってなかったら
見逃してくださいww

突っ込みどころ満載ですが
さらっと読んでください ^^え
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/05/02 21:08 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#127 [笹]
【本編アンカー/35〜】
>>2-19
>>21-33
>>36-63
>>66-81
>>88-100
>>103-125

【番外編】
>>84-86

⏰:10/05/02 21:09 📱:D905i 🆔:sxqRlBYk


#128 []
*゚*。*゚*

「あれ‥?
ない‥ないない‥」

「朝から騒がしい、ですね」


それはある雨の日のこと

いつものように
壱助さんの顔面攻撃を食らい
目を覚ましたわけですが‥

⏰:10/05/03 22:20 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#129 []
 
「ないんですぅーっ!!」

「‥」

もう今は
そんな呆れた視線なんて
気にもならない

ないんですよ‥あたしの‥

「か ん ざ し ーっ!!!」

⏰:10/05/03 22:21 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#130 []



雨音が強くなる

屋根にぶつかる雫は
ばちばちと打ち抜くようで
液体だということを
忘れさせるくらいだった


「あたしの簪!!
‥知りませんか?
確か昨日枕元に‥あれぇ?」

⏰:10/05/03 22:21 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#131 []
 
枕元を見ても
枕を持ち上げて揺すって見ても
どこにも見当たらない


部屋中をじっと見回し
昨夜の記憶を辿る

⏰:10/05/03 22:21 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#132 []
 
「簪くらい‥
いいじゃあないですか、ねぇ」

「よくなーいっ!!
お気に入りなのに‥」


何処までもこの人は悠長で
興味がないのか何なのか
どうせ人事だと思ってるんでしょ

もー‥。

⏰:10/05/03 22:22 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#133 []
 
少し膨れっ面で髪をかきむしれば
壱助さんが自分の枕を見つめた

「形見か‥何かですかい?」

そう言って
とりあえずと言った様子で
枕を持ち上げた

絶対探す気ないわ‥

⏰:10/05/03 22:22 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#134 []
 
「いや‥ただ
可愛いから気に入ってたんです」

「ほぉう‥
そりゃあ、どんな?」

結局すぐに枕を下ろし
いつものように茶を煎れはじめ

「えっと‥
簪自体は黒くて、
飴色の硝子玉の飾りが‥」

⏰:10/05/03 22:23 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#135 []
 
「飴色‥ねぇ」

少し考えるようにして
顎に添えられた細長い指

そしてつられるように
艶容な唇が弧を描いた


「‥はぁ。
もういいです。
自分で捜します、自分で」

⏰:10/05/03 22:24 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#136 []
 
茶を啜り一息つく姿を見ると
ひとりで騒いでる自分が
惨めに思えてくる


無くしたあたしが悪いんです
自分の物は自分で管理しろ
そういうことですよね


雨音がさらった
少しばかりの心意気

⏰:10/05/03 22:24 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#137 []
 
湿気に犯された畳を拭うように
着物が擦れる音がした


「ちょいと、野暮用に‥」

「え‥
あたしの簪は??」

「今、自分で捜すと
仰ったじゃあ‥ないですか」

⏰:10/05/03 22:24 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#138 []
 
「うぅん‥
でも外雨降ってるし‥ねぇ?」


ちらり外に向いた壱助さんの視線
右手に握られた真っ赤な番傘

ガサッと紙が擦れるような音
こんなもので
何故雨を防げるのかと
不思議に思う

⏰:10/05/03 22:25 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#139 []
 
そして此方に向けられた視線は
相変わらず鋭いもので

「ちょいと‥野暮用に」

「‥い、いってらっしゃい」


雨の中に埋もれた真っ赤な色は
遠く遠くに姿を消した

⏰:10/05/03 22:26 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#140 []
 
「んうぅ‥簪‥」

雑に髪をたくし上げ
そのまま手を離せば

切りっぱなしの
伸びかかった黒髪が
だらしなく揺れていた

⏰:10/05/03 22:26 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#141 []



「はぁ‥やっぱりない」

部屋中いたるとこを捜した
なのにない

なんで?なんで?

「まぁ‥あれも
だいぶ使い込んで‥
飾りの部分が欠けてたんだけど」

⏰:10/05/03 22:27 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#142 []
 
新しいの買い直そうかなぁ‥


ふと後ろに気配を感じ
振り返れば

「うわっ!!
お‥お帰りなさいっ」

髪が濡れていた
ぽたり落ちた雫が頬を伝った

⏰:10/05/03 22:27 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#143 []
 
「壱助さん?
傘‥さしてたんじゃ?」

水も滴るいい男。
うん‥悪くないかも

真っ白な首筋から一滴
胸元をすり抜けて
着物の奥に消えた

それを目で負えば
雫の行方が気になって
胸が高鳴る

⏰:10/05/03 22:28 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#144 []
 
「ちょいと‥
破れちまいやして、ね」

やはり紙は脆いのか‥
にしても
どれだけ大きな穴が‥

「ふぅん‥ほんとに?」

「まぁ、いいじゃあないですか」

⏰:10/05/03 22:29 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#145 []
 
壱助さんの声が
上から降り注いで

後ろから
ぎゅうっと抱きしめられた

湿った着物が首筋に貼り付く


「んえ‥あの‥」

⏰:10/05/03 22:29 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#146 []
 
「まるっきり同じとは
‥なかなか言えませんが、」

少し冷えた手がうなじに触れた


綺麗な指に絡まる髪
高く持ち上げられれば
首筋にすうっと空気が抜けた

⏰:10/05/03 22:30 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#147 []
 
「飴色‥ですぜ」

華奢に鳴いた硝子玉
鏡を覗けばきらきら光った

「壱助さん‥これ‥」

「さすがにもう‥これじゃあ」

「あ‥それ」

⏰:10/05/03 22:30 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#148 []
 
今にも硝子玉が落ちそうに
ぷらぷらとだらしない簪

鏡越しに見つめれば
すっと壱助さんの懐の中へ

「もしかして‥わざわざ」

「香夜さん‥」

「‥はい?」

⏰:10/05/03 22:31 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#149 []
 
