その日が来る前に、2
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#201 [愛華]
隆兄に会いに行く。
そう決めても、決心がつかない。
6年ぶりだ。
なにから話せばいい?
まずは心配かけたことを謝らなくちゃいけない。
そして全て話さなきゃいけない
隆兄は……今までどんな気持ちで6年過ごしてきたのか。
それを知るのが怖かった。
:10/10/31 15:54
:840SH
:ExUEa6QM
#202 [愛華]
そんな考えが頭の中をぐるぐると回って………
じいさんのもとに居座り続けていた。じいさんは迷惑そうだったけど……同じ家にいるのに離れて暮らしているようなもの。
対して前と変わらない。
その日も家にいるのが嫌で
街をぶらぶらと歩いていた。
:10/10/31 15:58
:840SH
:ExUEa6QM
#203 [愛華]
特に何をすることもない……
ただぼーっと。
しばらく歩いていると、
人ごみの中に一人の男の人を
見つけた。
そいつは手袋もせずにベンチに座りこみ、下を向いていた。
どうしてかわからないが、
なぜか目に止まった。
:10/10/31 16:02
:840SH
:ExUEa6QM
#204 [愛華]
………寒そうだな。
確かそれくらいのことしか思ってなかったと思う。
でもその男が顔をあげた。
その瞬間。
止まっていた時間が
一瞬のうちに
現在に引き戻された。
:10/10/31 16:40
:840SH
:ExUEa6QM
#205 [愛華]
′
「…………たか、にー………?」
長い間会っていなくたって
顔を見ればわかる。
隆兄だ。
隆兄……………隆兄…………
自然と涙が溢れてきた。
:10/10/31 20:19
:840SH
:ExUEa6QM
#206 [愛華]
あのころと違う。
大人びた隆兄の姿。
あぁ…………
俺は隆兄に話しかけようとした
隆兄。心配かけてごめんな
「隆兄……………」
「………………隆則っ!!」
:10/10/31 20:25
:840SH
:ExUEa6QM
#207 [愛華]
……………え?
隆兄のもとに小さい女の子が駆け寄っていった。顔はよく見えないけれど色白の女の子。
隆兄は笑っている。
隆兄は幸せそうに笑っている。
笑っている。笑っている。
:10/10/31 20:30
:840SH
:ExUEa6QM
#208 [愛華]
隆兄はその女の子と楽しそうに笑いあい、手をつないで
人ごみに消えていった。
見たかんじでいうと恋人。
隆兄に、恋人。
楽しそうに笑いあい……
幸せそうに手をつなぐ。
俺の中がぐちゃぐちゃに
掻き混ぜられたように
気持ちが溢れてくる。
:10/10/31 20:41
:840SH
:ExUEa6QM
#209 [愛華]
隆兄が幸せそうでよかった。
でもどうして?
笑っていてよかった
でもどうして?
6年間の間 隆兄は…………
幸せに過ごしていたの?
俺が苦しんでいる間……
あの女の子と笑っていたの?
:10/10/31 20:52
:840SH
:ExUEa6QM
#210 [愛華]
心の中が黒くなっていく。
隆兄は……俺を心配してくれてなんかいなかった?
俺を探してなんか……くれてなかった?
隆兄は………
オレナンカイラナカッタ?
:10/10/31 21:01
:840SH
:ExUEa6QM
#211 [愛華]
なんて残酷な
そして虚しさが溢れてくる
6年間の真実。
許せない。許せない。
俺が黒く染まっていく。
:10/10/31 21:06
:840SH
:ExUEa6QM
#212 [愛華]
俺は苦しんでいたのに
なんであんただけ幸せに?
不公平だよ。
なぁ、そうだろ?
6年前には一緒に笑いあい
父さんと母さんの死を
共に乗り越えてきたじゃんか。
あれは全て嘘だったのかよ?
:10/10/31 21:08
:840SH
:ExUEa6QM
#213 [愛華]
許せない。許せない。
沸いて来るこの気持ちは……
復讐心。
隆兄………あんたの6年間は
もはや罪でしかない。
:10/10/31 21:10
:840SH
:ExUEa6QM
#214 [愛華]
隆兄。
あんたには罪をつぐなってもらう
あんたの身をもって?
