記憶を売る本屋 2
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#255 [我輩は匿名である]
「黒歴史っていうな!」

もっと良い言い方があるだろうと、飛鳥は思わず言い返す。

「…………昨日さ」

しばらくして、飛鳥はやっと話を始めた。

「弟に嫌味言われて、私…何も言い返せなかったんだ。

『出来損ない』とか、『いじめられて当然』とか言われたけど、

私には…あいつに勝てるものなんか何もないし…」

「はあぁぁ!!?」

飛鳥の話に、直人はキレて声を上げる。

明らかにキレた彼の声に、薫達も驚いて振り返る。

⏰:10/05/28 22:06 📱:N08A3 🆔:TdbZtgtI


#256 [我輩は匿名である]
「出来損ない!?いじめられて当然!?ふざけんじゃねーぞクソ餓鬼が!!

…でも、俺は何も言い返さなかったお前にも腹が立つ!!」

直人は怒鳴りながら飛鳥を指差す。

「出来損ないだから何だ!?そんな事こっちだってわかってんだよ!!」

「な…っ」

出来損ないだと認められてしまい、飛鳥もカチンときたらしい。

「あんたどっちの味方なんだよ!?」

「てめぇに決まってんだろ!」

直人はきっぱりと言い張った。

その答えに、飛鳥はハッとして口を閉じる。

⏰:10/05/28 22:06 📱:N08A3 🆔:TdbZtgtI


#257 [我輩は匿名である]
「友達いないわ、人の話は聞かないわ、道路に飛び出すわ、

たった1人の頼れる男が死んだら、後を追って自殺するわ、

ついでに妊婦も道連れにするわ…。

そんな奴が出来損ないじゃなかったら、誰が出来損ないだっつーんだよ!?

俺がいつもお前の世話焼いたりしてんのはなぁ!

お前にもうあんな事してほしくないからだよ!

晶みたいに誰も信じれないまま死んだりしないで、

いろんな奴といっぱい笑ったりして、楽しく生きていてほしいからだよ!!

つーか!こーゆー話、あの時もしただろ!!何回も言わすなアホ!!」

息もつかずに怒鳴り続けて、直人は息を切らす。

⏰:10/05/28 22:07 📱:N08A3 🆔:TdbZtgtI


#258 [我輩は匿名である]
意外と迫力があった直人の説教に、飛鳥はただただぽかんとする。

同じように、薫と響子もじっと直人の話を聞いていた。

「お…お前…」

直人は若干汗をかきながら話を続ける。

「餓鬼に嫌味言われたぐらいで…何しょげてんだよ…。

今までも散々無視されたり…嫌味言われたらしてたんだろ…。

お前だって、この間まで家族見返すって…張り切ってたじゃねぇか…」

直人の言葉に、飛鳥は少しうつむく。

確かに直人の言う通りだった。

⏰:10/05/28 22:07 📱:N08A3 🆔:TdbZtgtI


#259 [我輩は匿名である]
「…お前…他に何かあったんじゃねぇのか…?」

一息ついて、直人はまた弁当の中身を口に運びだした。

飛鳥は「うーん…」と、曖昧な返事をする。

奏子とちょっとややこしい事になっているが、直人に言えるはずがない。

「…ちょっとさ、いろいろあって」

「やっぱりまだあったのかよ」

直人は不満そうにため息をつく。

「何だよ?言ってみ」

「……やだ」

「何で」

「……あんたに言えるような話じゃないから」

⏰:10/05/28 22:07 📱:N08A3 🆔:TdbZtgtI


#260 [我輩は匿名である]
飛鳥は戸惑い気味に答える。

しかし、そういう言い方をされると気になってしまう直人。

「何だよ!気になるじゃねぇか!」と問い詰めてきた。

「言えないっつったら言えないんだよ!」

「何なんだよもう!」

「まぁまぁ落ち着いて」

ポンと肩を叩かれ、直人は「はぁん?」と不機嫌そうに振り向く。

いつの間にか、響子と薫が真後ろにいた。

⏰:10/05/28 22:08 📱:N08A3 🆔:TdbZtgtI


#261 [我輩は匿名である]
「うわっ、何だよお前ら!」

「そんなに問いつめたら、飛鳥ちゃん可哀相でしょ」

響子は怒ったように直人に言う。

「そんな事言われたって…」

「女の子にはねぇ、男よりもいろいろ大変な悩みがあるの。

それがわかってないと、そのうち嫌われちゃうよ?」

響子に諭され、直人は不服そうに黙る。

「薫はわかんのかよ?そーゆー女心」

「…なんとなーく」

いくら薫でも、そこまではさすがに自信はない。

⏰:10/05/28 22:08 📱:N08A3 🆔:TdbZtgtI


#262 [我輩は匿名である]
直人は「ふぅん」とだけ返事を返す。

「まぁ、あれだ。ここから先はガールズトークってやつだよ」

薫はその場に腰を下ろしながら言った。

まぁ直人にはわからないだろうけど、と思いながら。

「なんか、女ってめんどくせぇな」

直人は頭の後ろに手を組んでため息をつく。

その横で、響子は飛鳥に耳打ちする。

「何かあったら、いつでも言いなよ。大体は奏子ちゃんの事でしょ?」

「…うん」

「悩みはね、人に話したら大体すっきりするものよ。ね?薫」

⏰:10/05/28 22:09 📱:N08A3 🆔:TdbZtgtI


#263 [我輩は匿名である]
「ん?あぁ…」

「どう考えても、悩みはため込むタイプだろ、お前」

「……まぁ、どっちかっていうとな」

「だめよ、ため込むだけため込んでると、そのうち…」

「大丈夫だよ、ハゲるまでは悩まないから」

「まだその話引っ張ってんのかよ」

「え、あんたハゲるの?」

「あーあ、クールな性格が台無しだな」

「誰がハゲるって断定したんだ」

好き放題言い出した2人を薫が睨む。

隣では、そのやり取りを見ながら響子が笑っている。

⏰:10/05/28 22:09 📱:N08A3 🆔:TdbZtgtI


#264 [我輩は匿名である]
「(…………ふぅん…)」

屋上のドアの隙間から、奏子が4人のやりとりを見つめていた。

最初は盗み見するつもりではなかったのだが、

急に直人が飛鳥に向かって怒鳴りだしたため、出ていくタイミングを失ってしまったのだ。

今の4人の会話は遠くて聞き取れないが、怒鳴っていた直人の言葉だけは聞こえていた。

「(……飛鳥の前世…自殺だったって事か…。

しかも、なんか水無月の前世の人と仲良かったみたいだし…)」

奏子は暗い顔で考え込む。

直人が『もうあんな事してほしくない』と言っている所を見ると、

かなり深い関係があったようだ。

⏰:10/05/28 22:09 📱:N08A3 🆔:TdbZtgtI


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