記憶を売る本屋 2
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#161 [我輩は匿名である]
「(…危ねぇ…口滑らす所だった…)」

例え「遊びに行った」とだけ言っても、「安斎は?」と聞かれたらアウトだ。

「薫?」

靴箱まで来て、白と黒のスニーカーを持つ手を止めて考え込んでいた薫に、直人が声をかける。

「え?あぁ…何か、たまたま神崎がクラスに遊びに来てたからって言ってたけど」

薫は適当に誤魔化す。

「あぁ、あいつ、いつも4組で弁当食ってるもんな」

単純な直人は、薫の適当な話を鵜呑みにして、赤と黒のスニーカーに履き替える。

「(こいつ…素直というか、単純というか…)」

薫は羨ましそうな、呆れたような眼差しで直人を見る。

⏰:10/05/06 20:22 📱:N08A3 🆔:6Ieh1kRI


#162 [我輩は匿名である]
「…さっき言ってたの、やっぱり神崎の事なのか?」
薫も靴を履き替えながら、直人に尋ねた。


「…んー、なんか、そういう話してたら、神崎が思い浮かんでさ」

「…そうか」

薫は口元に指をあてながら考える。

「…でもな、本当に好きなのかどうか、わかんねぇんだよ、まだ」

直人は少し不安そうに言う。

「確かに、あいつの頑張り屋な所は好きだし、応援してやりたいっていつも思ってるけど。

だって俺、まだそんな…誰か好きになった事ないしさぁ…」

直人は歩きながら、ガシガシと頭を掻く。

⏰:10/05/06 20:22 📱:N08A3 🆔:6Ieh1kRI


#163 [我輩は匿名である]
「…まぁ、最初はそんなもんだろ」

「お前もそうだったのか?てか、お前の場合いつの話だよ」

「もう50年近く前のことだな」

薫は笑いながら答える。


「初恋はそうだったな。なーか気になるっていうか…」

「そうそう、そんな感じ!……ん?初恋『は』?じゃあ前の香月には?」

「一目惚れだよ、俺の」

薫はきっぱり断言した。

「そうだったのか!?どこに惚れたんだよ?」

「顔と身長」

⏰:10/05/06 20:22 📱:N08A3 🆔:6Ieh1kRI


#164 [我輩は匿名である]
「身長…?」

直人は「何で?」と首をかしげる。

「何かな、可愛かったんだよ、ちっこくて。

俺175、6pあったけど、今日子は150pなかったぐらい?

よしよししやすい身長だったな」

珍しく、薫の顔が全体的に緩んでいる。

「…お前、惚気だすと止まらなくなるよな」

「たまには惚気させてくれよ」

「まぁいいけどよ…」

⏰:10/05/06 20:23 📱:N08A3 🆔:6Ieh1kRI


#165 [我輩は匿名である]
「彼女が出来たら、直人も絶対惚気ると思うぞ」

そう言われても、自分が惚気る姿なんて全く想像出来ない。

直人は「そうかなぁ…?」と腕を組んだ。

⏰:10/05/06 20:23 📱:N08A3 🆔:6Ieh1kRI


#166 [ま]
>>100-200

⏰:10/05/07 01:45 📱:P04A 🆔:6S1BPj46


#167 [我輩は匿名である]
ホームルームの時間。

「今日は球技大会の競技を決定したいと思いまーす」

体育委員達が前に出て仕切っている。

「こんな時期に球技大会なんかあるのか!」

体育系の直人は、早くもテンションが上がる。

女子と男子が、それぞれ教室の前後に分かれていく。

「こんな時期に球技大会なんかするんだな」

薫も同じように思っていたらしい。

壁にもたれて腕を組んでいる。

「あれか?スポーツの秋だからか?

運動会は何故か1学期だったしな」

⏰:10/05/08 22:43 📱:N08A3 🆔:BuSWAh76


#168 [我輩は匿名である]
言いながら、直人は楽しそうに笑っている。

「薫、お前何出る?」

直人は早速薫に尋ねる。

壁にもたれながら、薫は首をひねる。

「…何があるんだっけ?」

「えっとなぁ」

黒板に貼られた紙を見ると、男子は野球とドッヂボールと書かれている。

「野球だな、俺は」

「やっぱそう来るか。うーん…」

⏰:10/05/08 22:44 📱:N08A3 🆔:BuSWAh76


#169 [我輩は匿名である]
直人はさらに楽しそうに声を上げ、自分も腕を組んで考える。

「…俺、ドッヂがいい!」

「だろうな、お前野球下手だし」

「うるせぇな!」

直人は声を荒げて反論する。

「…お前、昔から野球好きだったよな。何でか知らねぇけど」

「前世の名残じゃないか?」

「名残?」

⏰:10/05/08 22:44 📱:N08A3 🆔:BuSWAh76


#170 [我輩は匿名である]
「霜月優也は小学校から高校まで野球部だった。

だからまぁ、生まれ変わりの俺が受け継いだんじゃないか?」

「へぇ…」

直人は薫を見ながら頷く。

「…要は…何もなかったなぁ…」

「そう…」

薫が返事をし終わる前に、直人が「あ!」と声を上げた。

「何だよ」

「お前、またバトルしようぜ、とか言われるんじゃね?」

⏰:10/05/08 22:45 📱:N08A3 🆔:BuSWAh76


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