そんなもんじゃない。
あんたの大事なもんを奪う。
泣き叫べ。
あんたが笑っていた間
俺がそうしていたようにな。
:10/10/31 21:13
:840SH
:ExUEa6QM
#215 [愛華]
′
直純くんから話を全て聞き終わった時。私は泣いていた。
ただ、悲しかった。
誰かの苦しみを祈る。
あたしと同じだったから。
:10/10/31 21:16
:840SH
:ExUEa6QM
#216 [愛華]
「………んで、あんたを奪うために今の学校に転入して……
ジジイの家を出た」
直純くんは悲しそうに言った。
声は震えたまま。
「…………ごめんな」
直純くんの告白は………嘘。
強くて冷たい風が吹いた。
:10/10/31 21:52
:840SH
:ExUEa6QM
#217 [愛華]
あたしは直純くんを
強く、抱きしめた。
「…………辛かったね……」
「…………白石?」
腕に力を込める。
それしか気持ちを伝えられない
:10/10/31 21:54
:840SH
:ExUEa6QM
#218 [愛華]
「どうして泣かないの?
泣かなきゃだめ。泣いていいの」
「………なにいって……」
「泣いていいの」
あたしは泣いてぐしゃぐしゃの
顔を見せないようにして
直純くんの心をあたたまるように
肩が熱くなってきて、
直純くんが泣いているのが
見なくてもわかった。
:10/10/31 21:58
:840SH
:ExUEa6QM
#219 [愛華]
「…………白石…ごめん…」
うん。
そう言ったつもりだったけど
声にはならなかった。
「……………俺。
白石が好きだ………」
風は、冷たかった。
でもやがて春はやってくる。
:10/10/31 22:04
:840SH
:ExUEa6QM
#220 [愛華]
-直純side-
:10/11/01 01:23
:840SH
:HCK5cv5E
#221 [愛華]
俺はなんのために…ここに来た?
あんなに強く決心した。
隆兄に復讐するって。
でも今、白石の涙を見て
簡単にその決心がゆらぐ。
ちくしょう。なんでだよ。
俺は………間違ってたのか?
:10/11/01 01:26
:840SH
:HCK5cv5E
#222 [愛華]
俺の目的は………
隆兄から大切なもの、
つまり白石を奪うことだ。
なのに今さら迷うなよ。
なんで辛くなってきてんだよ。
白石………俺の過去なんか知って
なに泣いてんだよ………
:10/11/01 01:28
:840SH
:HCK5cv5E
#223 [愛華]
どんな手を使ってでも
隆兄から白石を引き離す。
その後で俺の正体をばらすつもりだった。
なのに計画はむちゃくちゃ。
狂わせたのは………俺。
白石に思い出話なんか
してんじゃねーよ………
馬鹿かよ………俺………
:10/11/01 01:31
:840SH
:HCK5cv5E
#224 [愛華]
「泣いていいんだよ」
…………泣く?誰が?
俺が?どうして………?
ただ白石の腕が苦しいほどに
俺を抱きしめていて。
誰かに抱きしめられたのなんて…
いつ以来だっけ………
:10/11/01 01:33
:840SH
:HCK5cv5E
#225 [愛華]
なんか目が熱くて痛いな……
あ、俺泣いてる。
泣いてる。どうして?
………わかんないから…いーや…
まぶたの裏に浮かぶのは
笑っている隆兄と白石。
:10/11/01 01:36
:840SH
:HCK5cv5E
#226 [愛華]
俺………白石の笑った顔が好きだ
今まで怒られてばっかだったから
白石の笑顔を見るとほっとした
その笑顔が自分にだけ向けられればいいって。
そう思った。
:10/11/01 01:38
:840SH
:HCK5cv5E
#227 [愛華]
でも隆兄のことを赤くなりながら話す白石を見ると………
すごく辛くなった。
あぁ………俺。
いつから白石のこと、
本気で好きになったのかな
:10/11/01 01:40
:840SH
:HCK5cv5E
#228 [愛華]
好きだ。好きだ。
もう復讐なんていい。
だから君が欲しい。
「誰かに愛されてる
そう思える瞬間」
君からそれを感じたい。
そんな君は……
俺が1番憎い人が好き。
:10/11/01 01:44
:840SH
:HCK5cv5E
#229 [愛華]
君は隆兄のために笑う。
隆兄の側にいることが君の幸せ
どうしてそれが奪える?
隆兄が憎いよ。
どうして俺のたったひとつの
たったひとつの欲しいものさえも
奪っていっちゃうんだよ……
:10/11/01 01:47
:840SH
:HCK5cv5E
#230 [愛華]
悔しい。
憎い。 けども、愛しい。
消したくないこの気持ち。
初めて誰かを本気で欲しい。
そう思ったから。
「………俺……
白石が好きだ…………」
やっと気づいたこの気持ちを
叶わなくたって
言葉にするくらいいいだろう?
