記憶を売る本屋 2
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#451 [我輩は匿名である]
何も気にする事なく、ずけずけと聞いていく。
「…女子の喧嘩の原因聞くか?」
「何だよ?いいじゃん、別に聞いたって」
直人はあっけらかんとした表情で答える。
「ちょっとは自分で考えてみな」
奏子は言いたくなさそうにそれだけ言って、そっぽを向いてしまった。
そう言われてしまうと仕方がない。
直人は「わかった」と言って出ていった。
:10/07/10 10:15
:N08A3
:ZSYtSBPY
#452 [我輩は匿名である]
「(……あいつ、やっぱり飛鳥の事しか心配してないな…)」
直人が出ていったドアの方を、奏子は淋しそうにじっと見ていた。
:10/07/10 10:16
:N08A3
:ZSYtSBPY
#453 [我輩は匿名である]
その夜。
飛鳥はベッドの上に転がって、天井を見つめる。
「(…どうしたら…仲直り出来るんだろ…)」
奏子との喧嘩の事で頭がいっぱいの飛鳥。
要を除いて、初めて出来た友達。
あの自殺騒動の後、昼食に誘ってくれたのは奏子だった。
だからこそ、彼女に背を向けられたショックは大きかった。
:10/07/10 10:16
:N08A3
:ZSYtSBPY
#454 [我輩は匿名である]
今まで人を避けて生きてきた飛鳥は、仲直りの方法など知らない。
直人に聞こうにも、これ以上頼っている姿を見られると、
奏子はきっと今以上に腹を立てるだろう。
「(……あいつに頼ろうとするからダメなんだよ…)」
飛鳥は前腕を顔にあて、目を隠す。
晶の時もそうだった。
要だけを頼って、自分の物にしたいと思っていた。
:10/07/10 10:17
:N08A3
:ZSYtSBPY
#455 [我輩は匿名である]
だから要の死に耐えられなかった。
しかし、今は少し違う。
「(……響子に…相談してみようかな…)」
飛鳥はぼんやりと考えて、ゆっくりと目を閉じた。
:10/07/10 10:17
:N08A3
:ZSYtSBPY
#456 [我輩は匿名である]
「…………何?」
しかし次の日、響子は朝から良介に絡まれていた。
良介は響子の机に手をついて、彼女を見下ろしている。
「響子ちゃんが言ってた都市伝説、調べてみたんだ」
珍しく真剣な良介に、響子も黙っている。
「あれ、他人が見ても全く魅力を感じないね」
「…そう?」
「僕はね。だから思ったんだ。
君は…例の本をもらった人じゃないか、って」
:10/07/10 10:18
:N08A3
:ZSYtSBPY
#457 [我輩は匿名である]
あながちハズレではない。直接もらってはないが、同じ事だ。
響子はふうっと息をつく。
「もしそうだとしても、それがどうしたの?」
「あいつもそれを知ってるのか?」
あいつ、とは、おそらく薫のことだろう。
響子は少し考え込む。
薫とは前世で夫婦であった事。優也と交わした約束。
それをはっきり言ってしまえば、諦めてくれるかもしれない。
:10/07/10 10:18
:N08A3
:ZSYtSBPY
#458 [我輩は匿名である]
「…まぁ」
良介は机から手を離す。
「前世がどうであれ、僕はまだ諦めないから」
そう言って小さく笑い、自分の席に戻っていった。
「(…諦めてよ…)」
彼の後ろ姿を見た後、響子は思い悩んだ顔で外の景色に目を向けた。
「(…響子も何か大変そうだなぁ…)」
教室の外から一部始終を見ていた飛鳥は、がっくりと肩を落とす。
これでは安心して頼れる人がいない。
飛鳥も響子のように悩みながら、自分の教室に帰った。
:10/07/10 10:19
:N08A3
:ZSYtSBPY