「ちょいと体が‥冷えます故‥」

優しく首元を抱いた腕は
雨に濡れて冷たくて


「今暫く‥このままで」



たった一時の、幸せを‥

⏰:10/05/03 22:31 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#150 []
【おまけ】
「本当に穴開いたんですか?」

「‥人助け、ですよ」

「はぁ?何ですかそれ」

「あの番傘も‥
綺麗な娘さんの手に渡り
さぞかし‥幸せでしょう、ね」

「‥色男め」

⏰:10/05/03 22:36 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#151 []
番外編 【飴色の雫】
>>128-150
*。*。*。
はい思いつきですw
後半何がなんだか ←

壱助さんサプライズ好き ^^ω
案外健気だ w
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/05/03 22:39 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#152 [笹]
【本編アンカー/35〜】
>>2-19
>>21-33
>>36-63
>>66-81
>>88-100
>>103-125

【番外編】
>>84-86
>>128-150

⏰:10/05/03 22:40 📱:D905i 🆔:92Bmo8C2


#153 []



全てを語られた
途切れ途切れの記憶が
全てつなぎ止められた

壱助さんの手によって‥


自分の記憶を信じ切ってたから
隠れた真実に息が止まる

⏰:10/05/17 13:21 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#154 []
 
「貴女の父上は
‥死と向き合った」

そんなことを言われたって
簡単に飲み込めずに喉に絡まる

お父さんはあたしを救うため
命を捨てたこと

"アレ"は母親ではないこと

壱助さんがお父さんの代わりに
あたしを守ってくれてること

⏰:10/05/17 13:21 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#155 []
 
‥何から処理したらいい?
これは知るべき事実なのか
それさえもわからなかった


視界が揺れる
右へ、左へ‥
灰色に染まった世界
じわりと濁った


「どうして‥ですか?」

⏰:10/05/17 13:21 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#156 []
 
一番気にかかる
一番疑問に思うのは

「どうして‥お父さんの頼みを?」


たった一晩共に飲んだだけだ

よくわからない男の
わけのわからない頼みを
どうして受け入れた?

⏰:10/05/17 13:22 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#157 []
 
嘘かもしれない
酔った勢いかもしれない

何を根拠に、何を理由に
あたしの傍に‥貴方は‥


「何となく‥ですか、ね」

「‥んえ?」

予想もしていなかった
曖昧な宙に浮いたような返事に
気の抜けた声が漏れた

⏰:10/05/17 13:22 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#158 []
 
「何となく‥ですよ」

「何となくで人を見殺しにして
何となくで‥あたしを?」

妙な憤り
何か正確な理由を
予想していたわけではないけど

ちゃんとした理由が欲しかった
このもどかしさを
埋めてほしかった

⏰:10/05/17 13:23 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#159 []
 
そしたら何故か
気持ちに整理が付きそうで‥


「あるじゃあないですか‥
根拠は無くとも‥ねぇ」

「じゃあ‥どうして
お父さんを助けて‥」

「よく魘されたもんです、よ
あの生々しい残虐さ‥」

⏰:10/05/17 13:23 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#160 []
 
被せられた声は
遠くを見つめているような
それでいてまだ
生々しさを保ったままで

飛び散った褐色の液体
へばりつくような呻き声
鼓膜を突き破る悲鳴

あの光景を
貴方は同じように見てた

⏰:10/05/17 13:23 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#161 []
 
「眠りにつくたびに
襲われるものですから‥
単純に‥寝るのを止めましたが」

とんだ冷酷人間だ
そう思っていたけれど


もしかしたら
あたしなんかより
重い恐怖を背負っていたのかも

⏰:10/05/17 13:24 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#162 []
 
「香夜さんと父上‥
両方を救うことなど
‥容易い事でした。」

「‥壱助さん」

「しかし‥
私には、その先が見えず
‥助けた所で
お二方が幸福かどうかなど
わかりゃしなかった。」

⏰:10/05/17 13:24 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#163 []
 
少年が母親に
傷つけられていたあの時
壱助さんはあたしに
同じ様なことを言った

『助けた所で
貴女は少年を養えますか?
それが彼にとって
幸せだとは限らない。』


救い出すだけが勇気じゃない
見過ごす勇気は絶大だ

⏰:10/05/17 13:24 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#164 []
 
「死を覚悟することは
そう‥容易いことではない」

壱助さんを
いつも遠くに感じた

すぐ近くにいるのに
どこか遠くて


壱助さんは
いつも真っ直ぐ先を見つめてた

⏰:10/05/17 13:25 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#165 []
 
あまり笑わないし
いつだって冷静で

だけど本当は
誰よりも感情豊かで
それをただ胸の内に秘めて
常に一番正しい道を
選んできたんだ



‥何も知らなかった
明かされた鋼鉄の真実

⏰:10/05/17 13:25 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#166 []
第四一章 【躊躇いの先に】
>>153-165
*。*。*。*
のろま更新すみませぬ(´・ω・`)
なんせこんな展開の予定じゃ
なかったもんd‥ ←

壱助さんの素性を
明らかにしたかったんですが
文章力ユーモアに欠けるため
なかなか上手くいきませんな。
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/05/17 13:31 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#167 []



あたしを守るため
死を惜しまなかった父

その父にあたしを任せられ
‥それじゃぁ、壱助さん

「死んで‥しまうの?」


もう目の前で
大切な人を失うのは嫌だ

⏰:10/05/17 13:32 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#168 []
 
自分のためだと言われたって
独り残されたあたしは
どう生きたらいい?

生きる術が見つからないじゃない
ただ辛いだけじゃない

そんな思いまでして
生きたいなんて‥思えないよ

⏰:10/05/17 13:32 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#169 []
 
「‥まぁ、それが私の使命
"生き甲斐"とでも
言っておきましょうか、ね」


目を伏せて笑った
苦笑でもない作り笑いでもない
どこか満足げな笑みだった

⏰:10/05/17 13:33 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#170 []
 
あたしは壱助さんの為なら
死んだって構わない
そう思っているのに‥



どうして、そう
みんな身勝手なの?