:10/11/01 01:51
:840SH
:HCK5cv5E
#231 [愛華]
自分の中にこんな感情があるなんて初めて知った。
理性が言うことをきかない。
計算外なことが起こって
自分のコントロールができない。
ただ、本能のままに。
君の笑顔を見ていたいから
隆兄から君を引き離せない。
俺はどうしたら救われる?
神様は……なんて残酷なんだろう
:10/11/01 01:58
:840SH
:HCK5cv5E
#232 [愛華]
-梓side-
:10/11/01 20:01
:840SH
:HCK5cv5E
#233 [愛華]
どうして人は恋をするんだろう
傷つくことを知っていても
それでも人は想いつづける。
叶わぬ想いだと知っていても
それでも人は求め続ける。
そんな止めることのできない想いがあること。
私が1番知っているから。
だから、何も言えなかった。
:10/11/01 20:20
:840SH
:HCK5cv5E
#234 [愛華]
「……で、そのあとどうしたの」
あたしは送別祭が終わった後の教室で那佑と話していた。
品野くん………じゃなくて
直純はもう帰ったらしい。
でもことの全てを那佑から
聞くことができた。
…………告白されたことも。
:10/11/01 20:26
:840SH
:HCK5cv5E
#235 [愛華]
「そのまま二人で帰ってきた……
なんか気まずくって………あと…
頭いっぱいいっぱいで………」
那佑は泣きそうな顔をしていた。
あたしだってそうだよ。
直純が……虐待にあってたなんて
全く知らなかった。
:10/11/01 20:31
:840SH
:HCK5cv5E
#236 [愛華]
あたし……直純を責めちゃった…
「………梓、自分を責めないで。
どうしようもなかったんだよ」
那佑がゆっくりと言った。
わかってはいるけど……
でもやっぱり思ってしまう。
直純を見つけていれば……って
後悔が押し寄せて来る。
:10/11/01 20:39
:840SH
:HCK5cv5E
#237 [愛華]
でもまさか、直純がタカを恨んでいる理由がそんなことだったなんて………
「……どうすれば、いいのかな」
那佑は余ったデザートを袋に
詰めながら言った。
「あたしの予想………
直純はタカに復讐、つまり
那佑とタカを引き離そうとする
ことは多分もうしないよ」
:10/11/01 20:46
:840SH
:HCK5cv5E
#238 [愛華]
「え、どうして?」
那佑は手を止めた。
袋からコロコロとゼリーが
転がってドアの前で止まった。
「直純は那佑が好きなんだよ。
好きな人を不幸にあわせようと
なんて、いくら復讐のためだからって直純はしない。
直純はそんなやつじゃないよ」
多分、直純はかなり前から那佑が好きだったんだと思う。
だから、那佑には全て話した。
:10/11/01 20:53
:840SH
:HCK5cv5E
#239 [愛華]
もっとも、その気持ちにいつ気づいたのかはわかんないけど…
「……その告白、どーするの」
「こ、断るよ!隆則がいるし…」
まぁ当然そうなるよね………
直純はまだタカになにかする気なのかな?
那佑と引き離すこととは、
別の方法で…………
:10/11/01 21:01
:840SH
:HCK5cv5E
#240 [愛華]
でも、もう終わりにしたい。
復讐とかそんなのもういいから
失ったままだった6年間の時間を
直純と一緒に取り戻していきたい
直純………がんばったんだね。
つらかったんだね。
ごめんね……助けてあげれなくて
一緒に泣いてあげるから。
だから………タカを恨まないで。
:10/11/02 00:24
:840SH
:XYQ0nIow
#241 [愛華]
タカには落ち着いたら話すことにして、その日は別れた。
多分タカも那佑も、あたしも。
昨日の今日で色々ありすぎて
頭がついていっていないから。
あたしは一人で暗く寒い道を
歩いて家に帰路を急いだ。
………まだ、寒いなぁ………
指先に息をはぁーっとかけて
温めるが、すぐに消えるぬくもり
……直純、おじいさんのとこ出て
どこに住んでんのかな………
:10/11/02 00:29
:840SH
:XYQ0nIow
#242 [愛華]
そんなことを考えながら
歩いていると、前に人影が見えた
「………あ、きたきた!!」
「……なにやってんですか、
誨さん。不審者に間違われても
あたしなんも言えませんよ…」
それはフェンスによしかかった
誨さんだった。
どれくらい待っていたのか、
頬はまっかっかだ。
:10/11/02 00:33
:840SH
:XYQ0nIow
#243 [愛華]
誨さんは反動でフェンスから離れると、トテテテ とあたしのところに歩いてきた。
「送別祭おつかれさま♪」
「あー……はい」
あのクリスマスの日以来、
たまにだが会うようになった。
会うといっても一方的なもので
いつも誨さんのほうからあたしの家に遊びにくる。
外に出るのが面倒なあたしは
