記憶を売る本屋 2
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#686 [我輩は匿名である]
「…悪いんだけど…お前の事、友達としか見れない」

直人は「ごめん」と頭を下げる。

奏子はそれをじっと見つめる。

そして早くも、諦めたように「あーぁ」と息を吐いた。

「やっぱりダメか。あんた鈍感そうだし、先に告ればOKするかなって思ったんだけど」

奏子の話を聞いて、直人は頭を上げる。

「“先に”って?」

「飛鳥より先にって事!どっちにしろ、あたしには勝ち目は無かったって事か」

⏰:11/01/26 21:58 📱:N08A3 🆔:cSvZSEnk


#687 [我輩は匿名である]
奏子はそう言って、くるっと背中を向ける。

「良かった!すっきりした。飛鳥の事、ちゃんと大事にすんのよ!じゃあね!」

直人が言葉を発する間もなく、奏子はその場を走り去った。

階段を掛け降りて、奏子は足を止める。

明るく振る舞っていてもやはりショックだったらしく、その目には少し涙が浮かんでいる。

「(……はぁ…すっきりしたのかしてないのか……。

でも、飛鳥なら…仕方ない…かなぁ…)」

奏子は涙を拭って深呼吸をし、1人でとぼとぼ帰っていった。

⏰:11/01/26 22:01 📱:N08A3 🆔:cSvZSEnk


#688 [我輩は匿名である]
告白されたのも振ったのも初めてで、直人は「本当によかったのかな」と立ち尽くす。

しかし、考えていてももうどうにもならない。

複雑な気持ちのまま、飛鳥がいる教室に戻る。

直人が入ってきた事に気付いて、飛鳥がこっちを向いた。

「おかえり」

「ただいま。日誌書き終わったか?」

「あとちょっと」

「早くしろよなー」

「わかってるよ!」

⏰:11/01/28 22:19 📱:N08A3 🆔:07zwY3H6


#689 [我輩は匿名である]
飛鳥は言い返して、さっさとペンを走らせる。

直人は飛鳥の前の席に腰掛ける。

意外にも、きれいな字で丁寧に書いてある。

「よくそんないっぱい書けるな。俺なんか2行で終わるぞ」

「だろうね。むしろ1行しか書けないんじゃないの?」

「へっ、よくわかってんじゃん」

直人は笑いながら、何となく窓の外に目を向ける。

「……俺さぁ」

⏰:11/01/28 22:20 📱:N08A3 🆔:07zwY3H6


#690 [我輩は匿名である]
「うん」

「…今日、人生で初めて人振ったわ」

急な話に、飛鳥は思わず顔を上げる。

「……は??」

「俺、スキー実習ん時あいつに告られたんだ」

全く知らなかった飛鳥は、ただきょとんとする。

「……何で断ったの…?」

「…ん〜…」

直人は飛鳥と目を合わさず、髪をくしゃくしゃしながら答える。

⏰:11/01/28 22:20 📱:N08A3 🆔:07zwY3H6


#691 [我輩は匿名である]
「……そりゃ…好きな奴、いるし…」

それを聞いて、飛鳥はドキッとする。

「(…ちょっと待ってよ、こいつと仲良い女子って奏子と響子ぐらいじゃん!

響子は論外だし、奏子がダメなら他に誰もいないし…)」

気が動転しすぎて、“自分の事かも”という考えには至らないらしい。

手を止めて考え込んでしまった飛鳥を、直人も黙って見る。

「(……これは…俺が告る空気なのか…?)」

振った後に、今度は告白か。

直人はそう思いながらも、気持ちを落ち着かせる。

⏰:11/01/28 22:21 📱:N08A3 🆔:07zwY3H6


#692 [我輩は匿名である]
「(…これは、そいつが誰なのか聞くべき?それとも…思い切って言うべき?

でも…怖いなぁ…。どうせ『ごめん』って言われるんだろうし…どうしよう…)」

2人はそれぞれ頭を悩ませる。

中でも飛鳥はかなり深刻な様子で、机に肘をついて本当に頭を抱え込んでいる。

「…お、おい…何でお前がそんなに悩んでるんだ?」

「そりゃ悩むでしょ!あたしだって…!」

飛鳥はそこまで言って、ハッと動きを止めた。

「“あたしだって”何だよ?」

「いや…その…」

⏰:11/01/29 13:10 📱:N08A3 🆔:.coV6bHI


#693 [我輩は匿名である]
つい口走ってしまい、困ったようにうつむく。

しかし、ここまできたら言うしかない。そう思った。

「……あたしも、…あんたの事好きだよ」

勢いに任せて、飛鳥は言った。

自分から言おうか迷っていた直人は、彼女の一言に目を丸くする。

2人の間に、しばしの沈黙。

「…お…」

少しして、直人が口を開いた。

「俺も好きだよ、お前の事!」

⏰:11/01/29 13:11 📱:N08A3 🆔:.coV6bHI


#694 [我輩は匿名である]
「え…」

飛鳥もまたぽかんとする。

「…本当?」

「当たり前だろ!冗談でこんな事言うかよ」

「そ、そうだよね…」

「……はぁ…何か、スッキリした」

「あたしも…」

張り詰めていた緊張が解けて、2人ともため息を吐く。

⏰:11/01/29 13:11 📱:N08A3 🆔:.coV6bHI


#695 [我輩は匿名である]
「…て事は…俺たち…両想い?」

「…になるよね」

少しずつ今の状況に慣れてきて、2人は照れながらも笑い合う。

飛鳥はまたせっせと手を動かし、日誌を書きあげた。

「お待たせ。行こ」

「あぁ」

2人は立ち上がり、教室の鍵を閉めて職員室に鍵を戻し、学校を出た。

⏰:11/01/29 13:11 📱:N08A3 🆔:.coV6bHI


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