⏰:10/05/17 13:33 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#171 []
 
「見殺しにした‥からです。
罪償いです、よ
私なりの‥償い。」

つり上がった唇
綺麗に弧を描いて
切ないため息がひとつ


「まぁ‥そんなのは
只の言い訳にしか
‥過ぎないのもしれません、ね」

⏰:10/05/17 13:34 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#172 []
 
ばちりと目があった
いつもの鋭さはどこか柔らかくて

まるで自分に呆れるかのように
軽く鼻であしらった


「義務じゃあない‥
私の意思です、よ」

「意思?」

⏰:10/05/17 13:35 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#173 []
 
「まぁ、まぁ
こんな重い話は‥
性に合わないでしょう」


正座から足を崩し
胡座をかいて
少しだけはだけた着物

息苦しかった空間が
あっという間に解けた

⏰:10/05/17 13:35 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#174 []
 
「香夜さん‥ちょいと手を‥」

「手?」

「此方に‥、」


浮かんだ笑みは怪しくて
何か企んでるに違いない

この手を差し出したら
食いちぎられるかもしれない‥
失礼かもしれないけど
それくらい不気味な笑みで

⏰:10/05/17 13:36 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#175 []
 
躊躇いながら右手を見つめれば
ぴくりと微かに飛び跳ねた


出し惜しみすれば
早くしろよと鋭い視線


「はい‥手」

「‥遅い」

⏰:10/05/17 13:37 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#176 []
 
「すみませ‥ぎゃああっ!!」


やっぱり食いちぎられるのかと
疑ってしまうほど‥
勢い良く手を捕られ
引きちぎれるほど強く引かれた


「ななな‥なになにな‥」

「もう少し‥
色っぽい声出せませんかい?」

⏰:10/05/17 13:37 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#177 []
 
「余計なお世話‥あぁです」

目の前に映るは純白の肌
すっと潔く伸びた鎖骨
見上げればもうすぐそこに
‥艶容な唇に甘い吐息


「‥あ、の」

「何、か」

⏰:10/05/17 13:38 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#178 []
 
「近い‥気が」


少しでも動いたら
触れてしまいそうで

思考が停止してしまわぬよう
忙しなく働く鼓動
乱れた重低音が漏れないように
そっと中心に意識を寄せた

⏰:10/05/17 13:38 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#179 []
 
「何か不都合でも、お有りで?」

「え‥あぁ」

「‥香夜さん」


ごくり息を飲む
魚のように泳ぐ目を
覚悟を決めてきつく閉じる

⏰:10/05/17 13:39 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#180 []
 
「ん‥」

唇に軽く触れたのは
冷たく美しい指先だった
緩く唇の輪郭をなぞる
気が散漫する


長い睫が柔らかく揺れた

⏰:10/05/17 13:39 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#181 []
 
「貴女が望むなら‥
独りにはしません、よ
貴女を守り、最期まで‥共に」

穏やかな表情が降り注いで
包み込むように
そっと唇が触れた


言葉になんかしてないのに
壱助さんはいつも
あたしが望む言葉をくれる

たっぷりの雫を目に浮かべ
こぼれぬように小さく頷いた

⏰:10/05/17 13:41 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#182 []
 
熱くなる頬をそのままに
甘い時に包まれて



惜しげもなく照らす月明かり

‥淡く揺れる二人影

⏰:10/05/17 13:42 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#183 []
第四二章 【溶け合った、二人影】
>>167-182
*。*。*。*。*
あまりにも重い話が
長引きそうだったんで
壱助さんに切り上げてもらった←

※これは番外編ではありませぬ。
めでたく結ばれた‥のか?
よくわからないもどかしさw
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/05/17 13:46 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#184 [笹]
【本編アンカー/35〜】
>>2-19
>>21-33
>>36-63
>>66-81
>>88-100
>>103-125
>>153-165
>>167-182(2章連続更新)

【番外編】
>>84-86
>>128-150

⏰:10/05/17 13:48 📱:D905i 🆔:u/aJ89Bs


#185 []
 
質問があったので
補足説明いたします ^^*

小説に組み込めれば
一番よかったんですが
どうも文章力に欠けるので
お許しくだされ(´・ω・`)

⏰:10/05/27 21:19 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#186 []
 
香夜ちゃんのお家は
借金取りに追われて?まして
お父さんは一応仕事あるんですが
なかなかいい稼ぎがなく
借金取りの怖い人たちが
毎日毎日家にやってくる。
(お父さんがいない時に)

それに耐えかねた義理の母が
人身売買と言うことで
香夜ちゃんを売るということで
交渉成立。

お父さんは家に帰ると
どこか清々してるような義母に
不信感を抱きそれ察する

⏰:10/05/27 21:20 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#187 []
 
当日
借金取りに香夜ちゃんを引き渡す
恐怖に脅えた香夜ちゃんは
唯一頼れるお父さんに
必死に助けを求める。

大切な一人娘を
連れて行かれてたまるかと
前日に死を覚悟してまで
助け出すと決意したお父さんは
香夜ちゃんを無理やり
輩の手から奪い取る。

話が違うと逆上した輩たちは
目の前に現れたお父さんを
刀で斬り倒した。


義理の母は自分の計画を狂わされ
愛する夫を亡くした悲しみを
香夜ちゃんに対する憎しみに変え
その日から虐待を始めた。

⏰:10/05/27 21:21 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#188 []
 
と言うことです ^^
自分の頭の中では
こういう設定だったんですが
なかなか組み込める機会がなく
言葉足らずになってしまいました

本当に申し訳ない(´・ω・`)

質問してくれた方
非常に助かりました !!
ありがとうございます **

たびたび
自分の中で思ってるだけで
文章にしてないことがあるので
わからなかった時は
気軽に聞いてください ^^*

これからものろま更新ですが
お付き合いのほど
よろしくお願いします( ・ω・ )

