記憶を売る本屋 2
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#255 [我輩は匿名である]
「黒歴史っていうな!」
もっと良い言い方があるだろうと、飛鳥は思わず言い返す。
「…………昨日さ」
しばらくして、飛鳥はやっと話を始めた。
「弟に嫌味言われて、私…何も言い返せなかったんだ。
『出来損ない』とか、『いじめられて当然』とか言われたけど、
私には…あいつに勝てるものなんか何もないし…」
「はあぁぁ!!?」
飛鳥の話に、直人はキレて声を上げる。
明らかにキレた彼の声に、薫達も驚いて振り返る。
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#256 [我輩は匿名である]
「出来損ない!?いじめられて当然!?ふざけんじゃねーぞクソ餓鬼が!!
…でも、俺は何も言い返さなかったお前にも腹が立つ!!」
直人は怒鳴りながら飛鳥を指差す。
「出来損ないだから何だ!?そんな事こっちだってわかってんだよ!!」
「な…っ」
出来損ないだと認められてしまい、飛鳥もカチンときたらしい。
「あんたどっちの味方なんだよ!?」
「てめぇに決まってんだろ!」
直人はきっぱりと言い張った。
その答えに、飛鳥はハッとして口を閉じる。
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#257 [我輩は匿名である]
「友達いないわ、人の話は聞かないわ、道路に飛び出すわ、
たった1人の頼れる男が死んだら、後を追って自殺するわ、
ついでに妊婦も道連れにするわ…。
そんな奴が出来損ないじゃなかったら、誰が出来損ないだっつーんだよ!?
俺がいつもお前の世話焼いたりしてんのはなぁ!
お前にもうあんな事してほしくないからだよ!
晶みたいに誰も信じれないまま死んだりしないで、
いろんな奴といっぱい笑ったりして、楽しく生きていてほしいからだよ!!
つーか!こーゆー話、あの時もしただろ!!何回も言わすなアホ!!」
息もつかずに怒鳴り続けて、直人は息を切らす。
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#258 [我輩は匿名である]
意外と迫力があった直人の説教に、飛鳥はただただぽかんとする。
同じように、薫と響子もじっと直人の話を聞いていた。
「お…お前…」
直人は若干汗をかきながら話を続ける。
「餓鬼に嫌味言われたぐらいで…何しょげてんだよ…。
今までも散々無視されたり…嫌味言われたらしてたんだろ…。
お前だって、この間まで家族見返すって…張り切ってたじゃねぇか…」
直人の言葉に、飛鳥は少しうつむく。
確かに直人の言う通りだった。
:10/05/28 22:07
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#259 [我輩は匿名である]
「…お前…他に何かあったんじゃねぇのか…?」
一息ついて、直人はまた弁当の中身を口に運びだした。
飛鳥は「うーん…」と、曖昧な返事をする。
奏子とちょっとややこしい事になっているが、直人に言えるはずがない。
「…ちょっとさ、いろいろあって」
「やっぱりまだあったのかよ」
直人は不満そうにため息をつく。
「何だよ?言ってみ」
「……やだ」
「何で」
「……あんたに言えるような話じゃないから」
:10/05/28 22:07
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#260 [我輩は匿名である]
飛鳥は戸惑い気味に答える。
しかし、そういう言い方をされると気になってしまう直人。
「何だよ!気になるじゃねぇか!」と問い詰めてきた。
「言えないっつったら言えないんだよ!」
「何なんだよもう!」
「まぁまぁ落ち着いて」
ポンと肩を叩かれ、直人は「はぁん?」と不機嫌そうに振り向く。
いつの間にか、響子と薫が真後ろにいた。
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#261 [我輩は匿名である]
「うわっ、何だよお前ら!」
「そんなに問いつめたら、飛鳥ちゃん可哀相でしょ」
響子は怒ったように直人に言う。
「そんな事言われたって…」
「女の子にはねぇ、男よりもいろいろ大変な悩みがあるの。
それがわかってないと、そのうち嫌われちゃうよ?」
響子に諭され、直人は不服そうに黙る。
「薫はわかんのかよ?そーゆー女心」
「…なんとなーく」
いくら薫でも、そこまではさすがに自信はない。
:10/05/28 22:08
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#262 [我輩は匿名である]
直人は「ふぅん」とだけ返事を返す。
「まぁ、あれだ。ここから先はガールズトークってやつだよ」
薫はその場に腰を下ろしながら言った。
まぁ直人にはわからないだろうけど、と思いながら。
「なんか、女ってめんどくせぇな」
直人は頭の後ろに手を組んでため息をつく。
その横で、響子は飛鳥に耳打ちする。
「何かあったら、いつでも言いなよ。大体は奏子ちゃんの事でしょ?」
「…うん」
「悩みはね、人に話したら大体すっきりするものよ。ね?薫」
:10/05/28 22:09
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#263 [我輩は匿名である]
「ん?あぁ…」
「どう考えても、悩みはため込むタイプだろ、お前」
「……まぁ、どっちかっていうとな」
「だめよ、ため込むだけため込んでると、そのうち…」
「大丈夫だよ、ハゲるまでは悩まないから」
「まだその話引っ張ってんのかよ」
「え、あんたハゲるの?」
「あーあ、クールな性格が台無しだな」
「誰がハゲるって断定したんだ」
好き放題言い出した2人を薫が睨む。
隣では、そのやり取りを見ながら響子が笑っている。
:10/05/28 22:09
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#264 [我輩は匿名である]
「(…………ふぅん…)」
屋上のドアの隙間から、奏子が4人のやりとりを見つめていた。
最初は盗み見するつもりではなかったのだが、
急に直人が飛鳥に向かって怒鳴りだしたため、出ていくタイミングを失ってしまったのだ。
今の4人の会話は遠くて聞き取れないが、怒鳴っていた直人の言葉だけは聞こえていた。
「(……飛鳥の前世…自殺だったって事か…。
しかも、なんか水無月の前世の人と仲良かったみたいだし…)」
奏子は暗い顔で考え込む。
直人が『もうあんな事してほしくない』と言っている所を見ると、
かなり深い関係があったようだ。
:10/05/28 22:09
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