記憶を売る本屋 2
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#425 [我輩は匿名である]
ぎょっとしたように、飛鳥が声を漏らす。
「……そのうち聞いてみるか」
途中で面倒くさくなって、直人は考えるのをやめた。
:10/06/22 19:44
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#426 [我輩は匿名である]
「もー、おばあちゃんも人使い荒いなぁ…」
2人が喋っている頃、奏子は買い物から帰っていた。
あの祖母に買い物を頼まれていたらしい。
「お腹減ったなぁー。お菓子買ってくれば良かっ…」
ぶつぶつ独り言を言っていた奏子の目に、ある光景が映った。
奏子は思わず足を止める。
:10/06/22 19:44
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#427 [我輩は匿名である]
近所の公園のベンチに並ぶ、2人の男女。
その横顔は、直人と飛鳥だった。
「(…何で…?)」
一瞬、自分の目を疑った。
しかし、どう見てもあの2人だ。
奏子は逃げるように、早足でその場を離れた。
:10/06/22 19:45
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#428 [我輩は匿名である]
月曜日。
「どうだった?カラオケ」
昼食の時間、薫が直人に尋ねた。
「楽しかったぜ。お前も来れば良かったのに」
直人は笑って言う。
しかし、薫の表情が一気に豹変した。
「『お前も来れば』……?……直人…お前…本気で言ってるのか…?」
「じょ、冗談に決まってんだろ!悪かったよ!」
「そうか、ならいい」
今の目は、かなり危ない目だった。
:10/06/22 19:45
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#429 [我輩は匿名である]
直人は内心ちょっとびびりながら、慌てて弁明した。
「(…危ねぇ…。マジで殺されるかと思った…。……“殺される”…)」
飛鳥と話した、あの内容を思い出す。
「(…いきなり『何で神崎許せたの?』とか聞くの、変だしな…)」
「……何だよ?」
じっと見られて、薫は困ったように声をかける。
が、直人は全く聞いていない。
:10/06/22 19:46
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#430 [我輩は匿名である]
「…………まぁいいや」
そう言って、止まっていた手を動かし始めた。
「(一体何なんだ…?)」
全く読み取れない直人の行動に、薫は呆れて首をかしげた。
:10/06/22 19:46
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#431 [我輩は匿名である]
一方、女子達は。
飛鳥と響子は、じっと奏子を見つめる。
奏子は一言も話さず、ただ黙々と弁当を食べている。
「(……何かあったのかな?)」
「(さぁ…?)」
2人は目で会話する。
「飛鳥さぁ」
不意に奏子が口を開き、飛鳥はビクッとする。
:10/06/22 19:50
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#432 [我輩は匿名である]
「……な、何?」
恐る恐る尋ねる。
「水無月の事好きだよね」
「…え」
目も合わさずに言われて、飛鳥は困ったように響子を見る。
響子も不安そうに飛鳥を見ている。
「この間、公園で2人で喋ってるの見たからさ」
「…えっ」
:10/06/22 19:50
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#433 [我輩は匿名である]
「(…反応薄いなぁ…)」
「え」しか言っていない飛鳥に、響子は少し呆れる。
なぜ奏子に見られたのか、飛鳥は全く理解出来ない。
1番起きてほしくない事が、早くも起きてしまった。
飛鳥の顔に、焦りの表情が浮かぶ。
「好きならそう言ってくれたらいいじゃん。
陰でコソコソされるの、あたし1番腹立つの」
「…奏子ちゃん、飛鳥ちゃんは別にコソコソしてたわけじゃ…」
:10/06/22 19:51
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#434 [我輩は匿名である]
「響子は黙ってて」
止めようとする響子を、奏子はきっぱり黙らせる。
「あたしがあいつの事好きだって知ってるのに、よく出来るよね。
お守り買ってあげたり、2人で会ったり…」
「あれは…」
「悪いけど」
奏子はさっさと弁当を食べ終え、片付ける。
「あたし、そういうの見て黙ってられるようないい子じゃないから」
奏子はきつく吐き捨てて、早足で教室を出て行った。
:10/06/22 19:51
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