⏰:10/05/27 21:21 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#189 []


そして平凡‥平凡‥?
またいつものような生活に戻る


あんまり深入りはできなかった
だけどそれでよかったのかも
きっともう少し大人になって
心の準備ができたら
全部包み隠さず‥


心の準備と言えば‥あぁ

⏰:10/05/27 21:22 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#190 []



成り行きと言うか
そんな感じで呆気なく
‥壱助さんに唇が奪われた

体は冷たいのに
まるで別人かのように温かくて
その上、引き締まり
無駄な肉のない体とは違い
大福みたいにやわらかい

⏰:10/05/27 21:22 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#191 []
 
一瞬にして
こんな思いが頭を駆け巡り
現実だと思えば
頬は熱くなるばかりだった

「んん‥」

こういう時はどうしたらいいのか
経験不足なあたしには
何一つわからない

息はしていいのかとか
目は瞑るべきなのか‥とか

⏰:10/05/27 21:23 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#192 []
 
心の準備が間に合わなくて
驚きにかっと開いた瞼を
ゆっくりと閉じてみて

うっすら隙間から見える
柔らかな睫や通った鼻筋
毛穴などないんじゃないか?
‥そんな馬鹿なことは有り得ない

「ん‥んん」

⏰:10/05/27 21:23 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#193 []
 
遂に息苦しさも限界に達し
眉間にしわが寄った
壱助さんの着物の襟あたりを
ぐいっと掴み合図をしても
一向に離れる気配なし


まさか‥これは‥
一種のお仕置き?拷問か?
接吻にて窒息死‥

うぅん悪くないかも‥

⏰:10/05/27 21:24 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#194 []
 
若干遠のく意識を横目に
やっと離れた唇

余裕たっぷりなその唇の隙間から
小さく息が漏れていた


壱助さんの吸う分の空気まで
吸ってしまう勢いで
肺の隅から隅までに
部屋中の酸素を取り込んだ

⏰:10/05/27 21:24 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#195 []
 
「すぅ‥はぁ‥。」

「ほぉう‥」

「あの‥えと‥」

近すぎてぼやけていた顔が
少し離れてみてはっきり見えた

さっきまでの甘い時間に
恥ずかしさわ覚えて
胸のあたりから
どくどくと熱を帯びてきた

⏰:10/05/27 21:25 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#196 []
 
「物足りない‥と」

先ほどまで触れあっていた
艶容な唇がつり上がる

「我慢ならない‥か」


自分の手が
壱助さんの首に回ってることに
はっと気づく

⏰:10/05/27 21:25 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#197 []
 
離そうとしたときには
‥もう手遅れで


「欲しがり‥です、ね」

「ちが‥」


違うこともない。図星です

⏰:10/05/27 21:26 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#198 []
 
壱助さんはいい香りがする
お花みたいな匂い
金木犀に近い甘い匂い

ふわり香って
再び視界がぼやける


「ああ‥あの!!」

「何、か」

⏰:10/05/27 21:27 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#199 []
 
そんな接吻に
脳内を洗脳されてる場合じゃない

はっきりさせなきゃいけない
今が‥そのとき


魚のように泳ぐ目を
ぴたりと彼に向けて


「あの‥
壱助さんは‥何なんですか?」

⏰:10/05/27 21:27 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#200 []
 
「何、と申しますと?」


のどが乾く
ぴりぴりとした感覚が
のどの奥を突き抜ける

その感覚が声を押し付けて
中身のない弱々しい音となって
口から漏れた

⏰:10/05/27 21:28 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#201 []
 
「あたしと壱助さんの‥
関係って‥何なんでしょう?」


どんな答えが返ってきても
怖じ気付いてはいけない

呼吸をやめた
取り込んだ空気を
体いっぱいに溜めたまま
その返事を待つ

⏰:10/05/27 21:28 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#202 []
 
少しの間だったはず
それなのに長く長く感じて
周りの音が止まった


「主従関係‥」


そう呟いた声は部屋中に響く
ぼやっとした灰色が中を漂って

⏰:10/05/27 21:29 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#203 []
 
だけど何故か納得してて
体がそれを拒否しなかった


"あぁ"と声を漏らし
一度だけ頷いた

⏰:10/05/27 21:29 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#204 []
 



「と、歯止めをかけてたんですが」


奇跡と言うものは

この世にあるのだろうか

⏰:10/05/27 21:30 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#205 []
 
「それじゃあどうも‥」


あるとしたら、それは‥



「物足りないもんで、ね」


今この時を言うのだろうか

⏰:10/05/27 21:30 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#206 []
 



「香夜さん‥
お慕い申し上げておりました。」


_

⏰:10/05/27 21:31 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#207 []
 
「お慕い‥お‥え何‥?何て?」

「貴女と言う人は‥
本当に、聞き分けがない」

「いやだって‥
だって‥お慕いって‥」

奇跡と言うものは‥

⏰:10/05/27 21:31 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#208 []
 


「いけない子‥ですね」


どうやら、あるようです。


_

⏰:10/05/27 21:32 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#209 []
 

「んん‥」


柔らかく上げられた前髪
二度目の唇は優しく包み込んで


高鳴る鼓動をそのままに
溶け合って、尚‥。

⏰:10/05/27 21:32 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#210 []
第四三章 【打ち明けて、赤い糸】
>>189-209
*。*。*。*。*
ついにきた !!←
ついにくっつきました。
あー長かった(´^ω^`)w

このまま最終話にしようかと
実は考えてましたが
普通すぎるので止めました ^q^
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/05/27 21:37 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#211 []
【本編アンカー/35〜】
>>2-19
>>21-33
>>36-63
>>66-81
>>88-100
>>103-125
>>153-165
>>167-182
>>189-209

⏰:10/05/27 21:38 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#212 [笹]
【番外編】
>>84-86
>>128-150

【補足】
>>185-188

⏰:10/05/27 21:39 📱:D905i 🆔:LasqqonI


#213 []



