記憶を売る本屋 2
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#415 [我輩は匿名である]
「何言われたんだよ?」
「『デート?いいねぇ暇人は。どうせ相手もろくでなしなんだろ』って」
「はぁん!?今度俺んとこ連れてこい!
吊し上げにしてヒーヒー言わせてやる!」
「…まぁ先にあたしの話聞けよ」
気合いを入れる直人を、飛鳥はちょっと呆れ気味に落ち着かせる。
「…で、今日はちゃんと言い返してきた」
「おお!何て?」
直人は目を輝かせる。
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#416 [我輩は匿名である]
「…『あたしはろくでなしだけど、相手はお前よりいい男だよ』って」
飛鳥は少し恥ずかしそうに答えた。
それを聞いて、何故か直人は不満そうに腕を組む。
「…言い返したのは偉いけどよぉ、お前別にろくでなしじゃないだろ」
「……んー…」
「まぁ、自殺するような奴はなぁ…」
「うっさいな!どっちなんだよ!」
からかうように笑う直人を、飛鳥は声を荒げて怒鳴りつける。
その反応を見て、直人は笑い声を上げる。
:10/06/22 19:40
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#417 [我輩は匿名である]
「まっ、そのバカ弟よりは立派な人間だって」
そう言いながら、飛鳥の肩を軽くたたく。
「よくやったじゃん、お前にしては」
「何様だよお前」
「睨むなよー、冗談だろー?さて、今日は何歌おうかなー」
「あんたいつも何歌うの?」
「俺?俺は…」
そんな会話をしながら、2人は近くのカラオケ店に入っていった。
:10/06/22 19:41
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#418 [我輩は匿名である]
4時間後。
「あーすっきりした!」
カラオケ店から出て来て、飛鳥は大きく伸びをする。
直人も「カラオケ久しぶりだったなぁ」と、満足そうに笑っている。
「つーか、お前意外と歌上手いんだな」
直人は意外そうに言いながら歩きだす。
「そう?まぁ、歌うのは嫌いじゃないしな」
パーカーのポケットに手を入れて、飛鳥は返事をする。
:10/06/22 19:41
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#419 [我輩は匿名である]
「どうする?時間余ってるけど、どっか行くか?」
今はまだ3時過ぎ。
時計を見て、直人は飛鳥に尋ねる。
「……でも、あんたお金ないんじゃないの?」
「まぁ、そんなにねぇけど。でもお前、こんな時間から帰りたくねぇだろ」
「うん」
「即答だな」
2人はどうしようかと、それぞれ頭を抱える。
「…どっかに座ってくっちゃべるか」
:10/06/22 19:41
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#420 [我輩は匿名である]
「そうだね。どこ行く?その辺の公園でも行く?」
「だな」
2人は話しながら適当に歩いて、そこそこ大きな公園を見つけた。
ベンチもある。
そこに腰を下ろして、2人は一息つく。
「…なんか、懐かしい感じしね?2人ででかけるの」
小さく笑って直人が言う。
同じように、「そうだね」と飛鳥が返事を返す。
:10/06/22 19:42
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#421 [我輩は匿名である]
「路地の細いとこに、暗ーい女がうずくまっててさ。
何かのホラー物かと思ったぐらい」
「そんなに怖かったか?」
「あぁ怖かったね。要はどう思ったか知らねぇけどよ」
「あんたがそう思ったんなら、要もそう思ったんじゃない?」
「かもな」
2人は適当に言って笑う。
「でも、喋ってみたら普通の女だったしな。暗かったけど」
:10/06/22 19:42
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#422 [我輩は匿名である]
「暗い暗いって言うなよ。仕方ないじゃん、生い立ちが生い立ちなんだから」
「今も似たようなモンだけどな」
「ははっ、まーね」
飛鳥は苦笑する。
「で、勝手に勘違いして勝手に怒って、挙げ句の果てに勝手に死ぬ、と」
直人は更に呆れたように笑う。
「…ごめんってば」
「人の話はきちんと聞くように!」
「はい…」
まるで説教されているような気がして、飛鳥はうなだれる。
:10/06/22 19:43
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#423 [我輩は匿名である]
「まっ、あんな目に遭ったら2度とやらないだろうけどな」
「うん、無理だね」
話の最中に、直人はふと、ある事を考えた。
「………今思ったんだけどさぁ」
「ん?」
「薫、何でお前の事許せたんだろうな?
前は『石川晶』の名前聞いただけで、すげぇ顔してたのに」
「……何でだろうね」
「だってあいつ、お前の事相当恨んでたぞ?
俺が『何であんな女かばったんだ』とか言われるぐらい」
:10/06/22 19:43
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#424 [我輩は匿名である]
「…まぁ、そう言われても仕方ない事したけどね、あたし」
飛鳥は暗い顔でため息をつく。
しかし、直人には不思議で仕方がなかった。
『初めて人を殺したいと思った』。
そこまで言っていた薫が何故…?
「…そんなに気になる?」
やけに考え込む直人に、飛鳥も首をかしげる。
「うん。だって、『殺してやりたい』とまで言ってたんだぞ?」
「そんなに…!?」
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