記憶を売る本屋 2
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#81 [我輩は匿名である]
「あ、やっぱりおばあちゃんじゃん!」
「あらぁ、奏子のお友達だったの」
「………え?」
2人の会話に、直人と飛鳥はきょとんとする。
「この人、うちのおばあちゃんだよ♪」
「マジで!?」
「こ、こんにちは…」
「あらあら、こんにちは」
直人と飛鳥がびっくりしている横で、奏子のおばあさんが笑う。
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#82 [我輩は匿名である]
「あ、うちの家こっちだから、ついてきて」
奏子はそう言って歩きだす。
2人もぽかんとしたままついていく。
「あらぁ、しかしまぁ、あなた、私が昔会った男の子にそっくりだわ」
おばあさんが懐かしそうに直人に言った。
「そんなにそっくりなのか?」
「…敬語使いなよ」
「あ?あぁ、そうか」
「あーいいわよ、そんな気を遣わなくても」
おばあさんはまた笑う。
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#83 [我輩は匿名である]
「そうねぇ。私がむかーし、姫崎公園に行きたかったのに、迷っちゃってねぇ」
「…え?」
直人は思わずおばあさんの顔を見る。
「その時に、道案内してくれた男の子がいたのよ。
あなたが、その子にあんまりそっくりだったから、つい…」
「道案内…って…」
飛鳥もハッと、直人を見る。
「あの子、元気かしらねぇ…?」
おばあさんは微笑みながら呟いた。
:10/04/24 12:48
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#84 [我輩は匿名である]
直人は少し考える。
「あ、そう言えばあの子、お友達の事気にしてたわねぇ。
なんかねぇ、その道案内してくれた子のお友達が、元気がないか何かでね。
その子、私と同じように養護施設で育ったらしいんだけど。
その子は元気になったのかしら…?」
懐かしくて仕方ないのか、おばあさんは話を進めていく。
『その子』とは、多分晶のことだろう。
直人は何と言えば良いのか、少し困った顔で考える。
:10/04/24 12:49
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#85 [我輩は匿名である]
「(…あの後何日かして2人とも死んだとか…言えねぇしなぁ…)」
無言で、眉間にしわを寄せる。
「…2人とも、今も仲良くやってると思いますよ」
そう言ったのは、飛鳥だった。
直人と奏子が、同時に飛鳥を見る。
飛鳥は小さく笑みを浮かべている。
「…そうだな」
彼女を見て、直人もニッと笑う。
:10/04/24 12:49
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#86 [我輩は匿名である]
「俺も、2人とも元気にやってると思うぜ」
「…そうねぇ、あの男の子なら、元気にやってそうね」
おばあさんは、安心したようににっこり笑う。
「(…水無月…何か一瞬変だった…?)」
奏子は直人を見ながら首を傾げる。
「あなたたちにも言っとくわ。あの男の子にも言ったんだけどね」
おばあさんは3人に言う。
:10/04/24 12:49
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#87 [我輩は匿名である]
「人との間に、壁を作っちゃダメなのよ。
仲良くなりたければ、一歩踏み出さなきゃ。
わかった?」
「あぁ…」
「はい」
「前も聞いたけどな」と思いながら、直人は相づちをうつ。
飛鳥もそれを聞くのは2度目だったが、素直に返事をした。
「…あ、着いたよ。あたしん家」
奏子は目の前の一軒家を指差す。
:10/04/24 12:50
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#88 [我輩は匿名である]
「おぅ。意外と近かったな」
「ありがとうねぇ、2人とも」
おばあさんは直人と飛鳥に笑いかける。
「どういたしまして」
2人はそろって返事をする。
「ありがとう。ここまで来たらもう大丈夫」
家のドアの前まで来て、奏子も2人に言った。
「いいのか?」
「うん」
奏子に言われ、直人と飛鳥は、ドアのそばに買い物袋を置く。
:10/04/24 12:50
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#89 [我輩は匿名である]
「お茶でも飲んでいったら?」
「いえ、私たちはこのまますぐに帰りますから」
おばあさんの申し出を、飛鳥が丁寧断る。
「あら、そう?じゃあまた遊びに来てね」
おばあさんはニッコリ笑った。
「んじゃ、俺たちはこれで」
「さよならー」
2人はおばあさんと奏子に手を振って、並んでその場を後にした。
:10/04/24 12:51
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#90 [我輩は匿名である]
「いい子達だねぇ」
おばあさんは笑って奏子に言う。
奏子は「うん」と返事をしつつ、帰っていく2人の背中を、複雑な気持ちで見つめていた。
:10/04/24 12:52
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