あんな感じで
甘ったるい時間を過ごしたのも
夢なんじゃなかろうか


彼は相変わらず
"主従関係"に手を染める

⏰:10/06/01 21:05 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#214 []
 
「恋仲なのか主従関係なのか
これじゃあ‥
今までと変わらないじゃない」


口々にそうつぶやき
漏れる言葉は不満ばかりだったが
内心晴れやかで
そんなことはどうでもよかった

⏰:10/06/01 21:06 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#215 []
 
「呉服屋さんはーっと‥」

茶屋の右隣、金物屋の前
辺りを見渡して何度も確認する


「あ、ここかな」

入り口の前で立ち止まり
中を覗き込む
様子を確認して一歩踏み出した

⏰:10/06/01 21:07 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#216 []
 
『浴衣を頼んでおきましたので』

此方に少し視線をずらし
"取ってこい"とそれが訴える

言動に無駄のない様は
壱助さん独特だ


「浴衣かぁ‥。」

⏰:10/06/01 21:07 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#217 []
 
自分の浴衣がどうこうよりも
真っ先に頭に浮かんだのは
彼が緩く着崩している姿

思わず頬が緩む
もう恋仲なんだし
これくらいの事を
想像するのは許されるはず


「すみませーん
頼んでた浴衣、取りにきましたぁ」

⏰:10/06/01 21:07 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#218 []
 
初めて壱助さんに
呉服屋に連れて行かれた時
怪しげなおばあさんに
胸鷲掴みにされたっけ。

そんなことはもう
とうの昔のように思えた


「はぁーい」

パタパタと出てきたのは
綺麗な娘さんだった

⏰:10/06/01 21:08 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#219 []
 
「浴衣‥」

「浴衣って‥貴女の?」

「あぁ、えっと‥
壱助さんが頼んだ‥」

そう言い終わる前に
彼女はぐいっと迫ってきて
思わず仰け反ってしまった

⏰:10/06/01 21:08 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#220 []
 
「今壱助さん、て言った?」

「はぁ‥まぁ」

その形相は素晴らしく恐ろしい


壱助さん‥
あんたは何をやらかしたんだ

⏰:10/06/01 21:09 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#221 []
 
「あんたが代わり?
壱助さんは何処?いないの?」

息つく暇もなく
答える暇もなく
ぶつけられた質問から伺える


‥あの色男め。

⏰:10/06/01 21:09 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#222 []



『壱助さんの代わりです』
とはっきりそう言えば

狂ったように可笑しな声を上げ
胸倉を掴まれた


「どうしてあんたなのよ!!
今日を楽しみに
あたい、ずっと待ってたんだよう」

⏰:10/06/01 21:10 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#223 []
 
「あ‥あたしも別に
来たくて来た訳じゃ‥」

「つべこべ言わずに
壱助さんを出しなさいぃい!!」


出せと言われたって
当の本人は只今休憩中

大好きなお茶を啜って
さえずる小鳥にでも
目を細めて見入ってるのだろう

⏰:10/06/01 21:10 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#224 []
 
何て呑気な人なんだ‥。


もしやこれは作戦か?
この娘さんが厄介だから
あたしに事を済まさせようと?


「あの‥じゃあとりあえず浴衣!!
浴衣預かって宿戻って
また壱助さん連れてきますから!」

⏰:10/06/01 21:11 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#225 []
 
「浴衣だけ持って
逃げようってんじゃない?
彼を連れてきたら渡すわ」


交換条件ですか‥
承りましたー。


浴衣を緩く着崩している
壱助さんの姿が遠ざかる

色男も大変なんだなぁ‥

⏰:10/06/01 21:11 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#226 []



「回れ右」

「へ?」

襖を開けた瞬間吐き捨てられた
固まる体、間の抜けた声

「浴衣を取ってこいと
‥頼んだんですが、ね」

⏰:10/06/01 21:11 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#227 []
 
後ろを向いてるのに何故わかる‥
おそろしや、おそろしや


「だって呉服屋の娘さんが
壱助さん連れてこなきゃ浴衣‥」

「全く‥貴女と言う人は
"人並み以下"でありながら
更に無能‥と来ました、か」

"やれやれ"とため息をつかれ
つまらなそうな顔をしている

⏰:10/06/01 21:12 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#228 []
 
「な‥っ恋人に無能って‥
なら言わせてもらいますけど!!
恋人いるくせに
他の女性に色気振りまくのも
どうかと思 い ま す が !!」


こんなのは当てつけだ
しかし悔しいのが本音
自然と恋人となれば
独占欲も生まれてしまう

⏰:10/06/01 21:12 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#229 []
 
ただでさえ
あたしなんかとは本来
月とすっぽんのような差なのだ


「まぁ、まぁ
それは故意ではありませんぜ
"個性"の1つ‥ですよ」

にっこりヤらしい笑みを浮かべ
湯飲みを置いて横になった

⏰:10/06/01 21:12 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#230 []
 
「ちょ‥壱助さん!!
浴衣、これじゃあ‥」

だからと言って
またあたしだけで行ったら
絞め殺されるに違いない


無理矢理体を揺すっても
人形のようにぴくりともせず
手で"早く行け"と合図をするのみ

⏰:10/06/01 21:13 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#231 []
 
負けじと激しく揺すれば
あの鬼畜な唇は
"無能"と呟きやがった


恋人気分を味わう余裕もなく
喧嘩のようで実は
相手にされちゃいないだけで


‥先が思いやられます。

⏰:10/06/01 21:13 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#232 []
第四四章 【温度差、越えて】
>>213-231
*。*。*。*
6月と言うことで衣替え!!
浴衣ネタわっしょい。

やっとくっついたので
書きやすくなりましたw
温度差は相変わらず ^q^
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/06/01 21:16 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#233 []
【本編アンカー/35〜】
>>2-19
>>21-33
>>36-63
>>66-81
>>88-100
>>103-125
>>153-165
>>167-182
>>189-209
>>213-231

⏰:10/06/01 21:18 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#234 []
【番外編】
>>84-86
>>128-150

