浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#236 [笹]
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わーっと叫んでも
うーっと唸っても
それはただの体力の無駄遣い
この男‥実は頑固なのか?
ちっくしょう
湧き上がる苛立ち
自然と脳内再生される自らの声は
ぶっきらぼうになる
:10/07/13 23:16 :D905i :FnqGJxKs
#237 [笹]
「‥もう知りませんからね!!
あたしは悪くないです
なぁんにも!悪くないんですよ!」
応答なし。
「‥あの娘さんに絞められても
知りませんからっ」
応答せよ。
:10/07/13 23:16 :D905i :FnqGJxKs
#238 [笹]
「あ‥あたしが
どうなってもいいんですか?
きっとあたしあの娘さんに
し‥絞め殺されちゃいますよ!?」
なんと達者な口だろう
恋人に昇格したからって
つけあがるのもどうかと思う
「あんたはそれくらいじゃ‥
死にやぁ、しないでしょう。」
やっと口を利いたかと思えば
いちいち腹が立つ
:10/07/13 23:16 :D905i :FnqGJxKs
#239 [笹]
きっと全身の毛穴も血管も
開ききってるに違いない
体が熱くてたまらない
「んぅーっ!!
壱助さんのばかぁ!あほぉ!」
横になった背中に
思いっきり訴えて
背を向けて寝転がった
:10/07/13 23:17 :D905i :FnqGJxKs
#240 [笹]
たまにはこうして反抗して
わからせてやらないと
きっといつまでたっても
本質的主従関係は抜け出せない
いつまでたっても子供扱い
歯が立たないのは分かり切ってる
:10/07/13 23:17 :D905i :FnqGJxKs
#241 [笹]
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:
煮えくり返った腸。
あたしは何に怒ってるんだろう
‥なんて今更
少し怒鳴りすぎたかな
ほんとはただのヤキモチ
男として魅力があるのは認める
だって実際かなりの色男
:10/07/13 23:18 :D905i :FnqGJxKs
#242 [笹]
だけど、他の女の人にも
そういう目で見られてるって
考えたら‥どうしょもなく‥
ものすごい美人な人が
壱助さんに惚れ込んだら
こんな滑稽なあたしには
当然勝ち目がないのだから。
ヤキモチは自信のなさの表れね
:10/07/13 23:18 :D905i :FnqGJxKs
#243 [笹]
気づけば、もう日が暮れていた
照らす夕日が
何となく虚しくさせた。
胸の奥がぎゅっとする。
取られたくなんかないんだ
どっかに行っちゃいやなんだ
だけど‥素直に言えない
:10/07/13 23:19 :D905i :FnqGJxKs
#244 [笹]
後ろに在るはずの横になった背中
ちらりと盗み見れば
いつの間にかいつものように
胡座をかいて外を眺めてた
嫌なんだ。
この背中が離れていくのが‥
素っ気なくたって
あたしには貴方が必要、壱助さん
:10/07/13 23:19 :D905i :FnqGJxKs
#245 [笹]
「壱す‥」
語りかけた背中の隣には
例の物であろう浴衣が
少し乱れて置かれていた。
「‥取りに?」
「流石に此では‥
夏が越せないもんで、ね」
そう言って背中越しに
胸元をぱたぱたさせていた
:10/07/13 23:20 :D905i :FnqGJxKs
#246 [笹]
「壱助さん‥?」
「事実を述べたまで、なのですが
何と‥強引な‥」
何かをあざ笑うかのように
くすっと息を抜きながら
"いや、いや"と頭を掻く
嫌な予感がした。
まさか"喰らわれた"のでは‥?
:10/07/13 23:20 :D905i :FnqGJxKs
#247 [笹]
もう居ても立ってもいられずに
膝を擦って彼との距離を縮めた。
夕日の逆光に照らされた横顔は
絵になりそうな程美しく
影に染まったその姿は
すぐさまあたしを虜にした。
:10/07/13 23:20 :D905i :FnqGJxKs
#248 [笹]
「なぁに‥
喰われちゃいませんぜ?」
余程不安げな顔をしていたのか
此方を覗き込んで微笑んだ。
「‥あ、」
:10/07/13 23:21 :D905i :FnqGJxKs
#249 [笹]
その瞬間、目に飛び込んで来たは
彼の頬に綺麗な紅葉。
不謹慎だと叱られてもいいや。
可笑しくて、嬉しくて、可愛くて
「浴衣に紅葉じゃあ‥
季節外れじゃないですか?」
思わず吹き出してしまった。
夕日の橙がそれを柔らかく
包み込んでいたのが幸いだろう
:10/07/13 23:22 :D905i :FnqGJxKs
#250 [笹]
「綺麗な紅葉ーっ!
今年は二人で紅葉狩りにでも‥」
さっきまでの不安もヤキモチも
どこかにやってしまうほど
それは鮮やかだったから。
「馬鹿にして、いるんですかい?」
目を細めて睨みをきかせたって
今はちっとも怖くない
:10/07/13 23:22 :D905i :FnqGJxKs
#251 [笹]
ねぇ、それって‥
「‥恋人が居るって?」
そう言ってくれたと思うと
思わず頬が緩んでしまうの
「いえ‥妻がいると、ね」
「‥ばーか。良くできました。」
そっと紅葉に手をやれば
まだじんじんと熱を帯びていた
:10/07/13 23:22 :D905i :FnqGJxKs
#252 [笹]
あぁもう‥愛おしいよ、壱助さん
「子供扱い‥ですかい?」
「たまには、いいでしょ?」
「えぇ‥。香夜さん」
甘えたい盛りなのか、
娘さんの一発が効いたのか
少し寂しそうな顔で
困ったように笑って見せて
:10/07/13 23:23 :D905i :FnqGJxKs
#253 [笹]
「‥ん?」
黙って此方を見つめて
胡座をかいた膝の上を叩いた。
その中に黙って収まり
身を寄せれば満足そうに笑って
:10/07/13 23:23 :D905i :FnqGJxKs
#254 [笹]
「褒美を‥頂けませんか、ね」
あの唇は甘えたって艶容だ。
緩く開けられた唇は誘い上手
―‥そっと触れる位のご褒美を
_
:10/07/13 23:24 :D905i :FnqGJxKs
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