#459 [なみ]
:10/07/10 12:50
:PC
:PPJ.LCPg
#460 [我輩は匿名である]
飛鳥達が喧嘩してから、2週間が過ぎた。
直人は授業中でありながら、腕を組んで考え込む。
「どうやったら仲直りさせれるだろうなー?」
直人の考えている事を弁明するかのように、声が言う。
この声の主が誰なのか、まだわかっていない。
それを考えている場合ではないのだ。
「…口に出さなくても分かんのかよ」
直人はかなり小声で言い返す。
「考えてる事は大体筒抜けだよ」
:10/07/22 08:58
:N08A3
:wAtNqTXQ
#461 [我輩は匿名である]
「(何だよこいつー)」
「何だよこいつーって思っただろ」
「(…やっぱわかんのか)」
「わかるんだってば」
「(じゃあいちいち喋らなくていいんだな)」
「そうだね。喋りたかったら喋っていいけど」
「(いいよ、変な奴だと思われるし)」
直人は机に肘をつく。
「でもさぁ、お前がどうこうする事じゃないんじゃないか?」
:10/07/22 08:58
:N08A3
:wAtNqTXQ
#462 [我輩は匿名である]
悩む彼に、声が言う。
「(…でも神崎は、今までまともに友達出来た事もないし、
だからもちろん、どうすれば仲直り出来るのかもよく知らないし…)」
「それはそうだけど…」
声は、飛鳥の事もよく知っているようだった。
「でもお前が何でもしてやれば、あの子が何も出来ない子になるんじゃないか?」
声が言う事は正しかった。
直人は少し、何も考えずに黙り込む。
:10/07/22 08:59
:N08A3
:wAtNqTXQ
#463 [我輩は匿名である]
「(お前誰だか知らねぇけど、俺の考えてること、全部わかっちゃうのか?)」
「聞いてほしくなかったら聞かないよ」
「(じゃあしばらく聞かないでくれるか?)」
「いいよ」
声は快く言って、それ以降何も言わなくなった。
本当かどうかわからなかったが、直人はまた考え始めた。
「(確かに…俺が世話焼く事じゃねぇのかもなぁ…。
自分の事、何でも自分で解決できないと、晶みたいになっちまうかもしれねぇし…)」
自然と、「うーん…」と声が漏れる。
:10/07/22 08:59
:N08A3
:wAtNqTXQ
#464 [我輩は匿名である]
「(……しばらくは、様子を見た方がいいかな…?)」
何だかモヤモヤするが、これも飛鳥の為だ。
直人はあまり腑に落ちない顔で、自分に言い聞かせた。
「(…おい、幽霊)」
気持ちに一区切りつけて、直人は声に呼びかける。
「俺の事?」
声はすぐに答えた。
「(お前以外に誰がいるんだよ)」
「…まぁ、幽霊って言われると否定は出来ないけど」
:10/07/22 08:59
:N08A3
:wAtNqTXQ
#465 [我輩は匿名である]
“幽霊”と言われるのが気に食わないのか、声は言葉を濁す。
「考え事終わったの?」
「(あぁ。しばらくは様子見にした)」
「そっか。それがいいよ」
「(…で、改めて聞くけど、お前だれ?)」
直人はストレートに声に尋ねた。
「…直人、本当鈍感だよな」
「(うっせぇな、どいつもこいつも鈍感鈍感って)」
直人は黒板を見ながらブスッとする。
:10/07/22 09:00
:N08A3
:wAtNqTXQ
#466 [我輩は匿名である]
あげ
続き読みたいです
:10/08/01 10:29
:S001
:9MLNrBi6
#467 [我輩は匿名である]
age!
:10/08/05 00:44
:auKC3X
:☆☆☆
#468 [我輩は匿名である]
めっちゃ好きなんであげます
:10/08/25 00:08
:F02A
:Vnr3JSc6
#469 [我輩は匿名である]
続きお願いします!