【補足】
>>185-188

⏰:10/06/01 21:18 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#235 [笹]
あげわすれ(´・ω・`)

⏰:10/06/01 21:21 📱:D905i 🆔:yJ1SMPPQ


#236 []



わーっと叫んでも
うーっと唸っても
それはただの体力の無駄遣い

この男‥実は頑固なのか?
ちっくしょう

湧き上がる苛立ち
自然と脳内再生される自らの声は
ぶっきらぼうになる

⏰:10/07/13 23:16 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#237 []
 
「‥もう知りませんからね!!
あたしは悪くないです
なぁんにも!悪くないんですよ!」

応答なし。

「‥あの娘さんに絞められても
知りませんからっ」

応答せよ。

⏰:10/07/13 23:16 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#238 []
 
「あ‥あたしが
どうなってもいいんですか?
きっとあたしあの娘さんに
し‥絞め殺されちゃいますよ!?」

なんと達者な口だろう
恋人に昇格したからって
つけあがるのもどうかと思う

「あんたはそれくらいじゃ‥
死にやぁ、しないでしょう。」

やっと口を利いたかと思えば
いちいち腹が立つ

⏰:10/07/13 23:16 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#239 []
 
きっと全身の毛穴も血管も
開ききってるに違いない
体が熱くてたまらない


「んぅーっ!!
壱助さんのばかぁ!あほぉ!」

横になった背中に
思いっきり訴えて
背を向けて寝転がった

⏰:10/07/13 23:17 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#240 []
 
たまにはこうして反抗して
わからせてやらないと
きっといつまでたっても
本質的主従関係は抜け出せない


いつまでたっても子供扱い
歯が立たないのは分かり切ってる

⏰:10/07/13 23:17 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#241 []



煮えくり返った腸。

あたしは何に怒ってるんだろう
‥なんて今更

少し怒鳴りすぎたかな
ほんとはただのヤキモチ

男として魅力があるのは認める
だって実際かなりの色男

⏰:10/07/13 23:18 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#242 []
 
だけど、他の女の人にも
そういう目で見られてるって
考えたら‥どうしょもなく‥

ものすごい美人な人が
壱助さんに惚れ込んだら
こんな滑稽なあたしには
当然勝ち目がないのだから。


ヤキモチは自信のなさの表れね

⏰:10/07/13 23:18 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#243 []
 

気づけば、もう日が暮れていた
照らす夕日が
何となく虚しくさせた。

胸の奥がぎゅっとする。
取られたくなんかないんだ
どっかに行っちゃいやなんだ
だけど‥素直に言えない

⏰:10/07/13 23:19 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#244 []
 
後ろに在るはずの横になった背中
ちらりと盗み見れば
いつの間にかいつものように
胡座をかいて外を眺めてた


嫌なんだ。
この背中が離れていくのが‥
素っ気なくたって
あたしには貴方が必要、壱助さん

⏰:10/07/13 23:19 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#245 []
 
「壱す‥」

語りかけた背中の隣には
例の物であろう浴衣が
少し乱れて置かれていた。

「‥取りに?」

「流石に此では‥
夏が越せないもんで、ね」

そう言って背中越しに
胸元をぱたぱたさせていた

⏰:10/07/13 23:20 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#246 []
 
「壱助さん‥?」

「事実を述べたまで、なのですが
何と‥強引な‥」

何かをあざ笑うかのように
くすっと息を抜きながら
"いや、いや"と頭を掻く

嫌な予感がした。
まさか"喰らわれた"のでは‥?

⏰:10/07/13 23:20 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#247 []
 
もう居ても立ってもいられずに
膝を擦って彼との距離を縮めた。

夕日の逆光に照らされた横顔は
絵になりそうな程美しく
影に染まったその姿は
すぐさまあたしを虜にした。

⏰:10/07/13 23:20 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#248 []
 
「なぁに‥
喰われちゃいませんぜ?」

余程不安げな顔をしていたのか
此方を覗き込んで微笑んだ。



「‥あ、」

⏰:10/07/13 23:21 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#249 []
 
その瞬間、目に飛び込んで来たは
彼の頬に綺麗な紅葉。

不謹慎だと叱られてもいいや。
可笑しくて、嬉しくて、可愛くて

「浴衣に紅葉じゃあ‥
季節外れじゃないですか?」

思わず吹き出してしまった。
夕日の橙がそれを柔らかく
包み込んでいたのが幸いだろう

⏰:10/07/13 23:22 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#250 []
 
「綺麗な紅葉ーっ!
今年は二人で紅葉狩りにでも‥」

さっきまでの不安もヤキモチも
どこかにやってしまうほど
それは鮮やかだったから。

「馬鹿にして、いるんですかい?」

目を細めて睨みをきかせたって
今はちっとも怖くない

⏰:10/07/13 23:22 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#251 []
 
ねぇ、それって‥

「‥恋人が居るって?」

そう言ってくれたと思うと
思わず頬が緩んでしまうの


「いえ‥妻がいると、ね」

「‥ばーか。良くできました。」

そっと紅葉に手をやれば
まだじんじんと熱を帯びていた

⏰:10/07/13 23:22 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#252 []
 
あぁもう‥愛おしいよ、壱助さん


「子供扱い‥ですかい?」

「たまには、いいでしょ?」

「えぇ‥。香夜さん」

甘えたい盛りなのか、
娘さんの一発が効いたのか
少し寂しそうな顔で
困ったように笑って見せて

⏰:10/07/13 23:23 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#253 []
 
「‥ん?」

黙って此方を見つめて
胡座をかいた膝の上を叩いた。

その中に黙って収まり
身を寄せれば満足そうに笑って

⏰:10/07/13 23:23 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#254 []
 
「褒美を‥頂けませんか、ね」

あの唇は甘えたって艶容だ。
緩く開けられた唇は誘い上手



―‥そっと触れる位のご褒美を

_

⏰:10/07/13 23:24 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#255 []
第四五章 【少年と、紅葉】
>>236-254
*。*。*。*。
かなり遅れました(´;ω;`)
ご無沙汰してますっ笹です!

