記憶を売る本屋 2
最新 最初 全 
#391 [我輩は匿名である]
「あたし、カラオケがいい!」
奏子が真っ先に手を挙げる。
「(カラオケ…)」
直人と響子は、その一言にぎょっとする。
「…俺はいい」
更に暗い顔をして、薫は断った。
「なんでー?いいじゃん、このメンバーで行った事無いし」
「あんまり好きじゃないんだよ、カラオケは。
もっと他の事にしないか?」
:10/06/14 19:54
:N08A3
:hqt4bZk6
#392 [我輩は匿名である]
薫はきっぱりと言い張って、他に何か無いか考える。
しかし答えが出ないまま、予鈴のチャイムが鳴った。
「…あ、俺トイレ行ってくる」
「じゃあ、私達も行こ」
「うん」
薫はトイレへ、響子と奏子は自分達の教室へと歩きだす。
2人きりになった直人と飛鳥は、お互い顔を見合う。
:10/06/14 19:55
:N08A3
:hqt4bZk6
#393 [我輩は匿名である]
「……月城、もしかして……」
「…誰にも言うなよ。あいつそれバラすとキレるから」
直人の言葉に、飛鳥は「やっぱりな」と確信した。
「…音痴なの?」
「あぁ、信じられねぇぐらいな」
直人は苦笑する。
「音符は読めるけど、歌うとなると、さっぱりだ。
中学の通知表で2取った事があるぐらい」
:10/06/14 19:55
:N08A3
:hqt4bZk6
#394 [我輩は匿名である]
「そんなに?」
「おう。ちなみに絵もかなり下手だぞ」
「…あぁ、なんか下手だったな」
本の代償の話をした時の事を思い出し、飛鳥は頷く。
そして、少し残念そうに、こう呟いた。
「……カラオケ行きたかったな」
直人はじっと、飛鳥を見る。
「じゃあ、今度行くか」
ニッと笑って、飛鳥に言ってみる。
:10/06/14 19:56
:N08A3
:hqt4bZk6
#395 [我輩は匿名である]
「へ?」
思いも寄らぬ誘いに、飛鳥はきょとんとする。
「行きてぇんだろ?カラオケ。
俺カラオケ好きだし、お前が良いんなら行くぜ」
直人は笑顔で飛鳥を誘う。
行きたい。飛鳥は思ったが、口には出せなかった。
奏子が直人を好きだという事を考えると、行っていいのかわからないのだ。
:10/06/14 19:56
:N08A3
:hqt4bZk6
#396 [我輩は匿名である]
「…そう、だね。考えとこ」
そんな答えしか返せなかった。
「あ、お前バイトとかあるもんな。行けそうだったら言えよな」
「うん、ありがと」
直人は特に変に思う事なく、笑顔で言った。
:10/06/14 19:57
:N08A3
:hqt4bZk6
#397 [我輩は匿名である]
昼休み。
「カラオケ?」
奏子が席を立っている間に、飛鳥は響子に相談していた。
「いいじゃない、行ったら。私だったら行くわよ」
「…そう?」
響子に当たり前のように言われて、飛鳥は更に悩む。
「…まぁ、相手が友達だから悩むのもわかるけどね。
でも、飛鳥ちゃんも水無月くんが好きなんでしょ?」
「……………うん」
:10/06/14 19:57
:N08A3
:hqt4bZk6
#398 [我輩は匿名である]
飛鳥は大きく頷く。
「じゃあなおさらよ。気遣ってたら、取られちゃうわよ?」
響子は真剣な顔で、急かすように言う。
一息つき、飛鳥は考える。
「(…そう…なんだよなぁ…。
でも、奏子とややこしい事になったらめんどくさいし…)」
悩んでる飛鳥を、響子はじっと見つめる。
「……いいなぁ。私にもあったな、そういう時」
懐かしそうに、響子が笑った。
:10/06/14 19:58
:N08A3
:hqt4bZk6
#399 [我輩は匿名である]
「そうなの?」
「そりゃあるわよー。友達と取り合いしたって事はなかったけど」
「やっぱり、2人で出かけるって時、緊張した?」
「したした。でも1番は…やっぱり優也と初めてご飯行った時かな。
あっちはもっと緊張してあらしいけど」
響子が嬉しそうに話すのを、飛鳥も笑顔で聞き入る。
「そうなの?」
「うん。優也が誘ってきたからね。
『良かったら今度、2人でご飯行きませんか?』って」
:10/06/14 19:58
:N08A3
:hqt4bZk6
#400 [我輩は匿名である]
「へぇ。いいね、そういうの」
「飛鳥ちゃんだって、水無月くんにカラオケ誘われてるじゃない」
「…そっか」
飛鳥は思い出したように頷く。
「……ちょっと悪い気もするけど、大丈夫だよね?」
「大丈夫よ。行ったら感想聞かせてね」
響子は早くも楽しそうに笑った。
:10/06/14 19:59
:N08A3
:hqt4bZk6
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194