:10/09/08 19:44
:SH01B
:yaC7Z24Q
#470 [我輩は匿名である]
とってもお待たせして本当に申し訳ありません


待っていてくださる方がたくさんいらっしゃって、感激です…(ノд<。)゜。
ちょっとずつしか進めれませんが、温かく見守ってもらえれば幸いです

:10/10/21 19:04
:N08A3
:yJnmi4cE
#471 [我輩は匿名である]
「月城薫は、俺が誰かわかってるみたいだったけど?」
「(そうなのか!?)」
「まぁ彼は勘鋭そうだしな」
声はからかうように笑っている。
「(…薫はお前の事知ってるのか?)」
「さぁ?全く知らないって事はないだろうけど」
直人は全くわからない。
ノートの端っこに、適当に図を書いてみる。
:10/10/21 19:05
:N08A3
:yJnmi4cE
#472 [我輩は匿名である]
真ん中に“幽霊”、その両脇に“オレ”“薫”と書いて、幽霊に矢印を引っ張る。
「(…お前、あと誰知ってる?)」
「お前の周りにいる人は大体知ってるよ。
月城薫、神崎飛鳥、安斎奏子、香月響子、あとロン毛の変な男子」
「(あぁ…あの自称・帰国子女な)」
最近あまり顔を見ないため、すっかり忘れていた。
「あと」
声が補足する。
:10/10/21 19:05
:N08A3
:yJnmi4cE
#473 [我輩は匿名である]
「石川晶」
直人はその名前にハッとした。
「(何であいつの事まで…!?)」
「さぁ?何でだと思う?」
声は問い詰めるように聞き返してくる。
晶を知っているのは、直人の近くでは薫と響子しかいない。
直人はさっきの図にいろいろ付け足し、それをじっと見つめる。
男の声。晶を知っている人物。薫じゃない…。
しばらく見ていると、直人はある人物を思い出した。
:10/10/21 19:06
:N08A3
:yJnmi4cE
#474 [我輩は匿名である]
自分とそっくりな顔をした、たった1人の晶の友達…。
「…お前…」
驚きのあまり、授業中だという事も忘れ、声を漏らす。
「…要か…?」
「…やっと思い出してくれたんだね」
声は、待ちわびたという感じで返事をした。
自分で言ったものの、直人は全く信じられない。
本を読んでいた時の直人と真逆の事が、要に起こっているみたいではないか。
「お前、何で…?」
:10/10/21 19:07
:N08A3
:yJnmi4cE
#475 [我輩は匿名である]
「声出てるよ」
声に言われて顔を上げると、周りの生徒が不思議そうにこっちを見ている。
直人は恥ずかしくなって、黙ってうつむく。
「(でも何で?つーかお前、どこにいんだよ?)」
「お前の中だよ。直人も同じような事あっただろ?5月ぐらいに」
言われてみれば、要の声によく似ている。
しかも“直人の中にいる”という事は、半年前の直人とほぼ同じ状態だ。
:10/10/21 19:07
:N08A3
:yJnmi4cE
#476 [我輩は匿名である]
「(何で!?お前にも本あんの!?)」
「無いよ」
「(じゃあ何でこんな事になってんの?)」
「…それは…今はまだ言えないな」
要は、なぜこんな状況になっているのは知っているようだ。
しかし、『今はまだ』という事は、いつか教えてくれるのだろうか?
「(まだって、いつか教えてくれんの?)」
「まぁ、言うべき時になったらね」
:10/10/22 22:24
:N08A3
:PoYSolQc
#477 [我輩は匿名である]
「(いつになんの?それ)」
「さぁ?」
「(何なんだよお前ー!)」
「何って、長月要だよ」
「(知ってるっつーの!)」
直人はわけがわからず、うなだれながら大きくため息を吐いた。
:10/10/24 22:22
:N08A3
:F3jbXIQM
#478 [我輩は匿名である]
昼休み、直人は不服そうに薫を見る。
「…何でわかってたわけ?幽霊の正体が要だって」
「逆に何でわからなかったわけ?」
呆れるように薫が聞き返す。
「石川晶が運動嫌いって話で『意外だ』って言うんなら、
あの女を知っている人間って事だろ?
