明日の生き方。
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#1 [名前の無い雨。]
あらすじ
名門私立で担任を受け持っている新米女教師、凛【リン】はある日彼女とのキスを生徒に見られてしまう。
同性愛者だと知られたら社会的地位と教師の座が危ない!
凛はどうにかして生徒の口封じを行おうするが…。
教師vs優等生中学生、勝敗の行方は果たして。
:10/09/04 00:40
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#2 [名前の無い雨。]
:10/09/04 00:42
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#3 [名前の無い雨。]
:10/09/04 00:44
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#4 [名前の無い雨。]
「先生…」
吐息混じりの声変わりしたばかりの少しかすれた低い声。
「うん?」
机の上の問題集から目を上げ、正面に座る生徒、小林の顔を見た。
季節は初秋を迎えたが夏の暑さは引きずったままだ。
小林の額にはじんわり汗が浮かび頬が紅潮しているようにさえ見える。
「僕のここ、見て」
(僕の?)
いぶかしく思うと同時にす、と小林が腰を上げ仁王立ちになった。
成長期で165はあるであろう、中学三年生にしては長身の彼が立つと、なかなか迫力がある。
その上気した顔をぼうっと見つめていた凛【リン】であったがある一点の変化を見、思考回路は停止した。
制服ズボンを破りそうな勢いでそそり立っている、それを見てしまったからだ。
:10/09/04 01:02
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#5 [名前の無い雨。]
「え」
頭が真っ白になる。
そこから目が離せなくなる。
「ちょ、ちょっと小林君…?」
なんといっていいかわからないで軽いパニックに陥っている凛の顔を見て、小林の口元が、笑う。
「はあ…僕のここ、こんなになってるんですよ…」
待て待て。
ここは学校で放課後の教室で、凛達以外の人影は無いに等しい。
わからない問題があると泣き付いてきた小林に問題を教えるために、私はここに残った筈だ。
現に問題をちゃんと教えていた。
五分前までは。
:10/09/04 01:15
:N904i
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#6 [名前の無い雨。]
長い髪を書き上げ、微笑んでみた。
「お、落ち着こう?ね?」
冷静を装う声に震えが生じる。
こんな事になるなら居残り授業なんてさっと断って恋人の待つ家に帰るべきだったよ。
後悔先たたず。
どうすれば良いんだこの状況。
「落ち着いてます…はあ…はあ」
うそつけ。てめえ興奮してんじゃねえか。
小林は仁王立ちのまま動かない。
段々荒くなって行く息に背筋が凍った。
:10/09/04 01:24
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#7 [名前の無い雨。]
沈黙。
小林の荒い呼吸だけが教室に響く。
(やべえ…逃げたい。)
教室のドアは閉まっているが鍵がかけてある訳では無いし、玄関も解放されているから逃げ出すのは難しく無い。
が、しかしこのままここに悩める(?)生徒を置き去りにしていいものか。
しかも担任を受け持っている生徒を。
「先生…」
色気絞り出しました的な残念声が懇願する。
「ここ、触ってくれませんか…?」
(キモい!)
「ごめんなさい!」
反射的に立ち上がり、自分の筆記用具を引っ掴んだ。
振り返らずそのままの勢いで教室をあとに玄関を出、校門を出、気が付けば自分の住んでいるマンションの前だった。
もうすっかり暗い時間、まだ頭の整理のついてない凛をあざ笑うかのように綺麗な満月が空を照らしていた。
「はあ…逃げちゃった」
ぼそっと呟く。
明日からどうすりゃいいんだ。
続く。
:10/09/04 01:46
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#8 [名前の無い雨。]
「あれ、どうした?凛ちゃん顔色悪いよ」
出迎えてくれた円香【マドカ】はおかえりなさい、と言った後にそう続けた。
親友歴五年、付き合い始めてはや三ヶ月の相方に嘘は吐けないらしい。
「うん…ちょっとね」
先程の衝撃を全て正直に話してしまいたいところだが、円香の負担になることを考えると踏み切れない。
「なに?円香に言えないこと?」
小柄でふわふわのくせ毛、薄茶色の大きな瞳には不安の色が写る。
「や、話すよ話す」
(相変わらず小動物みたいだな…)