誨さんを部屋にいれて話したりする。それは相談であったり
くだらない世間話であったり。
:10/11/02 23:07
:840SH
:XYQ0nIow
#244 [愛華]
向こうがどういうつもりかは
知らないけれど、今では友達の
ような感じ。
部屋に入れるにしたって、
誨さんじゃ、危険な感じとか全く
しないし………。
「………なんか、暗くない?」
誨さんは心配そうにあたしの顔を
のぞきこんだ。
:10/11/02 23:10
:840SH
:XYQ0nIow
#245 [愛華]
「ん、んー…色々あって……」
あたしは歩く足を止めることなく話した。誨さんは慌ててあたしを追いかけ、隣に来る。
「色々って?話してみなさい!」
誨さんは笑った。
でもこんなこと誨さんに話したって仕方がないじゃん。
これはあたしとタカと那佑の
問題なんだから。
………ってゆーか………
:10/11/02 23:15
:840SH
:XYQ0nIow
#246 [愛華]
「………なんで手をにぎる?」
「だってさみぃんだもーん」
誨さんの右手はあたしの左手を
しっかりと握っていた。
その手はとても冷たくて………
どれくらい待っていたのかな?
あたしはもう一方の手の平を
誨さんの頬に当てた。
誨さんはびっくりした顔をして
寒さのせいなのか、さらに
顔が赤くなっていった。
:10/11/02 23:20
:840SH
:XYQ0nIow
#247 [愛華]
「わ、めちゃ冷たいわ」
「うん。何分待ったか……」
や、待っててなんて言ってないし。
でもちょっと罪悪感。
あたしが誨さんの頬から手を
離そうとすると、その手を
誨さんの左手でつかまれた。
「………ちょ、なんですか」
「ん、あったかいなーって」
………意味わかんないっての。
:10/11/02 23:28
:840SH
:XYQ0nIow
#248 [愛華]
「や、歩けないんで。
どっちかの手はなして下さい」
今はどっちの手も誨さんに
つかまれて向かいあってる状態。
「え、どっちかだけでいーの?」
………だめだこりゃ。
「……できればどっちの手も
離してもらえるとありがたい」
「じゃーそれはできないんで」
誨さんは即答し、あたしの右手を
離して再び歩きだした。
:10/11/03 16:41
:840SH
:hp43cpuE
#249 [愛華]
離された右手が少し寂しかった。
………誨さんはどういうつもりなんだろうか?いつも思う。
タカと同じようにあたしを妹みたいに思ってるから、
からかってかまうのかな?
それとも…………
「………誨さんって………
あたしのこと好きなんですか?」
:10/11/03 16:49
:840SH
:hp43cpuE
#250 [愛華]
「……………」
誨さんは黙ったまま。
……………あれ?あたし今……
『なに言ってんだコイツ』って
思われた?思われたよね?
実際、あたしなにいってんだ?
気まずい沈黙が続く。
さっさと否定すればいーのに
なぜ黙ったままなんだ?
引っ張る必要あるのか?
:10/11/03 23:42
:840SH
:hp43cpuE
#251 [愛華]
「…梓ちゃんさ、まだ隆則のこと好きなの?」
「……ちゃん いらないって
言ってんのに………」
「じゃあ梓」
ドキッとした。
今まで何度そういっても
『梓ちゃん』としか呼ばなかったから……どうして?
「まだ、隆則がすきなの?」
誨さんはあたしの目を全く見ない
:10/11/03 23:56
:840SH
:hp43cpuE
#252 [愛華]
まぁ横にならんで歩いてるから
目は見れないの当たり前。
でも……なんか不自然で。
わざと反らしてるみたいで。
「まだ…………すき?」
誨さんは繰り返し聞いた。
わからない。
でも最近、少し変化があった。
前は那佑とタカを見るのが
少しだけ辛かったけれども
最近は辛くならなくなったの。
:10/11/04 01:21
:840SH
:si2Qn6yo
#253 [愛華]
誨さんに「いいんじゃない?」
って言われたあの日から。
あたしはもうわかってる。
叶わないって知っていても
諦めのつかなかったこの気持ちが
ちょっとずつ終わりに近づいてる
それは悪いことなんかじゃない。
傷が癒えたということなんだ。
今なら心から二人の幸せを
祈って……自分の幸せも祈れる。
:10/11/04 01:25
:840SH
:si2Qn6yo
#254 [愛華]
でも認めるのが怖かった。
今までの自分の恋のすべて。
終わりを認めるのが怖かった。
「…………わかんない。」
あたしは悩みに悩んで
やっとの思いでそう答えた。
「……そっかー………へへ」
「なに笑ってんですか、キモ」
誨さんはニヤニヤ笑う。
なにがそんなおもしろかったのか
:10/11/04 01:29
:840SH
:si2Qn6yo
#255 [愛華]
「だって今までは即答だったし。
ちょっと頑張ったかいあった
のかなぁって思ってさー」
頑張った?なにを?