その中から男の声ってので、今日子は候補から外れる。
で、『もう忘れたのか』って言われたんなら、お前が知ってる男だろ?
だったら長月要しかいないじゃないか」
:10/10/24 22:22
:N08A3
:F3jbXIQM
#479 [我輩は匿名である]
「さすが学年1位」
薫の解説に、要も納得している。
何だか疎外感を味わっている気がして、直人はムスッとする。
「…あーあー、どうせバカですよ、俺は」
「いじけるなよ」
要と薫の声が重なる。
「ハモるなよお前ら!」
「……え、今もいるのか?長月要」
「いるよ、24時間いるみたいだぞ」
:10/10/24 22:23
:N08A3
:F3jbXIQM
#480 [我輩は匿名である]
「えー迷惑な話」
「そんな事言われたって困るよ!」
『迷惑』と言われてショックだったのか、直人の中で要が叫ぶ。
「でも、何でそんな事になってるんだ?」
「えっ?俺だけ!?お前なってないの!?」
「なってない。響子も何も言ってないし、お前だけじゃないのか?」
「えーもう意味わかんねぇ…」
直人は椅子の背もたれにもたれて天井を見上げた。
:10/10/24 22:23
:N08A3
:F3jbXIQM
#481 [我輩は匿名である]
放課後、飛鳥はボーッと、自分の席で黄昏ていた。
「神崎、帰んねぇのか?」
直人は鞄を肩から掛けながら話し掛ける。
「うん…もうちょっとボケーッとしてから帰る」
飛鳥は相変わらず、元気ない笑顔で答える。
それを見て、直人は真顔で何かを考える。
「………何で悩んでるのかわかんねぇけどさ」
少しして、直人は口を開いた。
「いつまでも悩んでるとしんどくないか?」
:10/10/25 18:11
:N08A3
:B2OZUzic
#482 [我輩は匿名である]
「…んー、まぁ、疲れるね」
飛鳥は苦笑して答える。
「じゃあさ、何かに熱中して、ちょっと間悩み事忘れたら?」
そう言われて、飛鳥はきょとんとする。
「…え?」
「いや…ずーっと悩んでると、そのうち欝になりそうな気がしてさ。
だから、たまには何かで気分転換しろよ」
直人にしてはまともなアドバイス。
飛鳥は意外そうな目で直人を見上げている。
:10/10/25 18:12
:N08A3
:B2OZUzic
#483 [我輩は匿名である]
要も何も言わない。
「…そうだね」
少しして、飛鳥は小さく笑った。
「そうしてみるよ。ありがと」
「おう」
ちょっと元気になったような彼女の笑顔を見て、直人もニッと笑い返した。
:10/10/25 18:12
:N08A3
:B2OZUzic
#484 [我輩は匿名である]
「(…どうしよう…)」
一方、奏子も悩んでいた。
どうしてあそこまで言ってしまったんだろう、と。
確かに、飛鳥が黙って直人と会っていたのには苛立った。
お守りをあげていたのにも、正直腹が立った。
しかし、飛鳥が陰でコソコソやるような性格でない事は、奏子も知っている。
「(…飛鳥の話も、聞いてあげれば良かったな…)」
帰りながら、奏子は小さくため息を吐く。
腹が立つあまり、昼食も一緒にとらなくなってしまった。
:10/10/27 19:08
:N08A3
