記憶を売る本屋 2
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#355 [我輩は匿名である]
「違ぇよ。『ふうん、意外だな』って…」

「…そんなのんきそうな幽霊、初めて聞くんだけど」

「何で」とでも言いたそうに、飛鳥が言う。

「俺だってこんなの初めてだっつの」

「…まぁ、怖くなさそうな幽霊で良かったね」

「そっちかよ」

俺が気になってるのはそっちじゃない。直人は心の中で呟く。

「まぁ、そのうち思い出すんじゃない?空耳だったかもしれないし」

「んー…」

⏰:10/06/10 18:59 📱:N08A3 🆔:BePAOuBw


#356 [我輩は匿名である]
軽くあしらわれてしまい、直人はちょっと不満そうに首をかしげる。

「…もう忘れちゃったのか」

「ん?」

直人は思わず顔を上げる。

「神崎、お前今何か言ったか?」

「しつこいな、言ってないって」

飛鳥はちょっとうっとうしそうに答える。

「…本当に、今『もう忘れちゃったのか』って言わなかったか?」

「言ってないって。何なんだよ」

⏰:10/06/10 19:00 📱:N08A3 🆔:BePAOuBw


#357 [我輩は匿名である]
しつこい直人に、飛鳥はちょっとムッとしている。

「…またさっきの声がした」

直人はぽかんとした表情で言う。

さすがに、飛鳥の顔から血の気が引く。

「………こ、怖い事言うな!もう先帰る!」

「あ?ちょっ…」

⏰:10/06/10 19:00 📱:N08A3 🆔:BePAOuBw


#358 [我輩は匿名である]
直人が止める間もなく、飛鳥は怖がって、走って逃げていった。

「……何なんだよ…」

直人はその場でしばらく、腕を組んで立ち尽くす。

しかし、それ以降は何も聞こえなかったため、とぼとぼと1人で帰っていった。

⏰:10/06/10 19:00 📱:N08A3 🆔:BePAOuBw


#359 [我輩は匿名である]
「幽霊?」

次の日、直人は薫に幽霊の話をしてみた。

「そう。昨日帰りに、誰もいないのに声が聞こえてきたんだ」

「ふうん…お前、霊感あったんだな」

薫は呑気に言いながら、手首に貼られた湿布を気にしている。

「そーゆーのはどうでもいいんだよ!」

直人はバンッ!と机をたたいて声を荒げる。

幽霊ごときにキレる直人に、薫はきょとんとする。

「俺が気にしてんのは、その声なんだよ!」

⏰:10/06/10 19:01 📱:N08A3 🆔:BePAOuBw


#360 [我輩は匿名である]
「声?」

「俺が知ってる声なんだよ!誰だかわかんねぇけど!」

「(そんな事言われても…)」

薫は少し呆れながら首をかしげる。

「神崎の声じゃないのか?一緒に帰ってただろ」

「いーや違う」

直人は首を振って断言する。

「だって、男の声だぜ!?クラスの奴の声でもなかったし…」

「……何か言われたのか?」

⏰:10/06/10 19:01 📱:N08A3 🆔:BePAOuBw


#361 [我輩は匿名である]
「『ふうん、意外だな』って」

「…何だそれ…」

いきなりそんな事を言う幽霊がいるのかと、薫はますます呆れる。

「聞き間違えじゃないのか?」

「違ぇよ!その後も『もう忘れちゃったのか』って言われたし!」

直人は必死に説得するが、薫は「うさんくさい」という表情で聞いている。

「本当だって!」

「…まずさぁ」

薫がため息をつきながら口を開く。

⏰:10/06/10 19:01 📱:N08A3 🆔:BePAOuBw


#362 [我輩は匿名である]
「お前の他に、誰か同じ道歩いてたとか…」

「誰もいなかった」

「じゃあ何か考えてたのか?」

「……考えてた」

「何を?」

「石川晶も運動嫌いだったのか、へぇーって」

「(…何だそれ…)」

全く話がつかめなくて、薫は眉間にしわを寄せて腕を組む。

「なんかな、神崎が運動嫌いって話してたんだよ」

⏰:10/06/10 19:02 📱:N08A3 🆔:BePAOuBw


#363 [我輩は匿名である]
「はぁ…」

「で、あいつが『石川晶が運動嫌いだったんだから仕方ない』って…」

「…ふうん…。確かに球技大会の時テンション低かったな」

薫は結構どうでも良さそうに返事をする。

「だろ?…って、俺そんな話したいんじゃねぇんだよ!」

「いつか言うと思ってた」

薫は呆れたように笑って言った。

⏰:10/06/10 19:06 📱:N08A3 🆔:BePAOuBw


#364 [我輩は匿名である]
「(…でもそれって、普通に考えて…)」

薫は考えながら、悩んでいる直人を見つめる。

「(……まぁ…俺が言うより、自分で気付いた方が良いか…)」

「なぁ、俺、何か恨まれてんのかなぁ?」

直人は特に気にしてなさそうに呟く。

「さぁ?俺にはさっぱりわからないな」

「ちぇっ。いいよ、自分で考えるから」

直人は口を尖らせて、自分の席に戻る。

⏰:10/06/10 19:06 📱:N08A3 🆔:BePAOuBw


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