記憶を売る本屋 2
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#691 [我輩は匿名である]
「……そりゃ…好きな奴、いるし…」
それを聞いて、飛鳥はドキッとする。
「(…ちょっと待ってよ、こいつと仲良い女子って奏子と響子ぐらいじゃん!
響子は論外だし、奏子がダメなら他に誰もいないし…)」
気が動転しすぎて、“自分の事かも”という考えには至らないらしい。
手を止めて考え込んでしまった飛鳥を、直人も黙って見る。
「(……これは…俺が告る空気なのか…?)」
振った後に、今度は告白か。
直人はそう思いながらも、気持ちを落ち着かせる。
:11/01/28 22:21
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#692 [我輩は匿名である]
「(…これは、そいつが誰なのか聞くべき?それとも…思い切って言うべき?
でも…怖いなぁ…。どうせ『ごめん』って言われるんだろうし…どうしよう…)」
2人はそれぞれ頭を悩ませる。
中でも飛鳥はかなり深刻な様子で、机に肘をついて本当に頭を抱え込んでいる。
「…お、おい…何でお前がそんなに悩んでるんだ?」
「そりゃ悩むでしょ!あたしだって…!」
飛鳥はそこまで言って、ハッと動きを止めた。
「“あたしだって”何だよ?」
「いや…その…」
:11/01/29 13:10
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#693 [我輩は匿名である]
つい口走ってしまい、困ったようにうつむく。
しかし、ここまできたら言うしかない。そう思った。
「……あたしも、…あんたの事好きだよ」
勢いに任せて、飛鳥は言った。
自分から言おうか迷っていた直人は、彼女の一言に目を丸くする。
2人の間に、しばしの沈黙。
「…お…」
少しして、直人が口を開いた。
「俺も好きだよ、お前の事!」
:11/01/29 13:11
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#694 [我輩は匿名である]
「え…」
飛鳥もまたぽかんとする。
「…本当?」
「当たり前だろ!冗談でこんな事言うかよ」
「そ、そうだよね…」
「……はぁ…何か、スッキリした」
「あたしも…」
張り詰めていた緊張が解けて、2人ともため息を吐く。
:11/01/29 13:11
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:.coV6bHI
#695 [我輩は匿名である]
「…て事は…俺たち…両想い?」
「…になるよね」
少しずつ今の状況に慣れてきて、2人は照れながらも笑い合う。
飛鳥はまたせっせと手を動かし、日誌を書きあげた。
「お待たせ。行こ」
「あぁ」
2人は立ち上がり、教室の鍵を閉めて職員室に鍵を戻し、学校を出た。
:11/01/29 13:11
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:.coV6bHI
#696 [我輩は匿名である]
「寒いなぁー」
直人はマフラーを鼻の高さまで引っ張り上げて、ポケットに手を入れる。
「…あの吹雪の中ぶっ倒れてから、あんまり寒さを感じなくなってきた」
「マジかよ。俺全然変わんねぇし」
「あんたも1回低体温なってみたら?」
「冗談じゃねー」
2人は冗談を交えながら帰り道を歩く。
「つーか、今からどこ行くわけ?」
:11/01/31 22:36
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:uyvesmfk
#697 [我輩は匿名である]
「花屋」
「は!?何で!?」
「…供えに、ね」
飛鳥はぽつりと言った。
「…誰に?」
「……着いたら言うよ」
2人はそう話ながら、近くの花屋に行き、そしてある場所にやってきた。
:11/01/31 22:36
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:uyvesmfk
#698 [我輩は匿名である]
何の変哲もない、ただの交差点。
「ここって…」
直人はぼんやり思い出す。飛鳥を追って、“1度だけ”来た事がある。
直人がぼーっと立ち尽くしている横で、飛鳥は信号機のポールの傍にしゃがみこみ、
そこに買ってきた花をそっと置いた。
「…誰か死んだのか?」
「…うん」
飛鳥は腰を下ろしたまま頷く。
:11/01/31 22:37
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:uyvesmfk
#699 [我輩は匿名である]
「何年か前に…あたしの大事な友達がここで亡くなったんだ。
……飛び出して、トラックに撥ねられそうになったあたしをかばって」
そんな話を聞いたのは初めてだ。
直人は茫然としながら飛鳥の話を聞く。
「…そんなの、初めて聞いたぞ」
「………初めて、言ったし」
飛鳥は苦笑して言った。
:11/01/31 22:37
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:uyvesmfk
#700 [我輩は匿名である]
「…でも、人かばって死ぬとか、女にしてはすげぇ勇気あるな」
「男だよ」
「男かよ!?」
女だと思っていたらしく、直人は驚く。
「(まぁ…女子の友達って言ったら、普通は女子だって思うよな…)」
飛鳥はそう思いながら、目を閉じて手を合わせる。
:11/01/31 22:38
:N08A3
:uyvesmfk
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