結局甘いんです←
壱助さんがちょっと可愛い編
香夜ちゃんの敬語が徐々に消えつつあるんだよ編←
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/07/13 23:28 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#256 [笹]
【本編/44まで】
>>233
【45〜】
>>236-254

【番外編】
>>84-86
>>128-150

【補足】
>>185-188

⏰:10/07/13 23:30 📱:D905i 🆔:FnqGJxKs


#257 []



「うわ‥雪だぁ!
壱助さん!雪だよっ雪!」

もう新年を迎えて睦月

次の年になったからといって
何かが変わるわけでもないけど
気持ちの切り替えのいい機会

‥今年の抱負は何にしよう

⏰:11/01/26 13:12 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#258 []
 
「朝から‥騒がしい、ですね」

新年を迎えようが
壱助さんに変化はない
相変わらず冷静沈着です


この世が破滅の危機に直面しても
たぶん彼は変わらないだろう

⏰:11/01/26 13:12 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#259 []
 
「積もるかなー積もるかなー?」


真っ白な雪は
ひらひらと舞う花びらのようで
春を先取りした気分になる

灰色の厚くて遠くまで続く雲が
もう地面にくっつきそうだ

⏰:11/01/26 13:13 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#260 []
 
「雲って不思議ですよねぇ‥
ふわふわしてて綿飴みたいなのに
高い山に登ったって
絶対掴めないんですよ?」

「えぇ」

「それなのに、雨とか雪とか‥
一体どこに隠してるのかなー?」

囲炉裏から離れれば
空気はだんだん冷たくなって
鼻の先の感覚がなくなる

⏰:11/01/26 13:14 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#261 []
 
指先も冷たくて
‥去年のことを思い出す

残念ながら、
いや‥嬉しいことに
今年は囲炉裏の前を陣取る彼は
ぴしっと着物を着用


今年の抱負は、
"脱露出狂"なのかしら‥。

⏰:11/01/26 13:15 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#262 []
 
「そもそも雪って
何で降るんですかねー?
‥雨が凍ったの?
でもそしたら氷にならない?
あんなふわふわしないし‥」


脳を無理やりかき混ぜるように
あっちこっちに意識を飛ばして

無から有を作り出すのは
根本的に不可能だと落胆する

⏰:11/01/26 13:15 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#263 []
 
「餓鬼を喜ばせる為です、よ」

背中でぼそっと呟いた

低くて鋭いくせに、
どこか柔らかいその声は
何を言ったって不快感を与えない

「餓鬼?」

「が き ん ち ょ」

壱助さんの口から放たれた
"ちょ"が妙に新鮮味を帯びて
何だか可笑しかった

⏰:11/01/26 13:17 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#264 []
 
それを聞いてか何か、
色気を放ついつもの背中が
とても愛おしく見えた


「壱助さん、私もう‥」

性格は伴わないかもしれないけど
私も、もう十九だ

そもそも"がきんちょ"なんて
馬鹿にしてるようにしか思えない

⏰:11/01/26 13:18 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#265 []
 
互いに背を向けて暖と冷
囲炉裏でぱちぱち音が鳴る
すきま風がひゅうと鳴る


火の紅と雪の白
紅白めでたい色だけど
この2つは一緒にはなれない
‥神様が決めた定め

この世のことは
先に神様が全部決めている

神様はいいなぁ‥
好き放題できてさ

⏰:11/01/26 13:19 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#266 []
 
「‥香夜さん」

「っ‥何ですか?」


餓鬼じゃないなんて
言ったらたぶん笑われる

いや、壱助さんの場合は
笑いもせず
寝ぼけたことを言うあたしを
押し倒すに決まってるんだ

⏰:11/01/26 13:19 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#267 []
 
とかなんとか言いながらも
今でも、あたしが
生娘であるということは
大切にされてるんだなーと思う


「今年の抱負を
‥お聞かせください。」

背中を向けたままだった

壱助さんの手は
何やら棒みたいなものを握り
何かをかき回してるようだった

⏰:11/01/26 13:20 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#268 []
 
時折硝子に当たる音がする
瓶‥かな?


「抱負‥?えーっと
大人な女性になりたいです!」

「大人‥ほぉう」

尚もかき回す
その腕を上げたり下げたり
様子が把握できない
此方から見れば、変な光景

⏰:11/01/26 13:21 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#269 []
 
「内面的にはもちろんですけど
見た目も、女性らしく‥はい」


何をしているのか気になって
背後から、四つん這いになって
そっと覗き込む

何してるのか問ったって
大した答えが返ってくるとは
思えなかったのです。

⏰:11/01/26 13:22 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#270 []
 
今までの経験上
ちゃんとした返答があるのは
極々稀なことだから‥はは


「女性らしく、か」

何か引っかかるものがあるのか
壱助さんは
"なるほど"やら"はい、はい"やら
ぶつぶつ呟いている

⏰:11/01/26 13:22 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#271 []
 
その内
彼の横顔が見えるようになる

気のせいかな?
何だか楽しそうに見えた


仏頂面にも一応
喜怒哀楽があることを発見
宝物を発見したかのように
何故かわくわくした

⏰:11/01/26 13:23 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#272 []
 
「もう、
十九になったんですから‥」

呟くように、しかし手は止めず


少し開いた唇が色っぽく
着崩した襟元から覗く胸板は
男らしさを漂わせ

壱助さんは
人類最強な気がするもんです

⏰:11/01/26 13:23 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#273 []
 
「ちょいと、手をかけるだけで
‥十分に魅力はあります、よ」


急に此方を向くから
どきっとしてしまう

何をするにも急だ
振り向く時に随時報告されても
おかしな話だけれど

⏰:11/01/26 13:24 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#274 []
 
目を合わせて、あまりに彼が
真っ直ぐ見つめるものだから
急に恥ずかしくなって

あたしの視線は
彼と自分の手元に行ったり来たり

壱助さんは、微笑む
恐ろしいくらい美しかった

⏰:11/01/26 13:25 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#275 []
 