円香は隠し事が大嫌いだ。
そんなそぶりを少しでも見せようものなら泣き叫び出す不安定さを持っている。
ちなみに精神科に通院中の無職だ。
:10/09/05 02:37
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#9 [名前の無い雨。]
散らかった居間に上がり、先程あった事をざっくりと話した。
「そんなことが…本当に大変だったね」
ひどく気の毒そうな顔で円香が嘆く。
次の瞬間愛らしい顔が歪み「凛ちゃんは円香のものなのに」と呟いた。
もの、という響きに背筋が寒くなる。
やたらと所有権を主張したがる円香に、たまについていけなくなる。
そう声に出すことで安心感を得ているのだろうけれど。
「凛ちゃん、お酒飲みいこうよっ」
俯いてた顔をぱっと上げ、明るい声で彼女はそう言った。
立ち上がって凛の腕を引く。
「嫌なことは飲んで全部忘れよーう」
とびきりの笑顔でそう言われたら断れたものじゃない。
彼女なりに励まそうとしてくれているのがひしひしと伝わる。
「…そうだね、付き合って貰おうかな」
つられて立ち上がり、そう返した。
明日は日曜日だし、思いっきり飲んじゃっても良いよね。
小林の紅潮した顔と下半身の記憶をかき消すために、凛達は夜の街に繰り出した。
:10/09/05 02:53
:N904i
:I94p0k.c
#10 [名前の無い雨。]
深夜一時。
繁華街。
きらびやかなネオンと客引きの声。謎のBGM。酔っぱらい達の合唱。ゲロ吐き大会。笑い声。声。声。声。
「円香、お水買ってくるね」
飲んだら真っ直ぐ家に帰る筈だったのだが千鳥足で植木に突っ込み、円香からのストップを受けて、凛は歩道端で体育座りをしていた。
(飲み過ぎたかな…)
まともな思考なぞ出来ませんって体が言ってる。
でも気持ちいいな。
何もしてないのに楽しい。
普段、名門私立の教師をしている凛は自分を抑えていることが多い。皆から良い先生と慕ってほしいからだ。
自分のリミッターを外せるのはアルコールしかない。
解放的な気分に自然と笑みが零れる。向こうにいるお兄ちゃん達がこちらを指差してニヤついてる。笑顔で手を振ってみる。振り返してくれる。急に芽生える仲間意識。
男の人とセックスしたい。
ふとそんな事を思った。
:10/09/05 03:19
:N904i
:I94p0k.c
#11 [名前の無い雨。]
お持ち帰りされたい。
そんな風にも思った。
お兄ちゃん達はこちらに向かって歩いてくる。
体育座りに疲れそのまま足を開く。
かなりパンツが見える体制になるが、そんなこと気にする必要は無かった。
(もう、どうなってもいいや)
気分よく目を閉じた瞬間
「凛ちゃん。」
やわらかい感触を唇が覚えた。
その、聞き覚えのある声が凛を一気に正気に戻す。
(円香…!)
数秒。数十秒?。
触れるだけのキスをした後、買ってきたばかりの水入りペットボトルを凛の頬に当て、
「口移しで飲ませてあげる」
と円香は笑った。
:10/09/05 03:37
:N904i
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#12 [名前の無い雨。]
「や、遠慮しと」
その先を唇で塞がれる。
優しく、柔らかく。
「ちょ…まずいよ。人に見られたら」
肩を引き剥がしパンツの中に手を突っ込もうとしている円香に待ったをかける。
「大丈夫だよ誰も見てない」
いやいやいやいや。
あなた目が据わってますよ。
そしてそんなキャラじゃないでしょう。
自分より円香の方が酔ってる事に気付いた。
「とりあえず家に帰ろう?」
「凛ちゃん愛してる」
会話が噛み合わない。
:10/09/05 03:46
:N904i
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#13 [名前の無い雨。]
暴走する小動物を何とか抑え、肩を担ぐ事に成功した凛は、すっかり醒めた頭で辺りを見回した。
(お兄ちゃん達居なくなってる…)
なんとなくがっかりしてしまう。
自分は内心刺激を求めて居たのだろうか。
この毎日から逃げ出したかったのだろうか。
(よくわからないや)
「凛ちゃん大好きだからずっと一緒に居ようね」
横でうとうとしながら円香が呟く。
:10/09/05 03:50
:N904i
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#14 [名前の無い雨。]
それには応えず先程の円香の行動を思い出す。
(何だろう、気持ち悪い…)
何故あんなことを。
もう少しでお兄ちゃん達とどこかに行けたかもしれないのにって円香と付き合ってる訳だからそんなこと考える私は最低なのかもしれないけど。
(ってゆーか)
正気の頭は回転を始める。
(円香とキスしたの初めてだ…)
女の人と、キス。
(……………気持ち悪!)
