記憶を売る本屋 2
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#681 [我輩は匿名である]
昼休み。直人は今までと同じように薫と昼食を摂っていた。
「そういえば、香月はまだ休んでんの?」
「あぁ。昨日はもう熱は下がってたらしいけど。
インフルエンザって熱下がってから何日かしないと学校に来れないからなぁ」
「お前毎年かかるもんな。さすが」
「うるさいな」
直人にバカにされ、薫はムッとして睨み付ける。
直人はからかうように笑い、弁当のおかずを口に運ぶ。
:11/01/24 20:00
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:OV5OGioo
#682 [我輩は匿名である]
「(…今までと変わらないみたいだけど…本当に覚えてないのか…?
でも石川晶と長月要を『知らない』って言ったんなら、やっぱり覚えてないんだろうな…)」
飛行機内で飛鳥に全てを聞いた薫は、そう思いながら直人を見る。
「でももう1月だろ?今年はかからねぇんじゃねぇの?」
「さあな」
「これから体でも鍛えたら?いくら前世の事で不健康になったからって、
お前が頑張ればどうにでもなるだろ」
「(…俺の事は覚えてるんだな。他人事みたいに言いやがって…)」
直人から見れば完全に他人事なのだが、薫は納得できなさそうな顔で直人を見る。
:11/01/24 20:00
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#683 [我輩は匿名である]
「でも、改めて考えてみたらすげぇよなぁー。自分の前世がわかるなんてさ。
俺の前世ってどんな奴だったんだろうな?もしかして、超大物だったりして!」
直人は楽しそうに笑う。
それを見て、薫は呆れたようにも、淋しそうにも見える小さな笑顔を見せる。
「何だよ、大物って」
「んー…徳川家康とか!」
「はぁ?ははっ、無いね。絶対無い」
「何で言い切れるんだよ!?わかんねぇだろ!」
直人は、薫にわかりきった言い方をされて膨れる。
:11/01/24 20:01
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#684 [我輩は匿名である]
「水無月」
昼食を食べ終えた飛鳥が、傍に来て話し掛けてきた。
「んー?」
「今日、放課後時間ある?」
「あぁ…あるよ」
「ちょっと…ついて来てほしい所があって」
「ふうん。いいよ、別に」
「良かった。ありがと」
飛鳥は小さく笑って、自分の席に戻っていった。
:11/01/26 21:46
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:cSvZSEnk
#685 [我輩は匿名である]
放課後、飛鳥が日直の仕事を終わらせている間、直人は奏子を呼んで話をした。
「ごめん、遅くなって」
「忘れられたと思ってた」
奏子はからかうように笑う。
「…その…付き合ってって話なんだけどさ…」
直人は少し恥ずかしそうに下を向きながら言う。
奏子の表情も自然と真顔になる。
:11/01/26 21:57
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:cSvZSEnk
#686 [我輩は匿名である]
「…悪いんだけど…お前の事、友達としか見れない」
直人は「ごめん」と頭を下げる。
奏子はそれをじっと見つめる。
そして早くも、諦めたように「あーぁ」と息を吐いた。
「やっぱりダメか。あんた鈍感そうだし、先に告ればOKするかなって思ったんだけど」
奏子の話を聞いて、直人は頭を上げる。
「“先に”って?」
「飛鳥より先にって事!どっちにしろ、あたしには勝ち目は無かったって事か」
:11/01/26 21:58
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:cSvZSEnk
#687 [我輩は匿名である]
奏子はそう言って、くるっと背中を向ける。
「良かった!すっきりした。飛鳥の事、ちゃんと大事にすんのよ!じゃあね!」
直人が言葉を発する間もなく、奏子はその場を走り去った。
階段を掛け降りて、奏子は足を止める。
明るく振る舞っていてもやはりショックだったらしく、その目には少し涙が浮かんでいる。
「(……はぁ…すっきりしたのかしてないのか……。
でも、飛鳥なら…仕方ない…かなぁ…)」
奏子は涙を拭って深呼吸をし、1人でとぼとぼ帰っていった。
:11/01/26 22:01
:N08A3
:cSvZSEnk
#688 [我輩は匿名である]
告白されたのも振ったのも初めてで、直人は「本当によかったのかな」と立ち尽くす。
しかし、考えていてももうどうにもならない。
複雑な気持ちのまま、飛鳥がいる教室に戻る。
直人が入ってきた事に気付いて、飛鳥がこっちを向いた。
「おかえり」
「ただいま。日誌書き終わったか?」
「あとちょっと」
「早くしろよなー」
「わかってるよ!」
:11/01/28 22:19
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#689 [我輩は匿名である]
飛鳥は言い返して、さっさとペンを走らせる。
直人は飛鳥の前の席に腰掛ける。
意外にも、きれいな字で丁寧に書いてある。
「よくそんないっぱい書けるな。俺なんか2行で終わるぞ」
「だろうね。むしろ1行しか書けないんじゃないの?」
「へっ、よくわかってんじゃん」
直人は笑いながら、何となく窓の外に目を向ける。
「……俺さぁ」
:11/01/28 22:20
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:07zwY3H6
#690 [我輩は匿名である]
「うん」
「…今日、人生で初めて人振ったわ」
急な話に、飛鳥は思わず顔を上げる。
「……は??」
「俺、スキー実習ん時あいつに告られたんだ」
全く知らなかった飛鳥は、ただきょとんとする。
「……何で断ったの…?」
「…ん〜…」
直人は飛鳥と目を合わさず、髪をくしゃくしゃしながら答える。
:11/01/28 22:20
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