あ、誨さんはあたしにタカを
あきらめさせようとしてたのか。
傷ついてるあたしを可哀相だと思ってたみたいだし。
やっぱあたしを妹みたいに
思ってんのかなぁ………
…………ま、別にいいけど?
「………ムカつくんですけど」
:10/11/04 01:33
:840SH
:si2Qn6yo
#256 [愛華]
「え、なにが?」
まだニヤニヤしてやがる。
「そーゆーとこですよ!!
てゆーか手離してくださいよ!
恋人とかに間違われますよ!」
ぶんぶんふりまわしても
誨さんは手を離さない。
完全にかわかわれてる。
んもう!!
今は直純のことで頭いっぱい
だってのに!こんな遊んでる場合じゃないんだっつーの!
:10/11/04 01:37
:840SH
:si2Qn6yo
#257 [愛華]
「いーじゃん間違われてもー」
…………はぁ?
「誨さんがよくたってあたしは
よくないんですー!!」
彼女いないからってなんだ!
手つなぐ相手欲しいなら
彼女つくればいーじゃん!
あぁムカつく!!
なおも手をふりまわすが、
全然離す気配がないので諦めた。
:10/11/04 01:41
:840SH
:si2Qn6yo
#258 [愛華]
「………っとにもう………」
あたしの左手には誨さんの右手。
「……手つなぎたいなら彼女つくればいーじゃないですか。
あたしいつまでもこんなことしてあげませんよ?」
あたしは握られた手をヒラヒラ
させる。
「…………鈍感」
「…ん?今なんか言いました?」
:10/11/04 01:44
:840SH
:si2Qn6yo
#259 [愛華]
「なんでもねーよばーか!!」
………?変な人。
怒りたいのはこっちだってのに…
あれ?あたしなんで怒って
たんだっけ?………ま、いいや
「……あのさ」
「はい?なんですか?」
妙に声がうわずった。
考えごとしてたから………
:10/11/04 18:14
:840SH
:si2Qn6yo
#260 [愛華]
「梓って呼んでいー?」
「え、はい。ってか前から
呼びすてでいいって言ってたじゃないですか。呼ばなかったのは誨さんの方ですけど……」
なんだいまさら。
「………梓」
心臓がはねた。
さっき呼ばれたときもそう。
なんだ、これ。気持ち悪っ!
お腹の中が妙にホカホカする。
かいろなんか貼ってないよ!!
:10/11/04 18:19
:840SH
:si2Qn6yo
#261 [愛華]
ドクン………ドクン…………
………うーん?…………
「……や、やっぱ梓ちゃんで…」
「あ、あたしも今そう………
思ってましたです、はい……」
申し訳なさそうに誨さんが言う。
いや、あたしもちょっと
無理かな……ほんとに……
:10/11/04 18:22
:840SH
:si2Qn6yo
#262 [愛華]
強い強い風が吹いた。
誨さんの手はさっきよりも強く
あたしの左手を握っている。
………調子狂うな、ほんと……
直純のことやタカのこととか
いっぱい考えることがあって
さっきまでぐちゃぐちゃだった。
でも今はかいろも貼っていない
お腹がホカホカして……心地好い
少しだけ、楽になってる。
:10/11/04 18:26
:840SH
:si2Qn6yo
#263 [愛華]
ちらっと横目で誨さんを見た。
………いつまでこんなふうに
かまっててくれるんだろ……
親友の幼なじみ。ただそれだけ。
いずれ離れるときがくる。
胸がちくんとした気がしたけど
あたしはその痛みにまだ気がつかない。気がつきたくなかった。
少しずつ、いろんなものが
動きはじめた 三月の寒い日。
:10/11/04 18:31
:840SH
:si2Qn6yo
#264 [愛華]
-隆則side-
:10/11/05 20:07
:840SH
:aqKRS9iY
#265 [愛華]
頼む。頼むから。
俺の名前を呼ぶな。
お願いだから
俺の罪を、 掘り起こさないで。
知らないふりさせてくれ
:10/11/05 20:17
:840SH
:aqKRS9iY
#266 [愛華]
俺を縛っていたのは『約束』
そして『誓い』。
直純との『会いに行く』という約束を破ってしまった。
自分との『直純を守る』という
誓いを破ってしまった。
「6年間、音信不通になっただけたいしたことはない」