凛を吐き気が襲う。
それが酒の飲み過ぎか、同性愛を本能が拒絶しているものなのかはわからなかった。
:10/09/05 03:59
:N904i
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#15 [名前の無い雨。]
円香と知り合ったのは大学のサークル。
学部が同じという事もありよく一緒に行動していた。
小柄で可愛らしい顔立ち、華やかな印象を持つ円香は学校内外問わず人気があって、いつも男女の取り巻きの中心にいた。
いわゆる小悪魔キャラというやつで、これまで多数の男を泣かせて来たのを凛は見てきている。
一見控えめな性格に思える振る舞いをするのだが、内心では、欲しいものは全て手に入れないと気が済まないという何世紀かの貴族顔負けのわがままさを持ち合わせており、それに周りが振り回されるのだ。
凛とてその例外ではない。
:10/09/05 22:07
:N904i
:I94p0k.c
#16 [名前の無い雨。]
「凛ちゃん、好き。付き合って」三ヶ月前、彼氏をふった円香は凛の住むマンションの玄関に来た。
大きなスーツケースを持って。
「付き合ってくれなかったら、死ぬから」
冗談でしょう、と言う凛をよそにずかずかを上がり込んで、はや三ヶ月だ。
:10/09/08 00:52
:N904i
:09EiJWyk
#17 [名前の無い雨。]
凛は円香が嫌いでは無かった。
可愛いは正義だ。
しかし恋愛対象としては見れず、かと言って追い出して死なれでもした日には後味が悪いので、なんとなく、一緒に暮らしている。
円香は繊細だ。
下手なことを言った日には何をしでかすかわからないから怖い。
(先のこと考えたくないなあ…面倒くさい)
9月の空は凛の心に反して青々と晴れ渡っていた。
月曜日。
今日からまた学校だ。
:10/09/08 01:05
:N904i
:09EiJWyk
#18 [我輩は匿名である]
結論から言うと、小林は学校に来ていなかった。
体調不良と母親からの電話を受け、取り敢えず顔を合わせなくていいと言うことに一先ず胸を撫で下ろす。
(―「どこ」が体調不良になってんだか…)
担任を受けもっているクラスはいつも通り平和で、凛を穏やかな気持ちにさせた。
:11/04/14 22:29
:N904i
:XCfxrgVE
#19 [我輩は匿名である]
「先生って女の子が好きなんだね」
笑みを含んだ声色。
背筋が一瞬にして、春のあたたかい夕日を忘れたかの様に凍り付く。
放課後生徒達と談笑していて、一人また一人と帰っていき、最後に残った生徒と二人っきりになった矢先に言われた言葉だった。
動揺を悟られないよう、目の前に居る、潤也(じゅんや)の精悍な顔を見、声に出して笑う。
「女の子も好きよ、男の子と同じくらいにね」
曖昧にして返す。
こういう時の過剰反応は墓穴を掘るだけだと知っているから。
:11/04/17 03:28
:N904i
:6UTzQ/86
#20 [我輩は匿名である]
潤也は凛の受け持つクラスの生徒で、整った顔立ちと柔らかな雰囲気で女子から「王子」と絶大な指示を得ている。
凛は聡明なのに素直な部分も垣間見える潤也を気に入っていて、向こうもよく懐いてくれている、と言った印象を持っていた。
それが内申点を上げるための計算かどうかは知らなかったが。
「女の子とキス出来るくらいには好きなんだよね?」
尋問?見られた?このあいだの深夜のアレを?
心臓の脈うちがはやくなる。
偶然居合わせるなんてこと、あり得ない。まさか。
:11/04/17 03:44
:N904i
:6UTzQ/86
#21 [我輩は匿名である]
「女の子とは流石にキスは出来ないかな」
あくまで冗談っぽく言ってみるがこれは本心でもある。
酔った勢いで女同士でキスをする友人もちらほら居るが凛はそういうのは好きじゃない。
机一つを挟んで向かい合って座っている状態。
距離は近いが潤也の言わんとしている事が、わからない。
「見ちゃった、って言ったら?」
:11/04/17 03:58
:N904i
:6UTzQ/86
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