瓶の中には黄金の液体
綺麗に伸びたあの指がそこに沈む

包み込むように
まとわり付くように
待ちわびて居たかのように
たっぷり黄金が絡みつく


そして、もう片方の手が
あたしを引き寄せた

⏰:11/01/26 13:25 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#276 []
 
「冬は‥乾燥しますから、ね」

「ん‥」

黄金を纏った人差し指が
あたしの唇を優しく撫でた


甘ったるい香りと
ぬめっと貼り付くような感覚
隙間から流れ込んだものは
春が溶け込んだ甘みをおびて

⏰:11/01/26 13:26 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#277 []
 
「はちみつ‥?」

囲炉裏の熱に温められて
丁度人肌と同じくらいの心地よさ

どうやら‥
これを溶かしていたらしい

「保湿効果があるようで、ね」

十分にあたしの唇に塗りたくって
指に絡み付いた余りを
舌で丁寧に舐めとっていた

官能的で、胸騒ぎ

⏰:11/01/26 13:27 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#278 []
 
「保湿‥
確かに最近、乾燥してたかも」

「まぁ、関係あるのは
私だけですから‥
別に、乾燥していようがいまいが
どうってこと、ないのですが‥」


そう言い終わる前に
あっさり抱き寄せられてしまう

⏰:11/01/26 13:28 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#279 []
 
この人はいつも完璧で
何でもあっさりやってのけて
あたしの心を何度も奪う
‥時々、憎らしい


「ちょいと、
塗りすぎちまったようで‥」

柔らかい吐息が頬をかすめて
口元をゆっくり垂れる甘い蜜に
引き寄せられるようにして
彼の舌が唇の横を這う

⏰:11/01/26 13:28 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#280 []
 
「ん‥」

一度顔を離したかと思えば
今度は唇に吸い付いた

蜂蜜のねっとりした感触が
何故かあたしを高揚させる
体全体が熱くなって
どうしようもなく愛おしくなる


「ふ‥、」

息をつく隙を与えないほど
長い、甘い口づけ

頭がぼうっとする

⏰:11/01/26 13:29 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#281 []
 
自然と舌が侵入してきて
初めてなくせに
すんなりと受け入れてしまう

歯並びを確認するように
丁寧にゆっくり伸びてきて
上顎を優しく撫でられる


脳内まで犯されて、
思考が止まりそう‥
崩した足の先から
じわじわと快楽が込み上げる

⏰:11/01/26 13:30 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#282 []
 
羞恥に目を潤ませてみても
柔らかい唇を何度も重ねられ
少し斜めに傾いた
壱助さんの首筋が艶容で‥


やっと唇が離れた頃には
あたしはすでに彼の下
見下げる視線が柔らかい

つり上がった口元が
意地悪そうな笑みを作る
まるであたしをからかうように

⏰:11/01/26 13:31 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#283 []
 
「壱助さんって‥
甘いもの‥苦手なんじゃ?」


あっという間に
黄金に濡らされたはずの唇は
彼に染まって

もどかしい余韻を残したまま

「其れと、此とでは‥訳が違う」

「はちみつ、
‥わざわざ買ってくれたの?」

⏰:11/01/26 13:32 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#284 []
 
まだ整わない呼吸をよそに
目を細めて含み笑い

「食後の甘味として‥
今後、如何なものかなと‥ね」

「毎回、こうするんですか?」


優しく髪を撫でられる
これも神様が決めたこと?

⏰:11/01/26 13:32 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#285 []
 
「気に食わない、と」

「いいえ、
‥保湿は大事でしょう?
大人の女性にとっては」


時折あたしは素直じゃない
それは壱助さんも同じよね?

「まぁ、ね
今宵、十九になったのですから‥
後は老いて行く一方、ですよ」

「まだまだ若いですぅ!」

⏰:11/01/26 13:33 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#286 []
 
毒を吐く前にさらりと言ったけど


「壱助さん‥もしかして
今日があたしの‥」

「なぁに‥
それくらいの日付くらい
誰でも覚えられるもんです、ぜ」

本当は泣きたいくらい嬉しいよ
誰かに誕生日を
祝ってもらうのは約10年ぶりだ

⏰:11/01/26 13:34 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#287 []
 
これを祝ってもらったと
言うかどうかは別として


「‥ありがと、壱助さん」

大人ぶってみても
やっぱり頬が緩んでしまうの

「では、記念に"これ"‥
全身に塗りたくりましょう、か」

今度は手を丸々突っ込んだ
透き通った黄金が輝く
その奥で、いつもの怪しい笑み

⏰:11/01/26 13:34 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#288 []
 
「記念って‥何記念?!
ちょ‥壱助さんっ‥本気?!」


「大人記念、ですよ」


_

⏰:11/01/26 13:35 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#289 []
 
ねぇ、神様

何でも全部が既に決まってて
時々あたしは悲しくなります。
悔しくもなります。


だけど
この世に生を受けたことを
悲しいことだとは思いません


愛する喜びも、愛される喜びも
あたしは教えられたからです

⏰:11/01/26 13:35 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#290 []
 
「壱助さん‥?」

「何、か」


あたしの呼びかけに
答えてくれる人がいるからです

⏰:11/01/26 13:36 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#291 []
 



「‥大好き」


運命があってもなくても
ずっと一緒にいたいと思える人

_

⏰:11/01/26 13:36 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#292 []
第四六章【蜂蜜、甘味記念】
>>257-291
***************

久々の更新なのに
会話が少ないww(´;ω;`)
だらだら書き連ねて
申し訳ないです(´;ω;`)
とりあえず
香夜ちゃん19才おめでとう!

サブタイトル
プーさんの蜂蜜プレイ←
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:11/01/26 13:44 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#293 [笹]
【本編/44まで】
>>233
【45〜】
>>236-254
>>257-291

【番外編】
>>84-86
>>128-150

【補足】
>>185-188

⏰:11/01/26 13:45 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


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