記憶を売る本屋 2
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#145 [我輩は匿名である]
「いいのいいの。はい!」
奏子は笑って、飛鳥の手にクッキーを置いた。
「…ありがとう」
飛鳥は小さく笑って、それを受け取る。
「あっ、じゃあ用も済んだし、私教室にかーえろ♪じゃあまた後でねー」
奏子はそのまま、教室を出ていった。
「何だったんだ…?」
「おいしそうなクッキーだね。あのおばあちゃんが焼いてくれたのかな?」
飛鳥は嬉しそうに、クッキーの入った袋を見つめている。
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#146 [我輩は匿名である]
「いや、安斎が焼いたらしいぞ」
「そうなの?へぇ、すごいな」
「お前、料理出来ないんだっけ?」
「やれば出来ると思うよ。施設にいた時は、よくご飯の手伝いしてたから」
「へぇ、意外」
「そう?…まぁ、今は家で作る事ないし、作ろうとも思わないしな…」
飛鳥はふぅっと息をつく。
「じゃあ、なんか作ってきた時は、俺が毒味してやるよ」
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#147 [我輩は匿名である]
「はあ?私の腕前なめないでよね」
飛鳥は腕を組んで言い返す。
そんな2人の会話を、廊下で窓にもたれ掛かって、奏子が聞いていた。
「(やっぱり、あの2人…なんかあるんだ…)」
「安斎?」
すぐ後ろで声がして、奏子は素早く振り返る。
:10/05/05 18:08
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#148 [我輩は匿名である]
そこには、登校してきたばかりの薫が立っていた。
「月城くん…」
「何してるんだ?朝っぱらから」
薫は少し首を傾ける。
「ううん、何にもない。じゃあね」
奏子は無理に笑顔を作って、小走りで4組に戻っていった。
「…隠さなくても、知ってるのにね」
薫の後ろにいた響子が、くすっと笑う。
「…お前の言ってた事、本当だったんだな」
「予想だけどね」
2人は小さく笑い合った。
:10/05/05 18:09
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#149 [我輩は匿名である]
直人は、薫が掃除を終えるのを、階段に座って、1人ぼけーっと待っていた。
奏子と飛鳥はバイトが、響子も今日は用事がある為、それぞれ先に帰っている。
「(…そういえば、神崎とここで喋った事もあったなぁ…)」
直人はあの時の事を思い出す。
親と話していないとか、そういう話をしたのがここだった。
「(懐かしいな…もう半年近く経つんだなぁ…)」
そんな事を考えていると、あの時のように、目の前を良介が通りかかった。
:10/05/06 20:17
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#150 [我輩は匿名である]
「あっ!そこのアメリカかぶれ!」
直人は思わず呼び止める。
“アメリカ”という言葉に足を止め、良介がこっちを見る。
「…誰?君」
ちょっと近寄りながら、良介が首をひねる。
「月城薫の友達だよ!」
「俺そんなに存在感ないか」と思いながら、直人は怒鳴る。
「あぁ、あの負け犬くんの」
「負け犬言うな!」
どこまでもマイペースで、思った事を口にする良介に、直人は何度も声を荒げる。
:10/05/06 20:17
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#151 [我輩は匿名である]
「お前、あんまり薫の邪魔すんなよな!」
「邪魔してるのはあっちだろ!」
良介もムスッとして言い返す。
直人は腰に右手をあてて、じーっと良介を見る。
「……お前さぁ、香月のどこが好きなわけ?」
直人はそもそも、そこから聞きたかった。
「僕?響子ちゃんの全てに決まってるじゃないか!」
「はぁ!?全てが好きとか、適当に言ってんだろ!」
「適当?失礼な!君は人を好きになった事無いのか?」
「気持ち悪いから『君』っていうな!俺は水無月直人!み・な・づ・き・な・お・と!」
:10/05/06 20:17
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#152 [我輩は匿名である]
直人は鳥肌が立ったのか、上腕をさすりながら名乗る。
「水無月?6月の事か!」
「ま、まぁそうだよ、6月の水無月」
「ふむ。じゃあ水無月、君は人を好きになった事は…」
「だから!『君』ゆーな!気持ち悪いから!」
「はっはっは!水無月は面白いな。天然か」
「天然はお前だろアホぉ!!」
直人は勢いで立ち上がる。
ここまでくれば、日本語の意味がわかっているのか不安になってくる。
:10/05/06 20:18
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#153 [我輩は匿名である]
「俺だってなぁ!好きな奴ぐらいいるんだよ!」
直人はそう言い切った。
「じゃあ水無月は、その子のどこが好きなんだ?」
「俺は…」
勢いで話を進めたため、少し悩む。
しかし、自然と頭に飛鳥が思い浮かんだ。
「…俺は、特に、頑張り屋な所、かな」
「頑張り屋?」
「そう、頑張り屋なんだ。…ある人を見返す為に、今一生懸命頑張ってるんだ。
俺はそこが好きなんだ、多分。だから、心の底から応援してるんだ」
:10/05/06 20:18
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#154 [我輩は匿名である]
言ってしまった。直人は言ってから、とても恥ずかしくなった。
本当なのかわからなくて、何だか飛鳥に申し訳なく思う。
「…………それって…」
良介は何故か、ものすごく気持ち悪そうな顔で直人を見る。
「な、何だよその目は」
「だってぇ…水無月の好きな人って…」
直人は「バレてるのかな」と、少しドキドキする。
「月城だろ…?」
:10/05/06 20:19
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