普通の人ならそうかもしれない
笑って再会できるかもしれない
でも俺はちがうんだ。
:10/11/05 20:20
:840SH
:aqKRS9iY
#267 [愛華]
幼かった俺はどうしようもなく
苦しんで……やがて苦しむことを忘れようとした。
そのほうが楽だと思ったから。
でも忘れてなんかなかった。
ずっと眠っていただけだった。
俺の『約束』と『誓い』。
直純に再会した瞬間、
それは一気に溢れ出し
俺は黒い闇へ戻された。
:10/11/06 00:01
:840SH
:GLQ4XmxY
#268 [愛華]
でも期待もした。
もし直純がこの6年間の間、
幸せに笑ってすごしていたのなら
俺の罪も軽くなって
また笑いあえるのかもって。
でもあとで那佑から聞かされた
真実は、それとは遠くかけはなれたものだった。
「直純は虐待されていた」
:10/11/06 00:03
:840SH
:GLQ4XmxY
#269 [愛華]
苦しみの再発。
直純。ごめんな。ごめんな。
約束やぶってごめんな。
助けられなくてごめんな。
俺だけ幸せになったりして……
ごめんな。
ごめん。それしか言えない。
:10/11/06 00:05
:840SH
:GLQ4XmxY
#270 [愛華]
再会から3日。
直純とは会っていない。
復讐されてもしかたがない。
でも俺にだって守らなきゃいけないものがある。
いくらお前にだって、譲れないものがあるんだよ。
たとえ罪悪感に潰されたとしても
:10/11/06 00:09
:840SH
:GLQ4XmxY
#271 [愛華]
「………顔色わるいな、お前」
「…………ん……」
誨が心配そうに粥をつくって
俺のところにやってきた。
この3日、ろくに寝ていない。
「………直純くんのことで
寝てないんだろーが……」
誨には昨日すべて話した。
那佑が送別祭の翌日に、すべてを話しにきたので
いい機会だと思い、誨にも打ち明けた。
:10/11/06 00:15
:840SH
:GLQ4XmxY
#272 [愛華]
「とりあえず飯食え。
俺がつくってやったんだからな」
………くさい……
お粥ってこんな臭いだっけ…
画用紙の臭いがする。
「さ、さんきゅな………」
文句を言う気力もなかったので
ゆっくりソファから起き上がり
恐る恐るさじをはこんだ。
…………予想通り……
図画工作の味だ。
食べたことはないけれど…
これは食べるものじゃない。
:10/11/06 00:19
:840SH
:GLQ4XmxY
#273 [愛華]
「………うまいか?」
「………ごめん。まずい」
ただ米を水と煮るだけなのに…
美味しくしようとしていろいろ
入れたんだろう。
その結果、図画工作の味。
米から見えてるのは、梅干し、ニンニク、高菜、ウナギ……
あとは原形がなく、わからない。
「えー頑張ったんだけど……」
頑張ったかどうかじゃねぇ。
食べれるか食べれないかだろ。
そう思ったがさすがに悪いなと思い口には出せなかった。
:10/11/06 00:24
:840SH
:GLQ4XmxY
#274 [愛華]
半分くらい食べたところで
俺は食べるのをやめた。
「うぅっぷ……ごちそーさん…」
「まだ残ってるじゃんかぁ」
無茶いうな。
俺を殺したいのか治したいのか
はっきりしろ。わざとか?
「わりぃ。とりあえず横んなる」
俺はごろーんとソファに横になる
:10/11/06 01:22
:840SH
:GLQ4XmxY
#275 [愛華]
那佑は今なにしてるだろうか。
直純は今どこにいるのか。
直純は那佑のことが好きなんだ。
俺はどうやって償えば………
「………なにも考えるな。」
自分で自分を制する。
今はなんも考えなくていい。
そのうち自分の中で
絶対に生まれてはいけない感情が
でてきてしまうかもしれない。
:10/11/06 16:27
:840SH
:GLQ4XmxY
#276 [愛華]
「あ、そーいや隆則。
今日、那佑ちゃん来るって言ってなかったっけ?」
「あ、そーいえば………。
多分もうすこしでくるかな」
時刻は午後4時。
「じゃー俺、どっか行くな」
なんか気をつかわせたみたいだ。
ていうか、今までも何回もこういうことはあったけれど
誨のやつ、どこ行ってたんだ?
