記憶を売る本屋 2
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#612 [我輩は匿名である]
「………えぇー!?」

まさかの言葉に、2人は思わず声を上げる。

「何で!?誰に!?」

「『何で!?』は無いだろ…」

直人に食い付く良介に、薫は呆れながら呟く。

「…安斎」

「安斎?」

「…誰?」

「絶対言うと思った」

⏰:11/01/02 21:35 📱:N08A3 🆔:HkuEKuJ6


#613 [我輩は匿名である]
奏子だとわかっていない良介に、直人と薫は声を合わせる。

「響子の友達だよ、5組の」

「あのデカい女?」

「それは8組の神崎飛鳥」

「……あぁ!あのショートカットの方か!で、何で?」

「そんな事俺に聞くなよ!」

「そうじゃなくて!何で悩んでるんだよ?嫌いなのか?」

「…嫌いとかじゃねぇよ。そうじゃないけど…」

嫌ではないようだが、どこか煮え切らない様子。

⏰:11/01/02 21:35 📱:N08A3 🆔:HkuEKuJ6


#614 [我輩は匿名である]
「………神崎か?」

事情を知っている薫が尋ねる。

「え、あのデカい女が好きなのか?」

「……わかんね」

直人は大きくため息を吐く。

奏子に告白されてから、要もなぜか黙ったままだ。

「嬉しいよ?嬉しいんだけど、何か…モヤモヤするっていうか…。

あいつに『好きな奴いるのか』って聞かれて…パッと浮かんだのが…」

「…神崎だったんだな」

⏰:11/01/02 21:35 📱:N08A3 🆔:HkuEKuJ6


#615 [我輩は匿名である]
「………うん」

「じゃあキッパリ断ればいいじゃないか」

「そう…そうなんだけど…」

直人は浮かない顔で考え込む。

確かに、奏子よりも飛鳥に気があるのだろう。何となく自分でもそう思う。

でも、1つだけ気掛かりな事があった。

⏰:11/01/02 21:36 📱:N08A3 🆔:HkuEKuJ6


#616 [我輩は匿名である]
“飛鳥が気になるのは、石川晶だからじゃないのか。

もし、前世の記憶が無かったら、自分は誰を好きになるんだろう?”

そう思うと、どうすればいいのかわからなくなるのだ。

当の本人がこれなら、誰が何を言ってもおそらく無意味だろう。

薫と良介は顔を見合わせ、それ以上は何も言わなかった。

⏰:11/01/02 21:37 📱:N08A3 🆔:HkuEKuJ6


#617 [我輩は匿名である]
3日目。今日は天気が良く、午前中からスキー日和だ。

せっかくのスキー実習。悩み通して終わるのはもったいない。

そう思い、直人は今日1日をスキーに捧げる事にした。

頂上近くで写真を撮ったり、雪合戦をしたりと盛り沢山だ。

スキーの時は男女別れて、それぞれ10人程のグループになるため、

雪合戦になるとほとんどの生徒が本気になる。

「はぁ…もういいよ、スキーばっかり…」

「…午後もスキーだぞ」

午前だけですでにスタミナを使い果たしたらしく良介はクタクタだ。

⏰:11/01/03 10:31 📱:N08A3 🆔:LGFlTx3A


#618 [我輩は匿名である]
「何でそんなに疲れないんだ…?」

「お前が下手なだけだろ!」
「何ぃ!?」

「飯ぐらい黙って食えよ…」
どこでも言い合う良介達に、薫はもう疲れたように息を吐いた。

⏰:11/01/03 10:32 📱:N08A3 🆔:LGFlTx3A


#619 [我輩は匿名である]
午後になると、チラチラと雪が降ってきた。

最初は問題なかったのだが、次第に風も吹いてきた。

女子グループでは。

「寒いー!」

「それよりもう疲れた…」

同じグループの子にくっつかれながら、飛鳥は良介のように疲れ果てた顔。

「飛鳥ちゃんでっかいから風避けになるね♪」

「ならないから!」

⏰:11/01/03 10:32 📱:N08A3 🆔:LGFlTx3A


#620 [我輩は匿名である]
「何p?」

「170p」

「いいなぁ、モデルみたいで」

「別にいい事ないよ」

後ろの女子がまだ滑って来ず前が進まないため、斜面の途中で雑談する。

どうやら飛鳥以上の運動音痴で、怖くてなかなか滑って来れないらしい。

「遅いなぁー。怖がってたって終わらないのにね」

早く進みたい他の女子たちは、小声で文句を言う。

⏰:11/01/03 10:33 📱:N08A3 🆔:LGFlTx3A


#621 [我輩は匿名である]
運動が苦手な飛鳥は、苦笑して適当に相槌を打つ。

そうこうしているうちに、引率の女性に背中を押されて、

一番後ろの女子が滑ってきた。

が、どこか様子がおかしい。

「え?ちょっと…」

「何でこっちに突っ込んで来んの?」

上手くカーブ出来ずに、その女子が飛鳥達に向かって突っ込んで来た。

おまけに止まり方も知らないため、スピードは上がる一方。

避けようにも、前後は列になっているし、横は崖のような急斜面。

どうやってもぶつかる。そう直感した飛鳥は、なぜかとっさにスキー板を外した。

⏰:11/01/03 10:33 📱:N08A3 🆔:LGFlTx3A


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