:EbC01sZ6
#485 [我輩は匿名である]
バイト先でも一言も口を利いていない。
飛鳥にも悪いところはあるが、その分、飛鳥は余計に気にしているだろう。
自分から謝るべきかどうか、奏子は悩みながら1人帰った。
その後、飛鳥は何故か、授業が終わるとすぐに学校に帰るようになった。
直人は理由を聞きたい気もしたが、今は聞かないようにしていた。
彼女なりに考え、悩みをコントロールしているのだろう。そう思ったからだ。
:10/10/27 19:08
:N08A3
:EbC01sZ6
#486 [我輩は匿名である]
ある日。
「ん?」
休み時間、飛鳥が薫と話している。
最近良く見る光景。
仲良くない事はないのだが、2人きりで話しているのは、最近まで見たことはなかった。
「何してるんだろうな」
要も不思議そうにしている。
直人は首をかしげ、話し掛けに行くか考える。
:10/10/27 19:09
:N08A3
:EbC01sZ6
#487 [我輩は匿名である]
するとちょうどよく、8組に響子がやって来た。
「香月香月!」
響子が薫の所に行く前に、直人は響子の元に走る。
「水無月くん」
「ちょっと聞きたい事があるんだけど!」
「ん?」
響子はきょとんとしている。
「神崎と薫が最近やけに仲良いんだけど、何か知らねぇか?」
腕を組んで直人は尋ねる。
:10/10/27 19:09
:N08A3
:EbC01sZ6
#488 [我輩は匿名である]
響子はそれを聞いて、少し考え込んだ。
「………知ってるけど…」
「えっ、マジで!教えて」
「んー、やだ」
響子はにっこり笑って答えた。
「はぁー!?」
「だって今言わない方が、後で水無月くんきっと喜ぶよ?」
「そうなのか?」
何かのどっきりの計画でもしているのか。
:10/10/27 19:09
:N08A3
:EbC01sZ6
#489 [我輩は匿名である]
「もしかして、俺の為のなんか…!?」
「別に水無月くんの為じゃないけどね」
嬉しそうにガッツポーズする直人に、響子がバッサリ否定する。
「ちっ…」と、直人は悔しそうに舌打ちする。
「まぁ浮気じゃないから、気にしなくて良いわよ」
それは想像つくのだが、何なのかは全くわからない。
しかし、響子いわく「直人も喜ぶ」事らしいので、
直人はそれがわかる時まで待つ事にした。
:10/10/27 19:10
:N08A3
:EbC01sZ6
#490 [我輩は匿名である]
それがわかったのは、12月の中旬だった。
すっかり寒くなって、ブレザーを着ても肌寒いくらいだ。
直人達が取り囲んで見ているのは、学期末テストの結果。
貼りだされた紙を見る輪のなかに、奏子の姿はない。
まず目についたのは上位の順位。
薫が1位なのだが、その近くに良介の名前がなかったのだ。
「…とうとう諦めたか」
「まっさっか!!」
4人の背後で声がする。
:10/10/27 19:10
:N08A3
:EbC01sZ6
#491 [我輩は匿名である]
来た。直人達は顔をしかめて目を合わせる。
薫は鬱陶しそうに振り向く。
案の定、そこには仁王立ちした良介がいた。
「…何だよ」
「僕が響子ちゃんを諦めるわけないだろう!?