:10/11/06 16:38
:840SH
:GLQ4XmxY
#277 [愛華]
「お前、いつもどこ行ってんの」
「ん?梓ちゃんのとこ」
……………ピシ。
「はぁ!?おま、梓に手ぇだし…
いつから!?いつからだよ!!」
「んーと……クリスマスん時」
あ、あの時か!!
:10/11/06 16:56
:840SH
:GLQ4XmxY
#278 [愛華]
「ふざけんなよおまえ〜」
俺はへなへなと枕に顔を埋める。
ちっとも知らなかった。
「別にふざけてねーよ?」
…………ん?
「え、誨おまえ………」
「俺、梓ちゃん好きだよ」
誨はさも当たり前かのように
でも真剣に言った。
:10/11/06 17:04
:840SH
:GLQ4XmxY
#279 [愛華]
「……え、だって………」
「だーいじょうぶだっつの。
同じことは繰り返さない。
俺なりに頑張るからさ」
誨は笑ってそう言った。
同じことは、繰り返さない。
誨は前に進もうとしてる。
過去を糧にして正しい道を
迷わず前に。
俺も前を向けるだろうか。
:10/11/06 17:30
:840SH
:GLQ4XmxY
#280 [愛華]
誨が出ていったあとも考えていた
俺が今まで笑ってられたのは
那佑が側にいてくれたから。
懸命に生きるお前が
俺の足元を照らしてくれたから
でも直純は違う。
直純には誰もいないんだ。
前を向きたい。お前も一緒に
:10/11/06 17:59
:840SH
:GLQ4XmxY
#281 [愛華]
罪をちゃんと認めて
前を向いて
そして二人で笑いあおう。
一緒に泣くのもいい。
大切な人のために俺も泣こう。
「隆則ー!!来たよー!!」
そして君がそこにいることを
願う。
:10/11/06 18:04
:840SH
:GLQ4XmxY
#282 [愛華]
いつも読んでくださってる方々
本当にありがとうございます。
愛華です!
携帯の都合により少しの間更新
することができません(:_;)
待っててくださると嬉しいです。
感想板にて、感想、意見
待っています!!
今後もよろしくお願いします!
:10/11/06 18:34
:840SH
:GLQ4XmxY
#283 [愛華]
今日から更新再開します。
待っていてくださった方々、
申し訳ありませんでした。
そしてありがとうございました!
:10/11/14 17:04
:840SH
:sNZro4Jc
#284 [愛華]
:10/11/15 20:31
:840SH
:MWLvGU.k
#285 [愛華]
あの日から1週間。
隆則には全て話した。
直純くんが虐待されていたこと。
隆則を憎んでいる理由。
…………告白されたこと。
全部話し終わったあとで
隆則はあたしを抱きしめて
「俺はお前を離すつもりはない」
そう言ってくれたね。
:10/11/15 20:40
:840SH
:MWLvGU.k
#286 [愛華]
すごくうれしかったよ。
でもどうしてかな。
見つめられた瞳に不安を覚えた。
一瞬だけ……不安になったの。
直純くんはきっと隆則にとって
すごく大切なひとで。
直純くんに罪悪感を抱いていて。
あたしと直純くん…………
どちらが大切ですか……?
