記憶を売る本屋 2
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#291 [我輩は匿名である]
「あーあ…」
クラスメイトに追い掛けられる直人の情けない姿に、奏子がため息をつく。
「……バレーとドッヂが消えたか…」
薫は腕を組んで考える。
「ハンドも負けたらしいよ」
飛鳥が薫に言う。
薫は「はぁ…?」と、自分のクラスの弱さに呆れ返る。
「か…薫、助けてくれよー!」
走るのに疲れた直人は、薫の後ろに座り込む。
「お前が余計な事するからだろ」
薫は自業自得だ、と突き放す。
:10/05/28 22:22
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#292 [我輩は匿名である]
「響子ちゃん!見たかい!?僕の華麗なチョキを!」
同時に、良介は嬉しそうに響子の手を握る。
「おい…」
薫は目を光らせ、良介の手を振りほどく。
「てめぇ誰に断って響子の手ぇ握ってんだ…?」
「ふん、何故わざわざ君に断らないといけないんだ?」
良介も負けじと言い返す。
睨み合う2人が怖くなって、直人は四つんばいで移動し、飛鳥の隣に座った。
「はぁ、疲れた」
「お疲れ、なんかダサかったみたいだね」
:10/05/28 22:22
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#293 [我輩は匿名である]
飛鳥はしれっと直人をからかう。
「っせぇな!お前はどうだったんだよ!?」
「負けた」
「人の事言えねぇじゃねーか!!」
汗だくのまま、直人は飛鳥に言い返す。
「あいつの事はほっときなよ、月城が自分で何とかするよ」
飛鳥はめんどくさそうに忠告する。
「いいじゃん、別に」
そう食い付いたのは、直人ではなく奏子だった。
「それだけ友達思いって事じゃん?ね、水無月」
:10/05/28 22:22
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#294 [我輩は匿名である]
「(……最近やたら水無月の肩持つな…)」
直人の事を好きだとはいえ、見ていて少し腹が立つ。
飛鳥もムッとし、目を逸らす。
「なんだよ、お前。いじけてんのか?」
相変わらず鈍感な直人は、笑って飛鳥の肩を叩く。
「い、いじけるわけないだろ!?何で私が!」
「お前、前からいじけやすい性格だったし」
直人は言い切ってからハッとする。
うっかり晶の事を差す話をしてしまった。
直人は「ごめん」と言いたそうに、飛鳥に視線を送る。
:10/05/28 22:23
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#295 [我輩は匿名である]
「ばか!」
飛鳥もそれに気付き、直人の肩を拳でたたく。
「痛っ!」
「お前のそういう鈍感すぎる所、いい加減どうにかなんないわけ!?」
「だから、ごめんって!」
ギャーギャー言い合う直人達を、奏子はじっと見つめる。
「(『前から』って…どういう意味だろ…?)」
そんな事を考えながら。
:10/05/28 22:23
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#296 [我輩は匿名である]
その後、野球の2回戦の時間になり、直人達は運動場に移動する。
8組は既に野球しか生き残っていないため、クラスメイトは全員観戦にまわってきている。
「(要するに、8組は全員俺に賭けてるって事だな)」
バッターボックスに入り、薫はふと考える。
野球の中でも、変に注目を浴びてしまった。
「(……いいじゃないか、こういうプレッシャーも)」
薫はニヤッと、不敵な笑みを浮かべる。
「(…怖い…)」
薫の様子を見て、ピッチャーは少し怯える。
そして、丸腰のままボールを投げた。
:10/05/28 22:24
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#297 [我輩は匿名である]
しかし、そのボールは案の定、自分の頭を高々と越えて飛んでいった。
「よく打つねぇ…」
ボールを追い掛けていく外野の生徒達を見ながら、飛鳥が声を漏らす。
「あんたとは大違いだね」
「うっせぇな!」
未だにからかってくる飛鳥に、直人は大声を上げる。
しかし、少しして真面目な顔で飛鳥に言った。
「…悪かったな、さっき口滑らせて」
自分から謝るのは照れ臭くて、直人は少し下を向く。
奏子もハンドボール2回戦でコートに入っているため、この場にいない。
:10/05/28 22:24
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#298 [我輩は匿名である]
「え?何か言った?」
飛鳥は耳をたてて直人に聞き直す。
また言わなければいけないのかと、直人はちょっと顔を赤らめる。
「1回で聞けよ!!」
「だって周りがうるさくて聞こえないもん!!」
薫のホームランへの歓声にかき消されて聞こえなかったらしい。
「だから!悪かったなって!さっき安斎の前であの話して!」
直人はちょっと顔を赤くしながら、再度飛鳥に謝る。
今度はちゃんと聞き取って、飛鳥はフッと小さく笑った。
:10/05/28 22:25
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#299 [我輩は匿名である]
「いいよ!そんなの!」
飛鳥も大声で返事する。
「ありがとな!」
「どういたしまして!」
2人は言いながら笑い合う。
:10/05/28 22:25
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#300 [我輩は匿名である]
少しずつ、歓声がおさまってきた。
「…お前、晶の時から運動嫌いだっけ?」
奏子がいないのを確認して、直人は飛鳥に尋ねる。
「うん、あんまり好きじゃなかった」
飛鳥は頷く。
「そのわりには走るの速かったじゃん。あの…お前に付きまとってた奴から逃げる時」
「…あぁ、美代ね。ウザかったな…あいつ」
「つーか、あいつが元凶だしな」
美代の事を思い出し、2人はどんよりとした表情でうつむく。
:10/05/28 22:26
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