受けれなかったんだよ!テスト!」
「何で?」
直人と飛鳥は首をかしげる。
:10/10/27 19:10
:N08A3
:EbC01sZ6
#492 [ま]
はう(´・ω・`)余計続きが気になる(´・ω・`)
:10/10/31 00:38
:P04A
:H9axVRIU
#493 [我輩は匿名である]
「風邪引いて追試になったからさ!」
良介は華麗に理由を言う。
が、薫はすでにげんなりしたように良介を視界から外している。
一応追試は出来るものの、その点数は順位には反映されない。
「おいっ!僕から目を逸らすな!」
良介は声を荒げて、薫の身体を自分の方に向ける。
「相変わらず鬱陶しいね、この子」
彼の暴走ぶりに、要が呆れている。
「次こそは!お前から響子ちゃんを奪い返す!!」
:10/10/31 08:42
:N08A3
:eAY8INGU
#494 [我輩は匿名である]
良介はビシッと薫を指差す。
「……なぁ、いい加減やめないか?」
薫はため息を吐きながら言う。
「何?」
「お前、本当に響子の事が好きなのか?」
「当たり前だろ!」
「だったら…」
「そんなに勝つ自信が無いか?」
:10/10/31 08:42
:N08A3
:eAY8INGU
#495 [我輩は匿名である]
良介はまるで見下すような目で薫を見る。
「そういう事じゃない」
「同じ事だろ?響子ちゃんと離れたくないなら、僕に勝てば良いだけの話だ。
1回僕に負けたからか?そりゃあれだけ自信満々に乗ってきたのに…」
「いい加減にしろよ」
薫は口調を強め、良介を睨む。
「ちょっと喋らせておけば調子に乗りやがって…。
“俺”とキョウコの事を何も知らない“ただの幼なじみ”が意気がってんじゃねぇぞ…!」
:10/10/31 08:42
:N08A3
:eAY8INGU
#496 [我輩は匿名である]
薫の話に、良介は眉をひそめる。
「(何だ…?こいつと響子ちゃんの間に、何かあるのか…?)」
前世の事について全く何も知らない良介は、薫のその言葉が気になった。
「……こわっ」
「完璧にキレてるな…」
隣で2人の様子を見ている直人達は、ちょっとハラハラしている。
響子も、いつもと違って、かなり不安そうな顔で薫を見つめている。
:10/10/31 08:43
:N08A3
:eAY8INGU
#497 [我輩は匿名である]
「…『何も知らないくせに』っていうんなら」
良介は真剣な顔で薫を見る。
「響子ちゃんと何があったか、僕に全部話してくれよ」
「言っても信じねぇよ。お前に言ったって、嘲笑われて終わるだけだ」
「そんな事わからないだろ!?」
珍しく、良介が本気で声を荒げる。
それを、薫は黙ってじっと見ている。
「…じゃあお前」
少し考えた後、薫は落ち着いた声で口を開く。
:10/10/31 08:43
:N08A3
:eAY8INGU
#498 [我輩は匿名である]
「生まれてくる前から俺と響子が知り合いだったって言ったら、信じるか?」
そう言われて、良介は理解できないという顔で首をかしげる。
「そんな事あるわけ…」
良介はそこまで言って、ハッとある事を思い出した。
「……もしかして、前に言ってた…」
「…ここでするような話じゃない」
やっと話を理解しはじめた良介に、薫は背を向ける。
「本当に知りたくなったら聞きに来い。
…軽い気持ちで来たら張り倒す」
薫は見向きもしないまま言い放って、教室に入っていった。
:10/10/31 08:44
:N08A3
:eAY8INGU
#499 [我輩は匿名である]
「……とうとう言わないといけなくなっちゃったな」
飛鳥がボソッと直人に言う。
直人も呆れたように「あぁ…」と返事して、ふと響子に目をやる。
響子は思い悩んだ表情でうつむいている。
そして、彼女も無言のまま教室へ去っていった。
「(どうしたんだろ?響子…)」
飛鳥は気にしながら、響子の背中を見つめる。
良介もその場を離れ、直人と飛鳥は顔を見合わせる。
:10/10/31 08:44
:N08A3
:eAY8INGU
#500 [我輩は匿名である]
「………あ、俺自分の順位見てねぇわ」
直人はちょっととぼけるように言って、また紙を見直す。
しかし、自分の順位を見つける前に目を止めた。
『7位:神崎 飛鳥(8組) 451点』
「………………なぁ」
「何?」
「…………これ、お前?」
直人は飛鳥の名前を指差して、目を丸くする。
「…あたししかいないじゃん」
飛鳥はかなり恥ずかしそうに答える。
:10/10/31 08:45
:N08A3
:eAY8INGU
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