記憶を売る本屋 2
最新 最初 🆕
#592 [我輩は匿名である]
「8組の月城です」

「月城くん、ね。わかりました。じゃあ起きたら渡しとくわね」

「お願いします」

そう言って、ぺこっと頭を下げる。

「(…何で女って人の恋愛事情で嬉しそうにするんだ…?)」

女が考えることはよくわからないな、と首を傾げながら、薫はその場を後にした。

⏰:10/12/31 10:50 📱:N08A3 🆔:4teKfjfM


#593 [我輩は匿名である]
その夜。

「……月城、寝た?」

「寝た」

良介に聞かれ、薫は布団の中で寝返りをうちながら答える。

直人はすでに、1人で寝息をたてている。

「……そろそろ教えてくれないか?前言ってた都市伝説の事」

薫は背中を向けたまま、しばらく黙り込む。

「………お前、俺が書いてた手紙読んだだろ」

「えっ!?」

良介は動揺し、声を裏返して聞き返す。

⏰:10/12/31 16:14 📱:N08A3 🆔:4teKfjfM


#594 [我輩は匿名である]
「な、何の事だ!?」

「あの紙、部屋を出る時に裏返して置いてたのに、帰ってきたら表向いてたし。

あのトイレに行くタイミングも変だったしな」

なんという勘の良さ。良介は白状するしかなかった。

「……悪かったよ」

「悪いにも程があるだろ。これ響子に言ったら確実に嫌われるぞ、お前」

「…………その方がいいかもな」

やけに諦めが良い良介に、薫はちらっと良介に目をやる。

⏰:10/12/31 16:15 📱:N08A3 🆔:4teKfjfM


#595 [我輩は匿名である]
「……やっぱり無理だと思ったんだ、今日のお前見てて。

僕にはあそこまで出来なかったし、そんな勇気すら無かった。

あんな恥ずかしい手紙も書けないし」

「負け惜しみか?カッコ悪い」

褒めてられているのか貶されているのかわからず、薫は良介に言い返す。

「……あーぁ、負けたよ、僕の負けだ」

良介は吹っ切れたように、仰向けになってため息を吐く。

「あんな手紙読まされたら、割って入る間なんか無いって誰でも思うよな!」

「お前が勝手に読んだだけだろ。俺のせいみたいに言うなよ」

⏰:10/12/31 16:15 📱:N08A3 🆔:4teKfjfM


#596 [我輩は匿名である]
薫は呆れたように顔を引きつらせる。

「どうせなら今から教えてやろうか?俺と今日子の出会いから新婚生活まで全部」

「聞きたくないね!そんなノロケ話なんか!」

「知りたかったんだろ?俺たちの前世の事」

「いいって言ってるだろ!今さらそんな話聞いてどうしろって言うんだよ!だから嫌いなんだよお前!」

「俺だって嫌いだよ、お前みたいにめんどくさい奴」

2人はいつものように言い合って、しばらく黙る。

⏰:10/12/31 16:16 📱:N08A3 🆔:4teKfjfM


#597 [我輩は匿名である]
「………おい月城」

「…まだ何かあんのかよ」

いい加減眠そうな顔で、薫は良介に背中を向けたまま聞き返す。

「響子ちゃん泣かせたら、許さないからな」

良介は真面目に薫に言った。

「………お前なんかに言われなくてもわかってるよ」

2人はそれっきり口を開く事はなく、静かに眠りについた。

⏰:10/12/31 16:17 📱:N08A3 🆔:4teKfjfM


#598 [我輩は匿名である]
2日目。

この日はスキーの予定だが、あいにく外は吹雪。午前中は各自部屋で過ごす事になった。

「暇だなー」

「だったら僕とBattleでもしようじゃないか!」

退屈そうに寝転んでいた直人と薫に、良介が威勢よく声を上げる。

「またかよ…。今度は何だ」

薫が良介に目をやると、彼の手には携帯ゲーム機。

「これぐらい持ってるだろ?」

「上等だ!かかってきやがれ!」

あくまでも上から目線の良介に、直人も薫も言い返す。

⏰:10/12/31 22:26 📱:N08A3 🆔:4teKfjfM


#599 [我輩は匿名である]
が。

「………無い…」

キャリーバッグの中に手を突っ込んだまま、直人は茫然とする。

「そういえば家のベッドの上にあったよ、あれ」

要がのんきに直人に言う。

「何で家出る前に教えてくんねーんだよ!」

「だって、持ってきていいなんて思わないじゃないか」

「見つからなかったらいいんだよ!」

⏰:10/12/31 22:27 📱:N08A3 🆔:4teKfjfM


#600 [我輩は匿名である]
「……誰と喋ってるんだ?あいつ」

「…ほっといてやって」

気味が悪そうに直人を見ている良介に、薫はため息を吐く。

「薫…」

直人は泣きそうな顔で振り向く。

「何だよ」

「DS忘れた…」

「知るかよ…」

そんな顔をされても、どうしようもない。薫は苦笑いして答える。

⏰:10/12/31 22:27 📱:N08A3 🆔:4teKfjfM


#601 [我輩は匿名である]
「…俺ちょっと出てくる!」

直人は悔しそうに吐き捨てて、さっさと部屋を出た。

「………相変わらずおかしな奴だな」

「お前よりはマシだと思う」

「何!?そういう事は僕に負けてから言えよな!」

「で、何するんだ?」

⏰:10/12/31 22:27 📱:N08A3 🆔:4teKfjfM


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194