聞きたくても聞いちゃダメなこと
:10/11/15 20:47
:840SH
:MWLvGU.k
#287 [愛華]
そう思う度に自己嫌悪する。
自分がすごく汚い生き物に感じて
しまうんだ。苦しいよ。
直純くんはあたしにとっても
いつのまにか大事な存在になって
いて。
幸せになってほしいと思う。
直純くんは…学校に来ていない。
:10/11/15 20:51
:840SH
:MWLvGU.k
#288 [愛華]
「………那佑!!」
「…………ん?」
夢から引き戻される。
机は日の熱をたっぷり蓄えて
あたたかくなっていた。
「あんた寝すぎ。大丈夫?」
「………うん。平気だ、よ?」
あくびが混ざって変な声になる。
…………色々疲れてきたな……
:10/11/15 20:57
:840SH
:MWLvGU.k
#289 [愛華]
「それより、梓。頼んだもの…
大丈夫だった?」
「あぁ………うん、一応」
そう言って梓は一枚の紙をくれた
それは直純くんの住所。
数日前、先生に直純くんの住所を聞いて会いに行った。
でもそこは虐待していた直純君のおじいさんの家だった。
かなり大きな家で、一人では
入る勇気もなく………
直純くんは家を出たと言っていた
どうやらここにまだ住んでいる
ことになっているらしい。
:10/11/15 21:06
:840SH
:MWLvGU.k
#290 [愛華]
……でも、会いたかった。
会わなければならなかった。
あたしは梓に、おじいさんから
直純くんの住所を聞いてくれる
ように頼んだ。
見ず知らずのあたしよりも、
小さいころ面識のある梓の方が
いいと思ったから。
……直純くんに、会いたかった。
:10/11/15 21:14
:840SH
:MWLvGU.k
#291 [愛華]
'
「……1週間来てないもんね…」
「そだね……あ、梓。おじいさんに何も言われなかった?」
あたしは住所が書かれた紙を
ポケットにしまい、尋ねた。
「あー……なんか久しぶりとか
なんとか? あと…………」
「あと………?「
:10/11/15 21:22
:840SH
:MWLvGU.k
#292 [愛華]
「…あんなクソガキに構うのは
やめたほうがいい……とか」
梓は言いずらそうに言う。
悔しかったんだろうな……
あたしがそこにいてもきっと
同じ気持ちになっただろう。
「……那佑、あたしも行かなくて
ほんとにいいの?」
「大丈夫だよ。………1人で、
行きたいの。会いたいの」
ひとりで会いに行く。
直純くん。 だから待っていて。
:10/11/15 21:43
:840SH
:MWLvGU.k
#293 [愛華]
きっと直純くんもいっぱい悩んだはずだよ。
辛かったのは隆則も直純くんも
同じだったはずだよ。
そうだよね?直純くん。
だから、隆則を憎まないで。
大切な人を傷つけて
自分も傷ついたりしないで。
「……………で、でか……」
:10/11/15 22:57
:840SH
:MWLvGU.k
#294 [愛華]
梓にもらった紙を頼りに、放課後
あたしは直純くんの住むアパートに向かった。
方向音痴なあたしは四苦八苦
しながらもなんとかたどり着いた。 でも着いたそこは……
「マ、マンション………?」
すごく立派なマンション。
え……?アパート……??
:10/11/15 23:08
:840SH
:MWLvGU.k
#295 [愛華]
あれ?話とは違う…………
梓は確かボロいアパートだって
言ってたような………
マンションの周りを何周も回る。
どれくらい繰り返したのか……
道行く人がさすがに怪しがる。
でもここで諦めるわけには……
泣きそうになってきた。
……梓と来ればよかったかなぁ…
地べたに座り込む。
動きようがない。
どこだかわかんないんだもん。
:10/11/15 23:16
:840SH
:MWLvGU.k
#296 [愛華]
あたりも暗くなってきた。
このままだと帰れなくなる。
人に道を聞いて駅まで………
明日、梓ともう一度来よう。
立ち上がりかけたその時。
「………なにやってんの」
「……………へ?」
後ろを振り向くと、そこには
スーパーの袋を持った直純くんが
立っていた。
:10/11/15 23:20
:840SH
:MWLvGU.k
#297 [愛華]
「……直純くん………」
「え、ちょ、なに泣いてんの」
直純くんはオロオロする。
「み、道……直純くんの。
アパート……マンションになってて。わかんないし………
暗いし……帰ろうと…思っ…」
一気に話したけど、多分言葉に
なってなかったと思う。
直純くんだ。
1週間会えなかった……
直純くんだ。
:10/11/15 23:25
:840SH
:MWLvGU.k
#298 [愛華]
「………意味、わかんない」
直純くんはため息をついた。
でも優しさが見えたため息。
「……俺んとこ、来ようと
してくれてたのか?」
あたしは一生懸命うなずく。
上手く声が出なかったから。
「……直純くん……に……
言いたいことがあって」
「……俺に?」
頑張ってしぼりだした言葉。
直純くんはちゃんと聞きとって
くれた。
:10/11/16 00:58
:840SH
:/kNM1FVE
#299 [愛華]
「………俺は白石になんも
言うことはないよ。隆兄への
復讐は別の形で考える。」
「……………」
直純くんは少しだけ息を吸って
ゆっくり言葉を吐き出す。
「………ひどい男だろう?
あんたの大事な男を傷つけるんだ
こんな男忘れろよ」
……嘘だよ、そんなの。
:10/11/16 17:02
:840SH
:/kNM1FVE
#300 [愛華]
「………じゃ、俺いくから」
直純くんは歩きだした。
諦めちゃだめだ。諦めちゃ……
隆則と直純くん二人を救うために
あたしも頑張らなきゃ。
「………なんでついてくんの」
「話したいから。直純くんと」
「いいの?帰れなくなるかもよ」
ぎくっ………
:10/11/16 20:58
:840SH
:/kNM1FVE
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