浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#274 []
 
目を合わせて、あまりに彼が
真っ直ぐ見つめるものだから
急に恥ずかしくなって

あたしの視線は
彼と自分の手元に行ったり来たり

壱助さんは、微笑む
恐ろしいくらい美しかった

⏰:11/01/26 13:25 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#275 []
 
瓶の中には黄金の液体
綺麗に伸びたあの指がそこに沈む

包み込むように
まとわり付くように
待ちわびて居たかのように
たっぷり黄金が絡みつく


そして、もう片方の手が
あたしを引き寄せた

⏰:11/01/26 13:25 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#276 []
 
「冬は‥乾燥しますから、ね」

「ん‥」

黄金を纏った人差し指が
あたしの唇を優しく撫でた


甘ったるい香りと
ぬめっと貼り付くような感覚
隙間から流れ込んだものは
春が溶け込んだ甘みをおびて

⏰:11/01/26 13:26 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#277 []
 
「はちみつ‥?」

囲炉裏の熱に温められて
丁度人肌と同じくらいの心地よさ

どうやら‥
これを溶かしていたらしい

「保湿効果があるようで、ね」

十分にあたしの唇に塗りたくって
指に絡み付いた余りを
舌で丁寧に舐めとっていた

官能的で、胸騒ぎ

⏰:11/01/26 13:27 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#278 []
 
「保湿‥
確かに最近、乾燥してたかも」

「まぁ、関係あるのは
私だけですから‥
別に、乾燥していようがいまいが
どうってこと、ないのですが‥」


そう言い終わる前に
あっさり抱き寄せられてしまう

⏰:11/01/26 13:28 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#279 []
 
この人はいつも完璧で
何でもあっさりやってのけて
あたしの心を何度も奪う
‥時々、憎らしい


「ちょいと、
塗りすぎちまったようで‥」

柔らかい吐息が頬をかすめて
口元をゆっくり垂れる甘い蜜に
引き寄せられるようにして
彼の舌が唇の横を這う

⏰:11/01/26 13:28 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#280 []
 
「ん‥」

一度顔を離したかと思えば
今度は唇に吸い付いた

蜂蜜のねっとりした感触が
何故かあたしを高揚させる
体全体が熱くなって
どうしようもなく愛おしくなる


「ふ‥、」

息をつく隙を与えないほど
長い、甘い口づけ

頭がぼうっとする

⏰:11/01/26 13:29 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#281 []
 
自然と舌が侵入してきて
初めてなくせに
すんなりと受け入れてしまう

歯並びを確認するように
丁寧にゆっくり伸びてきて
上顎を優しく撫でられる


脳内まで犯されて、
思考が止まりそう‥
崩した足の先から
じわじわと快楽が込み上げる

⏰:11/01/26 13:30 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#282 []
 
羞恥に目を潤ませてみても
柔らかい唇を何度も重ねられ
少し斜めに傾いた
壱助さんの首筋が艶容で‥


やっと唇が離れた頃には
あたしはすでに彼の下
見下げる視線が柔らかい

つり上がった口元が
意地悪そうな笑みを作る
まるであたしをからかうように

⏰:11/01/26 13:31 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


#283 []
 
「壱助さんって‥
甘いもの‥苦手なんじゃ?」


あっという間に
黄金に濡らされたはずの唇は
彼に染まって

もどかしい余韻を残したまま

「其れと、此とでは‥訳が違う」

「はちみつ、
‥わざわざ買ってくれたの?」

⏰:11/01/26 13:32 📱:D905i 🆔:MmQRKSWw


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