記憶を売る本屋 2
最新 最初 🆕
#75 [我輩は匿名である]
その夜、直人はベッドに寝転んでボーッと考えていた。

今日、飛鳥は自分に何を言おうとしていたのか。

あの時の飛鳥の顔は、いつものような表情ではなかった。

直人はそれが気になっていたのだ。

「(…別に怒ってるような顔でもなかったし…何だったんだろ?)」

ふと、響子の『鈍感ね』という言葉が頭に浮かぶ。

あの言葉は、こういう事を指しているのだろうか。

「……って事は…やっぱ俺、気に障るような事したのか…?」

直人はしばし、黙って考える。

しかし、答えが出ないまま眠りに落ちてしまった。

⏰:10/04/23 18:59 📱:N08A3 🆔:KdcsC5Iw


#76 [我輩は匿名である]
ある日。

掃除当番だった直人は、同じく当番だった飛鳥と奏子と一緒に帰っていた。

薫と響子は、すでに先に学校を出ている。

「…ん?」

道端で、直人はふと足を止める。

視線の先には、スーパーの重そうな袋を両手に下げて立ち止まっているおばあさんの姿。

「どうかしたの?」

奏子が直人に尋ねる。

「…ちょっとな」

⏰:10/04/23 18:59 📱:N08A3 🆔:KdcsC5Iw


#77 [我輩は匿名である]
直人はそれだけ言って、おばあさんに近づく。

飛鳥と奏子は、その場で様子をうかがう。

「ばあさん、大丈夫か?」

直人はおばあさんに声をかける。

「はぁい?」

おばあさんが顔を上げて、直人を見る。

そして、「あぁ、あんたは…!」と驚きの声を上げた。

「…へ?」

「あんた、あの時の子で……」

おばあさんはそこまで言い掛けて、「ん?」と考え直す。

⏰:10/04/23 19:00 📱:N08A3 🆔:KdcsC5Iw


#78 [我輩は匿名である]
「…あぁ、私ったらすごい勘違いしたわ。もうあれから40年くらい経ってるのに」

おばあさんはそう言って、上品な笑い声を上げる。

直人は「ん?」と首をかしげる。

「…まぁそれより、それ重くないか?俺運んでってやろうか?」

「あら、本当?…でも、悪いし…」

「いいよ、荷物運ぶぐらい。歩きって事は、家もそんな遠くないんだろ?」

「…行ってみよっか」

2人のやり取りが気になって、飛鳥も直人達の所まで歩く。

⏰:10/04/24 12:46 📱:N08A3 🆔:23VVxZiA


#79 [我輩は匿名である]
奏子はおばあさんを見て、「もしかして…」と声を漏らす。

「じゃあ…運んでもらえる?」

「おう、いいぜ」

直人は快く言って、おばあさんから荷物を受け取る。

「…私も何か持とうか?」

飛鳥はどういう話なのかすぐに理解して、直人に声をかける。

「え?いいよ、別に」

「でも、重そうだし…」

そう言われて、直人は「まぁ確かに…」と心の中で思う。

⏰:10/04/24 12:47 📱:N08A3 🆔:23VVxZiA


#80 [我輩は匿名である]
「あ、じゃあ1個持って」

「あぁ、いいよ」

飛鳥は頷いて、代わりに直人の鞄を持った。

「なんか、悪いわねぇ…」

「いいですよ、私も暇だから」

「私“も”って何だよ?俺が暇みたいだろ」

「だって暇じゃん」

2人が言い合っている間に、奏子も駆け寄ってきて、おばあさんの顔を見る。

⏰:10/04/24 12:47 📱:N08A3 🆔:23VVxZiA


#81 [我輩は匿名である]
「あ、やっぱりおばあちゃんじゃん!」

「あらぁ、奏子のお友達だったの」

「………え?」

2人の会話に、直人と飛鳥はきょとんとする。

「この人、うちのおばあちゃんだよ♪」

「マジで!?」

「こ、こんにちは…」

「あらあら、こんにちは」

直人と飛鳥がびっくりしている横で、奏子のおばあさんが笑う。

⏰:10/04/24 12:47 📱:N08A3 🆔:23VVxZiA


#82 [我輩は匿名である]
「あ、うちの家こっちだから、ついてきて」

奏子はそう言って歩きだす。

2人もぽかんとしたままついていく。

「あらぁ、しかしまぁ、あなた、私が昔会った男の子にそっくりだわ」

おばあさんが懐かしそうに直人に言った。

「そんなにそっくりなのか?」

「…敬語使いなよ」

「あ?あぁ、そうか」

「あーいいわよ、そんな気を遣わなくても」

おばあさんはまた笑う。

⏰:10/04/24 12:48 📱:N08A3 🆔:23VVxZiA


#83 [我輩は匿名である]
「そうねぇ。私がむかーし、姫崎公園に行きたかったのに、迷っちゃってねぇ」

「…え?」

直人は思わずおばあさんの顔を見る。

「その時に、道案内してくれた男の子がいたのよ。

あなたが、その子にあんまりそっくりだったから、つい…」

「道案内…って…」

飛鳥もハッと、直人を見る。

「あの子、元気かしらねぇ…?」

おばあさんは微笑みながら呟いた。

⏰:10/04/24 12:48 📱:N08A3 🆔:23VVxZiA


#84 [我輩は匿名である]
直人は少し考える。

「あ、そう言えばあの子、お友達の事気にしてたわねぇ。

なんかねぇ、その道案内してくれた子のお友達が、元気がないか何かでね。

その子、私と同じように養護施設で育ったらしいんだけど。

その子は元気になったのかしら…?」

懐かしくて仕方ないのか、おばあさんは話を進めていく。

『その子』とは、多分晶のことだろう。

直人は何と言えば良いのか、少し困った顔で考える。

⏰:10/04/24 12:49 📱:N08A3 🆔:23VVxZiA


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194