記憶を売る本屋 2
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#553 [あんちむ]
>>552

⏰:10/11/29 12:10 📱:SH05A3 🆔:5j8KcYUA


#554 [我輩は匿名である]
3学期。

「あーあ、テスト全然わかんね」

「どうせ冬休みの課題、答え丸写しして終わらせたんだろ」

この日は、冬休みの課題を踏まえた実力テストだった。

「あんな量1個1個やってられるかよ」

「まぁ、俺も半分ぐらい写したけどな」

空になった弁当箱を片付けながら、薫は笑う。

「お前もかよ。…で?今回はちゃんと1位取れそうなのか?」

直人は良介の事を思い出し、薫に聞いてみる。

すると、薫の動きが止まった。

⏰:10/12/15 17:40 📱:N08A3 🆔:e1TLLFT2


#555 [我輩は匿名である]
「……嫌な事思い出させるなよ…」

「何だ、忘れてたのか」

「…でも今回何も言ってこなかったな。あいつも忘れてるんじゃないか?

っていうか、いい加減忘れてほしい」

「無理だろ」

「月城ー!」

クラスメイトが、教室に入ってくるなり駆け寄ってきた。

「何」

「今廊下で聞いたんだけどさ、スキー実習のグループ、4組と一緒らしいぞ!」

「へぇ、良かったじゃん。嫁と一緒で」

⏰:10/12/15 17:40 📱:N08A3 🆔:e1TLLFT2


#556 [我輩は匿名である]
「嫁のストーカーも一緒だぞ」

わざわざ急いで言いに来た意味をわかっていない直人に、クラスメイトが補足する。

「うわ、めんどくせぇ」

「…終わった…俺のスキー実習…」

薫は早くもげっそりしてうなだれている。

直人とクラスメイトは、哀れみを込めた目で薫を見る。

「水無月くん!」

いつ来たのか、響子がバン!と机をたたく。

「うわ、びっくりした。いつからいたの」

「今!それよりね!」

⏰:10/12/15 17:41 📱:N08A3 🆔:e1TLLFT2


#557 [我輩は匿名である]
「聞いたよ…スキー実習が地獄になる事だろ…」

薫は壁にもたれながら響子に言う。

「違う!飛鳥ちゃんと奏子ちゃんが、とうとう1対1で話し合うって」

「え、マジで?」

「うん。さっき奏子ちゃんが来て、2人で行っちゃったのよ」

「やっとかよ。つーか、あの2人何で喧嘩してたの?」

直人は響子に聞き返す。

ここまで来て理由をわかっていない直人に、響子と薫は呆れてため息を吐いた。

⏰:10/12/15 17:41 📱:N08A3 🆔:e1TLLFT2


#558 [我輩は匿名である]
飛鳥と奏子は、階段の踊り場にいた。

「ごめん、呼び出したりして」

「…ううん、あたしも話したい事あったから」

緊張しつつ、飛鳥ははっきりと受け答えする。

「……1つ、謝らなきゃいけないんだ」

奏子は視線を落として白状する。

「この間、神社のベンチで月城と喋ってるの、……聞いちゃったんだ」

「……“私”が、自殺したって話?」

飛鳥に聞かれ、奏子は申し訳なさそうに頷く。

あれだけ知られたくないと思っていたが、なぜか怒る気にならない。

⏰:10/12/15 22:00 📱:N08A3 🆔:e1TLLFT2


#559 [我輩は匿名である]
「……いいよ、いつか話さないといけないのかなって思ってたし…」

「…そっか。…………じゃあ、1つ聞いていい?」

「…うん。何?」

「…水無月の前世の事」

覚悟はしていたが、ドキッとした。

飛鳥はしばらく黙り込む。

「…知り合いだったんだよね?」

「………うん」

飛鳥は自分を落ち着かせようと、息を吐く。

「……前世の私が、唯一好きになった人だった」

⏰:10/12/15 22:00 📱:N08A3 🆔:e1TLLFT2


#560 [我輩は匿名である]
飛鳥はそう白状した。奏子は心の中で、やっぱりな、と呟く。

「…私のせいで死んだんだ」

「どういう意味?」

「……私が、あいつが止めるのも聞かないで道路に飛び出したから…」

そういえば、水無月はトラックにはねられたって言ってたな。

奏子は話を聞きながら思い出した。

「それがショックで、耐えきれなくて、ビルの上から飛び降りたんだ。

ちょうどその下を歩いてた、響子を巻き添えにして」

奏子はそれを聞いて、少しの間黙っていた。

「全部、私の思い違いだったんだ。あいつの話を聞いていれば、あんな事にはならなかった」

⏰:10/12/15 22:01 📱:N08A3 🆔:e1TLLFT2


#561 [我輩は匿名である]
飛鳥は視線を落とす。

「……それでも、飛鳥はやっぱり水無月が好きなの?」

「……うん。隠しててごめん」

「ううん、私こそごめん。あんな言い方して。

…あと、ありがとう、話してくれて。ずっと気になってたんだ」

奏子はそう言ってにっこり笑う。

「これからは、いいライバルって事で」

「うん」

飛鳥も頷いて笑い返した。

⏰:10/12/16 22:53 📱:N08A3 🆔:Sg0X.jqw


#562 [我輩は匿名である]
HRの時間、直人は配られたスキー実習のしおりを見て顔を引きつらせる。

男女合わせて6人グループ。女子枠には飛鳥の名前がある。問題は男子枠が薫と良介。

「めんどくさい組み合わせになっちゃったねー」

他人事なのをいい事に、要が呆れたように言う。

「(なんでこうなるわけ…?)」

そう思いながら、薫に目をやると、案の定死んだように壁にもたれ掛かっている。

「でもまぁ、香月響子がいないだけマシじゃない?いたら絶対もめるよ」

「(まぁな…)」

「(………何も起きなきゃいいけど…でもまぁ……そろそろかな…)」

要は直人の中で、声を出さずに考えていた。

⏰:10/12/16 22:54 📱:N08A3 🆔:Sg0X.jqw


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